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中型限定解除合格記 [資格]

◆◆◆中型限定解除とは◆◆◆
 筆者のように昭和生まれの運転免許所持者は、更新すると、取得したのは普通免許のはずなのに、中型免許に名前が変わっていることに気づくと思う。そして但し書きとして「中型車は8tに限る」と書いてある。
 そもそも中型車とは何だろうか。その昔、免許区分としては大型と普通しかなかった。その境界線は車両総重量8トンにあった。
大型免許
車両総重量8t以上・最大積載量5t以上・乗車定員11人以上

普通免許
車両総重量8t未満・最大積載量5t未満・乗車定員10人以下

 つまり普通免許であれば8トンまでのトラックに乗れたわけだ。しかしこれは国際基準からすると、乗れる範囲が広すぎた。クルマが大きく重くなれば、それだけ運転の難度は高くなるし、事故を起こしたときの負わせる被害も大きくなるから、高い運転技術が必要だ。しかし免許の範囲が広いために、技術が伴っていない運転手による事故が増えてきた。
 そこで、普通運転免許で運転できる範囲を積載4トンまでに制限し、新たに積載11トンから4トンまでを中型自動車なる運転区分を設けた。従って大型自動車は11トン以上となる。この改定は平成19年に実施された。自動車の運転免許は18歳からだから、平成生まれはほとんどこの新しい普通免許になっているはずだ。
 しかしそうなると、旧普通免許で取った昭和人は困ることになる。何故ならば、すでに8トン車に乗っている仕事をしている人は、新たに中型免許を取得しなければならなくなるからだ。そこでそうした人たちに対しては、普通免許とはせずに、既得権として、中型免許を与えることにした。しかし11トンまでにすると、その訓練を受けておらず、事故を起こす可能性が高まるので、8トン限定という制限を設けたというわけである。大ざっぱに以下のような区分となる。


大型免許
車両総重量11t以上・最大積載量6.5t以上・乗車定員30人以上

中型免許
車両総重量11t未満・最大積載量6.5t未満・乗車定員29人以下

普通免許
車両総重量5t未満・最大積載量3t未満・乗車定員10人以下

 筆者は中型自動車なる新たな範疇の設定には胡散臭さを感じている。これはおそらく少子化で顧客の減る自動車教習所の救済であろう。いうまでもなく、自動車教習と警察行政には密接な関係がある。したがって古くから自動車教習所には多くの警察OBが天下りしている。国際基準に合わない、未熟者による事故が増えているとか理由をつけて、中型自動車というのを作って、新たに教習所に通わせて、顧客を確保しようという狙いだろう。教習所としても警察OBの天下りを受け入れるのは理由がある。それは、免許を取りに来る人は、学生から社会人、人生不適格者、ヤクザから風俗嬢まで様々なのだ。もしややこしい人がいれば、警察からの情報があればそれなりの対応が可能だ。その情報の入手や取りなしのために、警察OBを校長や所長に据えているのであろう。警察幹部としても、退職後の天下り先を確保できるのは大きいし、つまり持ちつ持たれつの関係の中から生まれたのが中型自動車なのだ。他に教習所の救済策としては、従来免許センターでしか取得できなかった、タクシー用の普通2種免許や750cc以上の大型バイク免許が教習所で取得できるようになったことが挙げられる。ただ、教習所としても新たな投資が必要なので、必ずしも恩恵を受けるものではない。
 そんな邪推はともかく、筆者は中型免許を取得することにした。中型8トン限定から大型2種免許を取ると約30万円の費用が必要だが、中型から大型2種だと20万円だ。そして中型の8トン限定解除は8万円。2万円ほど安くなるのだ。
 ただ、中型限定解除には注意すべき点がある。ひとつは、限定解除すると、深視力検査が課せられることである。深視力検査とは遠近感が正常かどうかを調べる検査で、3本の棒のうち、真ん中だけで前後に動き、3本とも揃ったところでボタンを押すことによって計る。これは経験者ならわかってもらえると思うが、なかなか上手くいかない。遠近感は棒の色の濃度で判定するのだが、これがとても見えにくいのだ。筆者だけではなく高齢の大型免許保持者はみんな苦労している。もしこの深視力検査に不合格となると、元の8トン限定ではなく、4トンしか乗れない普通免許となってしまう。
↓深視力検査とは

 もうひとつは、8トン限定中型免許で11トン未満の中型自動車に乗っても、それは条件違反であって、無免許運転ではないことだ。無免許運転だと減点19点で免許取消、しかし条件違反だと減点2点で罰金9000円程度だ。だから推奨できないことではあるが、8トン限定中型免許であれば罰金覚悟でマイクロバスの運転は可能である。
 このように当面、11トン未満に乗る予定がないのであれば、面倒な深視力検査のない、8トン限定中型免許の方が使い勝手がいいのである。それなのに筆者が限定解除を目指すのは、前述のように今後取得を考えている大型免許のためにはその方が安くすむことと、すでに深視力検査が課せられる普通二種免許を持っているためである。

◆◆◆まずは教習所へ◆◆◆
 免許センターでの飛び込み試験は、平日の昼間に行われる。筆者は平日は仕事があるから、飛び込み試験ははじめから眼中になかった。だから費用はかかるものの自動車学校に通うことにした。
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↑入校した自動車学校
 2013年12月、近所の自動車学校へ。中型限定解除は実地のみの基本5時限の教習で、最後の見極めに通ったら、卒業検定となる。教習開始後3ヶ月以内に見極めを通らないと、教習は無効になってしまう。
 まずは所持免許の確認と深視力検査である。この深視力検査は苦労した。3回誤差10ミリ以内で停止させないといけないのだが、最初の試験は上手くいかず、10分間の休憩後の再試験となった。そこでも危なかったのだが、普通2種免許がモノをいって、どうにかお情けで合格となった。
 教習料金はこの学校の卒業生ということで1万円の割引があり、64800円であった。この日は申込書に印鑑を押しただけで、料金は第一回の教習の時でいいとのことであった。
 もう年末で仕事の都合が不明な点があり、教習開始は年明けからとした。

◆◆◆教習開始◆◆◆
 中型免許の教習は当然ながらトラックに乗る。筆者はトラックを運転した経験はない。だから最初の教習は見通しのいい昼間にしたい。というわけで、土曜日の朝1限目を選んだ。
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↑教習で使ったトラック
 トラックは運転台の位置が高く、乗り込むのにも一苦労だ。それと運転席と助手席との空間もかなり広い。最初は教官が運転する横に座って運転ぶりを拝見する。
 まずトラックの運転で注意すべき点は、ボンネットがないので、オーバーハングが小さい、つまり、運転席の前の迫り出しがないので、ハンドルを切るのを遅らせないといけないという点だ。最近のファミリーカーはミニバンが主流なので、家族持ちならばさほどの違和感はないだろうが、独身の筆者には大いにそれがあった。
 もうひとつは車長が長いので、常にミラーで左右と運転席直前を確認する必要がある点だ。ミラーはより広い面を映すために凸面なので遠近感がない。限られた時間で素早くミラーと前方と周辺を確認しなければならないので、トラックの運転手は目を酷使する。深視力検査が必要なのはこういった点からであろう。
 それとブレーキ作動が油圧ではなく、空気圧を利用すること。トラックとなると重量が重いので、足でペダルを踏む力だけでは止めることができないのでこれは当然である。しかしこれが軽く踏むだけでよく効くので、普通車の感覚で踏むと全て急ブレーキになってしまうのである。その加減が難しい。
 自分が運転する番になった。実は筆者はもう長いことマニュアル車に乗ったことがない。学生時代にほんの100m程乗っただけで、実際、教習所以来乗ったことがないと言っても過言ではない。
 約25年ぶりのマニュアル車。今日の目標はトラックの目線になれることよりも、マニュアル車の感覚を戻さねばならなかった。
 まずは外周を回る。トラックはセカンドギア発進が基本である。ローギアは重い荷物を積んで坂道発進する場合とか切り札的存在である。半クラッチなんて完全に忘れている。ギアの入りも悪い。セカンドのつもりがトップに入れエンストになる。しかし変速なんてものは、やがて慣れるものなのである。
 やがて一時停止の標識。ゆるゆるとブレーキを踏む。しかしなかなか減速しない。焦って踏み込むと急ブレーキで前のめりになる。これは一日で慣れるものではない。
 次に坂道発進。マニュアル車で一番面倒なのはこの坂道発進である。重力の作用で、クルマが後退するので、あらかじめトルクを与えておいて、発進する必要があるからだ。オートマ車はアイドリング状態でクリープ力が発生し、アクセルペダルを踏まなくても前進する。これは信号待ちでは追突の危険があるが、坂道発進では便利である。マニュアル車の場合、ややアクセルを踏み込んで半クラッチにして、クルマが下がらないようにしなければならない。その状態にしたら、停止時にかけていたハンドブレーキを解除するのである。トラックの場合、重量が重いので、この方法を用いても若干下がってしまう。そこで最近のトラックは坂道発進補助装置というのがついていて、傾斜時に自動的にブレーキがかかるようになっている。しかしこのトラックにはついていない。筆者はハンドブレーキをゆるめると後退を始めたので、焦ってアクセルを大きく踏み込んでしまった。まあ最初なんだから大目に見てもらいたい。こうして初日は終わった。

◆◆◆教習中盤◆◆◆
 2日目は夜間であった。この日は普通車でもやった狭路、すなわちS字とクランクを走行する。そして隘路。これはトラック独特の教習で、要するに車体とほぼ同じスペースに、クルマを止めることなく、ぴったりと収めることである。
 いずれもタイヤの位置を把握することがポイントである。自分の座席の下に前輪があるわけだから、かなりハンドルを切るのを遅らせないといけない。当然運転席は走路をはみ出してしまうが、気にしないことだ。後輪はミラーを見ながら、ハンドルの切れ角を調整する。前とミラーを交互に見ながら、脱輪しない一本の線を見つけだしていく。
 隘路は入れたいスペースの中心部がタイヤを通過したら、ハンドルを大きく切る。例によって運転席はスペースより前に出るが、これを無視する。ハンドルを戻すタイミングは運転席と反対側のスペースのラインが見えてからでいい。ここで戻すタイミングを間違えるとラインをはみ出すので注意しなければならない。それとこの動きは止めてはいけない。速度調整はクラッチペダルで行う。すなわちクラッチを踏めば、惰性で動き、半クラッチにすれば動き出す。つないでしまうと速く動いてしまうので失敗することになる。このあたりはクリープ現象のあるオートマ車と同じような感覚だ。
 この日の講習はもう一つうまくいかなかった。
 3日目は土曜日にしたので午前中だった。教官は2年前バイクの教習に来た筆者のことを覚えていた。ブレーキはまだ慣れないものの、狭路、隘路は相当によくなった。しかしまだ適当にハンドルを切っているところがある。この日は復習が主だったので、本来の課題である方向転換は少しやっただけで終了した。
 4日目は縦列駐車と方向転換を重点的に行った。トラックは図体が大きいので難しいところはあるが、理屈は普通車と同じである。トラックはエンジンのアイドリングでもトルクがあるので、アクセルを踏まなくても、速度調整ができる。むしろ難しいのは後方間隔である。運転席からは遠く離れているので、50cm以内につけろと言われても、実際は1m以上空いていたりする。今ならバックモニターがあるのでそれほど苦労することないだろう。
 あとは路肩から30cm以内に車体を寄せて停車し、目標の30cm以内にトラックを停止させること。また路肩発進では車体後方を側壁にぶつけることなく、目の前の障害物をよける練習もする。これも技術的には発進してすぐにハンドルを大きく切らないようにしなければならない。
 5日目は法規走行。今までのテクニックに加えて、実際の路上で遭遇するであろう不測の事態に備える安全確認を行っていく。トラックは車体が重いので急には止まれない。幸いトラックの運転席は高くて見晴らしがいいので、できるだけ早く危険を察知して、早い目にブレーキを踏む準備をするのである。ブレーキは強く踏み込むのでなく、停止寸前に若干弛め気味にするのがポイントである。
 トラックの運転特性については下のサイトが詳しい。

↓トラックドライバーのための安全運転の基礎知識
http://homepage3.nifty.com/chu-ei/zerosai-4.htm

◆◆◆教習見極め◆◆◆
 6日目。本来は中型限定解除は5時限で終了なのだが、2日目で復習項目があったので、1時限余計にかかった。この教習所は時限が増えても追加料金は必要ない。
 今日は見極めである。ここを突破すればあとは卒業検定である。この日の教官はバイクの時から相性が悪い人であった。人間は苦手意識があるとしなくてもいいミスを連発するものである。しかし前述したように、落ちても追加料金が発生しない。だから、ミスしてもう一回受けた方がトクだと前向きに考えることにした。
 見極めのコースは路側発進、交差点右左折、S字、クランク、踏切、隘路、坂道発進、方向転換、縦列駐車と全ての課題をこなす。隘路は左ギリギリだったし、縦列駐車は切返しを入れざるを得なかった。後方感覚も後ろ余裕たっぷりだったし、路側駐車も左ギリギリ、発進もポールに当たる寸前だった。おまけに一時停止のブレーキも「もう少し穏やかに踏みましょう」と注意された。
 こんな調子であったから、見極め不良で「もう1回」かと思った。それは望むところであったが、結果は「卒業検定を受けて下さい」とのことであった。もしかすると、限定解除というのは合格基準が低いのでは、と思った。
 卒業検定は平日のみ実施される。仕事の都合がわからないので、受験日は後日連絡することにした。検定コースはAB2種類。どちらが来てもいいように覚える。

◆◆◆卒業検定◆◆◆
 2014年2月6日、いよいよ卒業検定である。試験開始は1時なので、30分前に教習所にやってきた。受験料5250円を支払う。もし落ちると、もう一回補習を受けて、再受験となる。その愚行は避けねばならない。
 試験官は第1回目の教習の教官であった。彼にはいい印象がある。まずはコースの説明である。この日はAコースであった。検定コースは試験官が指示してくれる。ただやはり覚えておいた方がいいだろう。試験はトラックに乗り込み、サイドブレーキを引いてバックギアに入れるところまでだ。踏切、坂道発進、縦列駐車は課題にはない。
卒検.jpg
 検定は試験官と受験者の他に、不正防止のため、監視者が添乗する。一般にその役割は、他の受験者となることが多い。今回は私の他にトラックの受験者はいなかったので、普通免許を受験する若い男が座った。トラックの後部座席は狭く、横向きに座ることになる。大型トラックだとここはベッドのスペースとなる。そういえば、かつてはトラックは2人で交代で乗務していたと思うが、高速道路が発達して、運転時間が短くなったためか、1人乗務が普通になったようだ。
 卒業検定は教習所のコース内で行われる。
 見極めの時のようなヘマはすることなく、ほとんど完璧に近かった。どう考えても落ちることは考えられなかった。
 午後1時40分、検定終了。今度は添乗していた男が受験することになる。普通車の卒業検定は学外の路上で行われる。筆者は運転席の後ろに乗り込んだ。試験はマニュアル車だ。男はどうしたことか安全確認ばかりして、なかなか発進しない。ようやく急加速しながら発車した。この教習所は堤防の脇にあり、一般道に出るには、必然的に坂道発進となる。そこでもどこまで下がるのかというぐらい後退してから発車した。発車というよりも発射に近かった。その他、左折時クルマを左に寄せすぎたり、直進青信号でも右折車を待ったりして、とてもこれでは、という運転技量であった。おまけに学内の車庫入れでも脱輪していた。自分の試験よりもドキドキした。
 14時10分添乗終了。あとは合否結果を待つだけだ。結果は「合格」。全くミスはなかったと思ったが、S字で脱輪していたらしい。トラックはタイヤが太いので、脱輪していても気がつかない。今後気をつけるようにということであった。
 卒業証明書を受け取ったのはその1時間後であった。校長先生に別の部屋に呼ばれ、証明書の有効期限は3ヶ月で、それを過ぎると紙切れとなると説明された。
 ところで、添乗の男は不合格だった。どうやら何度目かの卒業検定で、また補習を受けることになる。教官からは2月16日までに卒業しないと、再度入学することになると言われていた。男は学校の勉強があると難色を示していた。そういえばこの男、待合いのベンチで地方自治についての難しいレポートを読んでいた。頭は良くても運動神経は鈍いのかもしれない。

◆◆◆免許書き換え◆◆◆
 免許の更新であれば日曜日でもできるのだが、書き換えなので、平日に限られる。仕事の都合でなかなか休めず、免許書き換えは、遅れに遅れ、2ヶ月後の4月であった。限定解除は新たな免許が発行されるわけでなく、したがって、免許証表面の「中型車は8tに限る」という表記が消えるわけでない。裏に「限定解除」という判子が押されるだけである。大した手数ではないと思うが、1550円の手数料が取られる。
↓書き換えられた免許証(裏)
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◆◆◆おわりに◆◆◆
 この免許を取ったとしても、おそらくマイクロバスやトラックを運転する機会が訪れることはないだろう。つまりは無駄遣いなのだが、それでも乗り物の操縦、それも大きなものを操縦するのは快感であった。何より新たな技術の習得というのはとても楽しいことだ。
 次はさらなる無駄遣い。大型2種に挑戦しようと思う「アホな」筆者であった。
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コメント 2

とおりすがり

ブログ内で
    積載量
大型  8トン以上
普通  8トン以下

↑普通は8t以下ではなく8t未満の間違いですね。

あと、現行の範囲にも間違いが

    積載量
大型  11トン以上
中型  4トン以上11トン未満
普通  4トン未満

↑中型は4t以上ではなくて5t以上です。
そして、普通は5t未満になります。

by とおりすがり (2015-09-27 23:57) 

umayado

とおりすがり様

ご指摘ありがとうございます。早速訂正させていただきました。
by umayado (2015-10-18 21:21) 

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