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平成最後の資格~刈払機安全衛生教育受講 [資格]

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 2019年3月、管理人はある資格の取得を目指していた。合格していればそれは「平成最後の資格」となるはずだった。しかし自己採点の結果不合格が判明した。平成はあと1ヶ月ぐらいしか残っていない。この失敗の穴埋めに何か資格が取得できないだろうか。
 この世にある資格は様々である。すでに管理人が取得したものでは、運転免許のようにそれがないと法律で罰せられるというのもあるし、特殊無線のようにそれがないと従事できないものののその必要性が低いものや、アロマテラピーのようにどうでもいいものから、赤十字救命士のように資格というよりも講習が意味があるものもある。
 そんな中でも既に持っている資格の中でも取得が容易だったのは、フォークリフト、クレーン、玉掛けの技能講習だ。これらはすべて勤務先で必要なものだったので、会社が費用を負担してくれた。初日は座学で、2日目は実技講習と試験。その後にごく簡単な筆記試験があって、ほぼ即日に受講証明書が発行されるというものであった。費用はおおむね1万円ぐらいで、お金と時間さえあればほぼ確実に取得可能だ。こういう技能講習はそれがないとその作業に従事できないというよりは、労働災害を防止するために厚生労働省が講習を受けるように企業に勧めているものだ。講習は厚生労働省の外郭団体が産業機器メーカーに委託して行っており、高い費用はおそらく外郭団体に天下りした役員報酬に使われているのだろう。
 そう思うと面白からずな気持ちになるのだが、とにかくほとんど無試験で取得できる資格として、その時点で急浮上することになった
 労働現場において、危険有害な作業を行うにあたって、一定の技能講習を受講したものを従事させるために、就業を制限したものや、就業を制限されたものに就くために受けるべき講習があり、学科と実技による講習と簡単な修了試験のある技能講習と、講習を聞くだけで修了証をもらえる特別教育がある。技能講習であっても実技・試験がなかったり、またその逆もあったりして例外もあるのだが、おおざっぱにいえば、技能講習の方が特別教育の方が格上であり、つまりは技能講習の仕事は危険度が高いというわけだ。
 管理人が持っているクレーン、玉掛け、フォークリフトはこの特別教育で修了したものだ。
 しかし特別教育のさらに下にほぼ講習のみという安全衛生教育というのがあり、以下のようなものが指定されている。

振動工具取扱作業者
造林作業の作業指揮者等
木造建築物解体工事作業指揮者
揚貨装置運転士
クレーン運転士
移動式クレーン運転士
フォークリフト運転業務従事
ボイラー取扱業務従事者
ボイラー溶接業務従事者
ボイラー整備
チェーンソーを用いて行う伐木等の業務従事者
機械集材装置運転業務従事者
ストラドルキャリヤー運転業務従事者
玉掛け業務従事者
刈払機取扱作業者
建設工事に従事する労働
丸のこ等取扱作業
車両系建設機械(基礎工事用)
車両系建設機械(整地、運搬、積込、掘削用)
職長

 要するに特別教育より取得を簡単にしたものだ。表向きの理由は労働者の安全意識を向上させて労働災害を防止するということだが、やはり天下り先の外郭団体の仕事を確保するためだろう。
 それはともかく管理人はこの中の「刈払機取扱作業者安全衛生教育」を受講することにした。刈払機とは要するに草刈り機でよく堤防とかで雑草を刈るに使っている、あの棒の先に小さな回転のこぎりを取り付けた機械だ。この刈り払い機はこの教育を受講しなくても使えるのだが、官公庁の仕事を受託する場合はこの教育を受けていなければならないといういうことで、企業に受講を勧めているわけだ。
 講習は地元和歌山でも行われていて、月1回のペースで4月は水曜日の実施だった。こういう講習は企業向けなので平日なのは仕方がないのだけれども、どうせ有給休暇を取るのなら次の日は休みにしたい。金曜日に近畿でやっているところはないのだろうか。あった。
 4月26日、大阪府茨木市のキャタピラー教習所で刈払機の講習があることがわかった。茨木とは遠いが、前泊するほどのことではない。講習が終わったら、大阪のホテルでのんびりしよう。そう決まったところで、講習費用10500円を払い込み、写真付きの申込書を郵送した。返送されてきた受講証の番号は5番だった。講習まで日がないのにこの若い番号は人気のなさを感じさせた。

4月26日金曜日、電車を乗り継いでJR茨木駅にやってきた。平日の通勤時間帯に大阪方面の電車に乗るのは久しぶりだった。8両編成でも混んでいて、進行方向逆に辛うじて座れた。サラリーマンが大股で歩く大阪駅に降り立った時、いつも田舎企業にバイク通勤なので、もしスーツを着ていればエリート社員になった気分になれるのになあと思った。しかしこの講習は作業服に安全靴が望ましいとされている。管理人は作業服ではなくジーパンだったが、靴は普段バイク通勤で履いているワークマンで買った防水シューズが安全靴そのものなのでそれを履いてきた。つまりエリートとは程遠いブルーカラーであった。
 キャタピラー教習所は国道170号線沿いにある。茨木駅からは阪急バスに乗る。下井バス停から歩いて5分。広大な敷地のキャタピラー教習にやってきた。販売ではなく講習専門の施設で、すでにクレーンの実習講習が始まっていた。
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↑茨木キャタピラー教習所
 講習予定表にベトナムの国旗があった。今や建設作業員は外国人労働者に頼っている状態であり、ベトナム人労働者にも当然安全教育を施さねばならない。しかし彼らは日本語はわからないので、女性の通訳が奔走していた。
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↑クレーンの教習中
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↑予定表にベトナム国旗
 受付を終えると2階の講習室に案内された。受講番号順に座る座席指定であった。ほぼ教室が埋まっていた。
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↑1階が事務所2階が教習室
 講義は9時から開始された。講師の顔はモノマネ芸人の松村邦洋に似ていた。
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↑教室

 刈払機講習は13名の参加。その内2名が私と同じ触ったことのない初心者。大体は会社から来ているらしく、作業服を着た人もいる。ジーパンを穿いた初心者は3名ぐらいだった。
 講習はパソコンと大型スクリーン。パワーポイントとメディアプレイヤーで動画再生と平成後期では一般的になった講義スタイルで突き進んでいった。

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↑テキスト
講習は超眠たく、何度もこっくり来た。特に法規の説明は法律で義務づけられているので割愛できないが、講師も受講者も我慢しなけければならなかった。動画では主に事故の事例が紹介された。

 昼食はQUOカードを使って幕の内弁当を買い、教室で食べた。ベトナムの人たちはコンビニの食事は口に合わないのか、自分たちで麺を持ち込んでフォーのようなものを作って食べていた。
 肝心の実技講習で激しい雨が降ってきた。やったことは教室の中で実際に刈払機を担いだことと、雨が上がってから外に出てエンジン始動を見学しただけである。
刈払機の持ち方
1.ベルトを肩に掛ける
2.機械を手に持たずに刃が地平に対して5度を保つようにベルトを調整する
3.左手は軽く添え、5cmほど沈めて、刃を傾ける。
4.右から左に刃を移動させる
5.キックバックを避けるため左から右には移動させない
6.半歩ずつ前進する
7.小石には注意する
8。蜂・蛇にも注意する

キックバックとは切断した草や石が作業者に向かって飛んでくることである。歯は上から見て反時計回りで回転しているので、左半分に当たったものはこちらに向かってくるわけだ。
 草むらには蛇や蜂がいる。蛇は何もしなれば大概は逃げるが怒らせると攻撃に転じ噛みにくる。蜂も同様である。足下と顔のガードが必要だ。それに蜂は休憩での飲み残しのジュースの中に潜んでいることがあるので注意しなければならない。
 あとこの作業は手に振動を受け障害が発症することがあるので、1日の作業は2時間以内し、30分以上の連続作業は避け、5分以上の休止時間か、鎌など手工具による除草作業に変えたりすることが規定されている。しかし実際に守られているかどうかはわからない。

エンジン始動要領
1.チョークを閉じる
2.スポイトのようなポンプを指で動かしシリンダーに燃料を供給
3.コイルコードを引き、ポンポンと初爆音を確認する
4.チョークを開きコイルコードを引く
5.エンジン始動を確認
6.エンジンを切るにはKILLスイッチを押すか、チョークを閉じる

 草刈り機は2サイクルエンジンを使用している。小型軽量で高速回転するこの用途にはふさわしいといえるが、シリンダー内でエンジンオイルが一緒に燃えるので排ガス規制をクリアするのが難しく、4サイクルエンジンに置き換わりつつあるらしい。このエンジンを見ていて疑問に思ったのはバッテリーがないことだ。セルモーターの代わりとなる始動はコイルコードがあるからいいとしても、スパークプラグの電気はどこから供給しているのだろう。いろいろ考えたがどうやら出力軸と同軸で回る発電機から直接供給しているらしい。間違えていたら指摘してほしい。
 それにしてもテキストを見てもエンジン付きの刈り払い機の説明しかない。ホームセンターでは電動式の刈り払い機も売っている。プロはそういうのを使わないのだろうか。
 16時30分に講習が終わり、写真付きの修了書が配れた。これが平成最後の資格となった。資格といっても何の勉強もしていない。講義を受けただけだ。資格といえるものではないかもしれないが、履歴書には書ける。それなりに意義があるのだと自らに言い聞かせる。
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↑修了証
 16時45分発のバスに乗って茨木へ。大阪駅から御堂筋線で難波へ。
 予約していたカプセルホテルアムザに着いたのは17時45分頃。ここは管理人の大阪の定宿である。カプセルなので運が悪ければ泥水者のいびきに悩まされるが、風呂が広く、くつろげるスペースも広い。漫画も新聞も置いてある。疲れていればマッサージもある。
 風呂に入って、ホテル内にある「男はつらいよ」で一献。このアムザは風呂もカプセルもいいが、食事が弱い。「男はつらいよ」は高い割に量が少なくしかも美味しくない。
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↑文句を言ってますがやっぱ酒はイイネ
 したたかに酔って21時にはカプセルで寝込んだ。0時頃宿泊客の口論で目が覚めた。また寝て4時頃起きて風呂に入りまた寝た。カプセルならでは行動だ。床で寝ている人がいるので踏まないように気をつけないといけない。
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↑カプセル内部(頭から足に向かって撮影)
 翌日8時に起きて朝食を食べ、次の目的地に向かった。
 令和初の資格はいったい何になるのだろう。勉強するのが面倒になれば、この「安全衛生教育」を利用するかもしれない。
タグ:刈払機講習
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簿記3級取得記 [資格]

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1.はじめに
 簿記という言葉はどこかで聞いたことがあるだろう。
「金銭のやりとりを記録した小遣い帳みたいなものかな」
これは間違った認識ではないが、正しい解答ではない。実際の簿記は収入と支出を記録するだけでなくもう少し複雑である。一般家庭であれば、それこそ収入と支出を記録して残高を算出できれば十分だが、商店を経営しようとすればそうはいかない。商売では商品を売ってもすぐにお金をもらえるとは限らないし、そのまま売った客先が倒産することもある。また商売を始めるにあたっての元手だけでは足りない場合は借金をしなければならないし、それを考慮しなながら商売しなければ、いわゆる放漫経営になってしまうだろう。それに納税額が少なくてすむ青色申告を適用するには複式簿記で作成する必要がある。
 筆者はさしあたり脱サラして商売をはじめるつもりはないが、簿記の知識は頭に入れておくことは悪いことではない。また先日ファイナンシャルプランナーの資格を取得したところで、できればお金に関連した資格を取得しておきたいという気持ちがあった。しかし結論からいうと、簿記とファイナンシャルプランナーは関連性が低かった。
 それはともかく筆者は簿記3級の挑戦は長期間に渡っている。1994年に1回目、2014年に2回目を受けている。1回目と2回目に20年もの期間が空いているのは、1回目の頃に、筆者の資格取得マイブームがあり、ブームが去ってからはマラソンやトライアスロンなど体力作りに専念していたからだ。それが2013年にバイク免許を取得したのをきっかけに再び資格取得マイブームがやってきたのだ。
 1回目の敗因は明らかに勉強不足であった。過去問すらやっておらず、参考書の選定も悪かった。試験でもお手上げであった。2回目はそれなりに準備したものの、理解不足が原因で過去問の成績も合格点70点ギリギリのまま、試験本番に突入し、時間不足で玉砕してしまった。
 3回目の挑戦は万全を期すことにした。
 なお、簿記の何たるかはこの動画が詳しい(リンク切れはご容赦下さい)


2.参考書を選ぶ
 簿記の勉強の最大の特徴は
「覚えることは少ないがややこしい」
ということに尽きる。とかく資格の勉強は覚えることばかりで、それこそ頭から煙が出て挫折というのが実に多い。また未経験者から見れば簿記といえば計算力のイメージが強いが、実のところ確かに間違いなく計算するという能力は必要だが、それほど複雑な計算式が必要なわけではない。その点この簿記は異質の資格試験といえる。とはいえ、この簿記3級の合格率は30%から40%で決して簡単な試験ではないのだ。覚えることも少ない、計算力もいらない。なのに簡単ではない。この試験が難しいのは問題の意図を読み取る国語力なのだ。それが簿記をややこしいところなのである。
 もう一つの特徴は一部を除いて選択式ではなく記述式なので、当て推量での解答ができないことだ。


 さて、資格取得の勉強するにあたっては良質な参考書または問題集は必要不可欠である。
i,使用した参考書
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スッキリわかる日商簿記3級
作者:滝沢みなみ
出版社:TAC出版
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 この本を1ページ目から丁寧に読めば、簿記の何たるかを理解できるはずだ。筆者の経験ではこれ以上わかりやすく書かれた参考書は知らない。少々回りくどいほど同じイラストが出てくるが、理解しやすくするにはそれしかないだろう。基礎を固めるには最適な参考書といえる。この本の欠陥があるとすれば、仕訳の説明に大半を要していて、実際に試験に出される試算表、精算表、伝票などの説明が粗いことだ。ただ簿記の能力の7割は仕訳を確実にできることであり、2割は計算力、残りの1割が知識だ。つまり仕訳ができないとお話にならないのだ。
 とにかくこの本の仕訳篇を、各単元ごとの練習問題を含めて確実に理解しておくのが肝心だ。
 注意しておきたいのは、簿記の出題範囲がしばしば変更されていて、古い参考書は使わないことだ。筆者が受験した2016年からは為替手形がなくなり、伝票も3伝票制に変わった。減っただけならいいが増えたのもあるからやっかいだ。古本屋で簿記の本を買うのはおすすめしない。日商簿記の公式Webサイトをチェックして、最新版の参考書を購入するべきである。

ii,使用したアプリ
パブロフ簿記3級日商簿記仕訳対策
wills.co.ltd
600円
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 今や資格の勉強でスマートフォンアプリを利用するのは常識だ。筆者はAndroidユーザーなのでApple対応版は存在するのか知らないが、このアプリはおすすめできる。600円とアプリにしてはやや高額ではある。しかし仕訳の勉強に関する限りこれに勝るものはないだろう。
 前述の参考書を読んで、何となく簿記というものがつかめたら、どんどん問題をやっていくべきである。問題の解答は選択式で、試験本番の記述式とは大いに違うものだが、仕訳対策としてはこれで十分である。問題数も十分ある。このアプリのいいところは以下の通りである。
・問題の解説が簡潔
・自分の解答と正答を比較できる
・間違えた問題だけを復習できる
・それとは別に問題にチェックをいれて復習できる
・出題範囲の対応や誤りが自動的に更新される
・模擬問題をダウンロードできる
 このアプリを電車の待ち時間などのスキマ時間にやっていけば、自然と仕訳の能力が上がってくる。膨大な問題数だが、これを100%正答できないと合格は覚束ないだろう。

 いきなりアプリを購入するのに抵抗があるなら、無料のLite版があるのでそれを試してみるといい。
 実のところ、資格に関するアプリは、値段が高ければ高機能とわけではなく、特にマイナーな資格はいい加減な内容のアプリが多い。しかしこのパブロフシリーズは良心的なのでお勧めできる。

ii,参考にしたブログ
パブロフくんが日商簿記2級、3級を目指すブログ
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 どんな資格の勉強でも「何でこうなるのかわからない」といった壁にぶち当たるものだし、「試験に合格するコツは何か」とかいう情報は欲しいものである。
 幸い簿記は人気のある資格なので、多くの人がわかりやすい解説を提供している。極端なことをいえば、わからない語句をグーグルで検索すれば、ほぼ疑問は解決するだろう。
 筆者が多用したのは
「パブロフくんが日商簿記2級、3級を目指すブログ」
である。名前から推察されるとおり、前述のアプリの作成者が書いているブログだ。試験情報、試験範囲、試験対策勉強法、試験前日の過ごし方、電卓の使い方など多岐にわたっている。多少回りくどい感があるが、Youtubeにビデオ講義もアップしている。もちろん無料で視聴できる。筆者は「どうすれば簿記3級に合格できるか」ということを、今まさに書こうとしているのだが、このブログはここで改めて書くまでもないほどの情報量だ。

iii,使用した電卓
 電卓は100円ショップでも売っているが、耐久性や信頼性が低い。試験中に壊れたらお手上げなので、しっかりした電気屋さんで買うべきである。シャープ、カシオ、キャノンが電卓御三家。それぞれに性能に差はほとんどないので、メーカーは好みで選べばいい。
 筆者が重視したのは以下の点である。
イ、キーを押しやすさを重視してある程度の大きさがあること
ロ、00キーがあること
ハ、メモリー機能を持つこと
ニ、平方根を計算できること
ホ、消費税計算ができること

 簿記に絶対必要なのはイロハである。小さい電卓は指が絡んで速く打てない。時間が勝負の簿記試験では絶対不利である。00キーがあればたとえば20000なら3回のキータッチですむ。これは時間短縮効果が大きい。メモリーがあれば中間計算値を紙にメモする必要がないので時間短縮できる。ニからホは簿記試験には必要がないが、例えば電気や統計関係の資格の勉強をするならば平方根は必須である。税率計算ができれば普段の生活に便利だ。電卓は10年以上使えるのでいいのを選んでおくべきだ。

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↑筆者が使った電卓(CANON製)

iv,勉強時間
 巷では簿記3級は簡単だ、独学で1週間でできるなどと書いているが、それはおそらく頭のいい人なのだろう。筆者の経験では、知識がゼロなら1ヶ月はかかると思う。また会社勤めの方なら勉強時間は限られるから、2ヶ月は見ておいた方がいい。ただしそれは仕訳の仕込み時間を含めてだから、過去問の演習は1ヶ月前からでも大丈夫だろう。


3.簿記勉強のテクニック
i,仕入れと売り上げ

 複式簿記では左に借方(かりかた)、右に貸方(かしかた)を書く。ここでの借貸には特に意味はなく、何となくそうなっているらしい。左右どちらに借方だったかというのを覚えるのに、ほとんどの簿記の本はこのように説明している。
・「かりかた」の「リ」は文字が左に伸びているから左
・「かしかたの「し」は文字が右に伸びているから右
というものである。
 借方、貸方についてはこの動画が詳しい

 しかし試験でどっちがどうだということは問われない。別にこれを覚える必要はない。むしろ覚えなければいけないのは「仕入(しいれ)」と「売上(うりあげ)」がどちらにあるかである。一般には仕入が左、売り上げが右である。
 覚え方は若干複雑である。
・「仕入(しいれ)」の「し」は右に伸びているが逆の左にある
・「売上(うりあげ)」の「り」は左に伸びているが逆の右にある
「逆の」というのがポイントである
 とにかく、簿記では「仕入」ときたら左の借方に書き、その右には現金、当座預金または買掛金、「売上」ときたら右の貸方に書き、その左には現金または売掛金を書く
「仕入」は左、「売上」は右
と反射的に書けるようになることが簿記合格への第一歩である。

ii,資産、負債、費用、収益の関係
 簿記の勉強を始めると、まず最初に資産と費用は借方、負債と収益は貸方と説明される。大雑把にいって資産は現金、負債は借金なので、ここから「資産はあったらうれしいもの」「負債はない方がいいもの」として解説される。しかし「あったらうれしい」収益が貸方にあって、「ない方がいい」費用が借方にあるのは疑問に思うはずだ。筆者が最初の2回で受験で玉砕したのは、ここが理解できなかったからだ。
 筆者はこのように考えた。

イ、商売を始める
 商売を始める場合、まずは元手の資本金と借金をするはずだ。この場合の仕訳はこうなる。
借方貸方
現金 1000借入金 500
資本金 500


元手の現金は資本金として500円、借金は500円の合わせて1000円だ。複式簿記は何かが増えたら、その理由または結果を反対側に書くというのが基本だ。この最初の仕訳を見てまずはそれをイメージしてもらいたい。ここでは資産である現金が増え、その代わり負債の500円と資本金500円が増えたというわけだ。

ロ、まずは備品を購入
 最小限の行商をはじめるにしても備品やら筆記用具などの消耗品が必要だからそれを買う。
借方貸方
備品 500
消耗品 50
現金 550

 ここでは備品と消耗品を合わせて現金550円で買った。現金550円が減少したから貸方に550円を書く。減った理由が備品と消耗品だったというわけだ。現在現金は450円である。この場合は備品と消耗品が増えたけど、資産である現金が減ったというわけだ。簿記の世界では消耗品と消耗品費では扱い方が違うのだが、ここでは資産としている。また備品も経年劣化するので減価償却という概念がある。この消耗品と減価償却が毎年のように試験に登場するのでよく理解しておくこと。

ハ、商品を仕入れる
借方貸方
仕入 300現金 300


 売るための商品を仕入れた。商品とは「米屋が米を買う」場合の米に相当する。現金が減ったので、貸方に300円と書く。前述したように仕入(シイレ)は左です。

ニ、宣伝する
借方貸方
宣伝費 50現金 50


 商品を売るために広告を打った。ここで初めて費用が登場する。宣伝費を50円払ったというわけだ。貸方に50円と書くのはもうパターンでわかるだろう。

ホ、商品が売れた
借方貸方
現金 500売上 500


 300円で仕入れた商品が500円で売れた。現金500円が増えたので借方に記入。その理由が貸方に売上となる。前述したように売上(ウリアゲ)が右。

ヘ、借金を返済
借方貸方
借入金 500現金 500


 借金を返済を催促された。親類に借金したので金利はタダにしてくれたことにする。貸方にあった借入金が減るので、反対の借方に書き、そのかわり資産の現金が減った。

ト、さあ決算
借方貸方
現金 1000

備品  500
消耗品 50
仕入300
宣伝費 50
現金  500
借入金 500
借入金 500
資本金 500
現金 550

現金 300
現金 50
売上 500
現金 500



 話を簡単にするため、ここで決算を迎えたとする。ここまでの仕訳をまとめると上のようになる。まずは現金に注目すると借方と貸方のそれは次のようになる。
借方=1500 貸方=1350
借方の方が150円多い。つまり現金が150円残っているわけだ。借方と貸方を同額にするにはどうすればいいか。それは貸方に150円足せばいい。
借方貸方
現金 1500現金 1350
収益 150



要するに、この150円が仕訳での収益となるのである。これが右側の貸方に収益がくる正体になるのである。

 費用はどうかいうと、仕入れた商品が売れずに、決算を迎えたと考えればいい。
借方貸方
現金 1000

備品  500
消耗品 50
仕入300
宣伝費 50
借入金 500
借入金 500
資本金 500
現金 550

現金 300
現金 50
現金 500


 同様に現金に注目してみると、
借方=1000 貸方=1400
 今度は貸方の方が400円多くなる。同額にするには借方に400円を加える。
借方貸方
現金 1000
費用 400
現金 1400



 費用が400円。つまり400円の赤字となるわけだ。これが費用の正体である。赤字なのに借金を返済したのは、ちょっと無茶なのだが、まあせかされて温情で返済したと考えるとする。この赤字は資本金の500円を取り崩していることになる。

 どうだろうか。これで費用、収益がなぜ借方、貸方にあるのかおわかりいただけたのではないか。筆者はこのように実際に商売したことを考えて、ようやく理解できた。特に最初の資本金から現金を元入れするところは簿記の概念上重要なので覚えておくことだ。

iii,仕訳をすばやくするには

簿記の試験では第3問が最も時間を要する。ここは多くの仕訳を誤ることなく、計算用紙に書いていく必要がある。売上とか仕入、売掛金に買掛金とかよく似た字面もあるし、減価償却累積金とか書くのも嫌になるのもある。また50,000とか0を書くだけでも面倒で時間がかかる。
 そこで筆者は以下のような略号を考えた。

売上げ=売
仕入れ=仕
売掛金=U
買掛金=K
支払手形=シT
受取手形=ウT
減価償却費=dep(depreciation costの略)
減価償却累積金=るい
50,000=50,---

 まず、仕訳に頻出し、かつ重要なのは、売上、仕入、売掛金、買掛金である。売上を売、仕入を仕の一字に省略する。売掛金と買掛金は、これらと間違えないようにまた目立つようにU、Kのアルファベットで書く。手形は同じくTで表して、支払手形をシT、受取手形をウTとした。売上、仕入をウ、シにしなかったのはこの手形と間違えないようにするためにである。
 長い減価償却費はdep、減価償却累積金は「るい」とした。
 そして、これが一番重要だ。簿記では千円以上の単位を扱うことが多い。それを丁寧に,000と書いていては時間がかかる。千円以下の単位ですべてゼロなら、「,---」とコンマと横棒に省略するのである。

4.合格点を取るために
 簿記3級の試験は大問5つで構成されている。

1,仕訳問題(5題) 配点20
2.帳簿記入(商品有高帳、補助簿の選択など) 配点8~10
3,試算表 配点30~32
4,伝票会計など 配点8~10
5,精算表または財務諸表作成  配点30~32

 簿記を勉強したことがない人は、何のことだかわからないかと思う。それはさておいて、まずはこの簿記3級の合格点は70点だということだ。この配点を見ると、1,3,5の奇数問題が全問正解ならそれだけで合格だ。つまり偶数問題の帳簿や伝票会計は面倒な割には配点が低いので、勉強は後回しでよいわけだ。極端なことをいえば試験前日にやってもいいのである。
 そのかわり奇数問題は確実にモノにする必要がある。まずは第1問の仕訳問題は5題しかなく難易度も低いのに配点が大きい。ここは絶対満点を取らないといけない。筆者が仕訳が重要だといった理由はそこにある。実際の試験では、この第1問は7分程度で解答する必要がある。そうしないと第3問、5問をやっている時間がなくなるのである。
 次に試算表はある一定の期間の取引を重複に注意しながら仕訳し、それを勘定科目ごとに合計していって、その金額を借方と貸方にある前月の繰り越しと合わせる。つまり、ここでも仕訳がでるので、それが重要になってくるわけだ。
 試算表で超重要なのは合計試算表と合計残高試算表を間違えないことだ。
 試算表の左端と右端に「○月○日合計」と書いているのは、合計試算表で、この場合借方、または貸方の繰り越しと合わせるだけでいい。
 試算表の借方左端と貸方右端に「残高」と書いているのは、資産または費用であれば、借方の合計から貸方の合計を引き、負債または収益ならば、貸方の合計から借方を引いた金額を記入する必要がある。
 やってしまいがちなのは合計試算表なのに残高試算表の計算をしてしまうことだ。この場合、仕訳も計算も合っているのに、0点となってしまう。
http://pboki.com/boki3/trial/tb.html
↑上記の問題のパブロフによる解説

 それから、借方と貸方の合計が合わなくても気にしないことだ。試験には部分配点があるし、過去の傾向から合計が合っているかどうかは配点されないからだ。
 第3問は簿記の試験でもっとも時間がかかるので、確実な仕訳と慎重な計算が要求される。
第5問の精算表は商店の決算書というべきものだ。年度末時点の試算表から、繰り越し、見越し、前払い、未払いなどの修正仕訳をして、損益計算書と貸借対照表を作成する。試算表ほどではないが仕訳の知識がないと解けないのはいうまでもない。それと保険金などの前払い金や未払い利息を月割りで処理したり、消耗品費を消耗品に振り替えたり、繰越商品の精算に関する知識が必要だ。精算表作成は借方、貸方をチェックできるので割とわかりやすいのだが、精算表なしでいきなり損益計算書と貸借対照表を作成する問題が出されることがある。この場合は計算用紙に精算表を書いていくことになるが、その分間違えやすくなるので注意が必要だ。
 第3問と第5問でそれぞれ30分から40分の時間を要する。試験時間は120分だから第1問3問5問だけで90分を要するので、第2問4問は30分程度しか時間がないことになる。
 しかし第2問4問はそれほど難しくない。伝票問題は仕訳がわかっていれば、簡単に解けるし、帳簿に関しては繰り越しとか先入れ法とか移動平均法とかがややこしいけど、それほどの時間を要しない。おそらく両方で20分程度でできるはずだ。重要なのはヤマ張りをしないことで、過去問で既出しているパターンを浅く広く理解しておくだ。奇数問題さえ完璧なら0点でもいいし、部分配点で得点できれば幸運だったと思えばいいのである。こういう資格試験は合格点に達すればいいのであって、満点を取る必要はないのである。
 そして最後の10分は見直しをすること。筆者も経験したが、じっくり見直すとケアレスミスはあるものなのである。これだけでも10点は上積みできる。見直しの10分を作れるくらいの実力をつけて挑みたいものだ。

5.過去問の取り組み
 参考書を読んで簿記をまあある程度理解できた。仕訳もアプリでほぼ完璧にできた。この段階になったら、過去問の演習に取りかかる。簿記3級は過去問の傾向から大きく逸脱した問題は出題されないから、過去問演習は重要である。
 過去問はTACや大原専門学校のサイトから簡単に入手できる。簿記試験は問題にあらかじめ書かれている数字の横に書き込まないと計算しにくいので、紙代は膨大になるが、PDFファイルを印刷した方がいいだろう。
 過去問はその実施回ごとに2時間の制限でやってもいいのだが、たぶん最初にそれをやると、時間が足りなくて挫折する可能性が高い。
 筆者のお勧めは第1問の仕訳を入手できる過去問をすべてまずやってしまうことだ。パブロフのアプリをやった後なら、ほぼ満点のはずだ。間違えたところをチェックする力試しが目的だ。ただし為替手形は2016年以降は出題範囲から除外されたのでやらなくてもいい。
 その後はボリュームのある第3問を同様に、過去4回分を連続的にやる。最初は30分ではとてもできず、落胆するが、回数をこなすうちにできるようなるから心配しなくていい。
 最初のうちは第3問だけで精一杯だと思うが、第5問も同様に過去4回分をやる。サラリーマンの場合、平日は2時間勉強できればいいところなので、一日に第3問と第5問を1回ずつやるつもりで進めればいい。間違えたところは自分の弱点なので、そのポイントノートに記載していく。このノートは試験前日、および試験会場での直前チェックに役に立つ。
 ともあれ1週間あれば奇数問題攻略の取っかかりができるはずだ。これを同じ問題であと1週間、もしくは2週間、つまり3回転すれば相当実力がつくはずだ。
 次に実践問題に入る。過去問はつまりは過去に出た問題で、次にはそれに似た問題は出るが同じ問題は出ないのだ。そこで予想問題をやってみるのが重要だ。一番確実なのは大原やTACなど専門学校の模擬試験。さすがにそこは有料だけあって精度が高い。しかし独学者には無縁だ。参考書や問題集に申し訳程度に模擬試験がついているが、これはもう一つ精度が低いようだ。考えてみれば出題者もその模擬試験と同じ問題の出題は避けるだろう。むしろそれは出ない問題と考えるべきだ。
 筆者のおすすめはパブロフ簿記アプリ購入者が無料でダウンロードできる「過去問を分析した作った120分の実践問題」だ。これは6回分ある。実はそこに書かれたURLにアクセスすれば購入者でなくても入手できる。それぞれに詳しい解説もついてる。過去問をやる時間のない人は、この実践問題だけでも合格点に達すると思われる。
 筆者は6回分を3回転することにした。この時点では第2問4問に必要な伝票や帳簿の知識はなかったのだが、実際に持っている知識だけで解いてみて、間違えたところを覚えることにしたのだ。参考書を読んでも眠たくなるだけだ。
 3回転だから3週間かかることになる。最初にやってみた結果は50点とかがっかりしたが、やっているうちに60点、70点、たまに80点とれる時もある。しかしなかなか80点以上にはならない。とにかく前の自分よりよくなったらそれは成長していると確信しながら勉強を進めることだ。

6.最後の1週間の過ごし方
 さて過去問も、模擬試験もやった。ここまでで何回やっても正解だったところは頭に入っているからもうやらなくていい。問題は何度やっても間違えたところ、つまり苦手を克服することである。
 過去問、模擬試験を採点して、苦手問題をピックアップする。それを重点的にやっていくわけだ。ここまで来ると、2時間あれば、第3問のボリュームでも3問ぐらいはできるようになっている。土曜日は最終チェックに回したいから、月曜日から金曜日までの5日で2回繰り返すとして6問の苦手問題をセレクトする。これを平日できれば3問、最低でも2問やるようにする。そうすれば、苦手は自信に変わっていくだろう。
 最終の土曜日は終日時間が使えるので、パブロフの実践問題6回分を全部やるつもりでいきたい。実際何回もやっているので1回2時間はかからず、1時間半ぐらいでできるはずだ。これを夕食までに完了すること。
 夕食後はチェックノートを見直して苦手の確認。それから重要度の低い伝票や帳簿の再確認をする。とにかく不安で仕方がないが、睡眠不足は集中力を低下させるので、ほどほどに切り上げて、できるだけ早く寝るのが重要である。

7.試験本番を迎える
 2016年10月3日にインターネットで受験を申し込んだ。簿記の勉強は申し込んだ頃から始めた。仕訳で1ヶ月。11月からは過去問。なぜかペースが上がらず、模擬試験の全通しを始めたのは試験本番3日前だった。時間が足りないので、金曜日の午後から半日有給休暇をもらって勉強時間に充てた。
 土曜日は家事と甘いものを食べたくなったのでコンビニへチョコレートを買いに行った以外は、ほぼ勉強に専念した。6回分の模擬試験はすべて合格点だった。しかし帳簿決算に不安が残った。最後に模擬試験のうち間違った問題を集めて再挑戦。これは60点だったが、前に説明した合計試算表なのに借方貸方の引き算をやってしまったのが原因だ。
 最後に商品有高帳の勉強して早い目に寝た。
 そして11月20日、試験本番を迎えた。
 朝食後、会場の出発まで時間があるので決算締め切りの勉強などした。
 バイクで向かった試験会場。会場は和歌山県立商業高校。商業学校なので女子が多い。教室も何かこぎれいな気がした。
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↑試験会場の”県和商”
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↑試験のあった教室
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↑試験問題の表紙

 試験開始は9時からとなっていたが、説明開始がその時刻ということで、実際に開始したのは9時12分だった。まずはざっと問題を眺めてみる。

第1問 仕訳5題
第2問 備品の減価償却
第3問 合計試算表
第4問 伝票会計の仕訳日計表
第5問 貸借対照表・損益計算書

 ざっとみて、素直な問題が多い。この試験で合格しないとやばいなと思った。1,3,5,2,4の順で片付けた。合計試算表は残高試算表ではないことをないことを確認した。貸方と借方の合計が合わないが気にしない。備品の減価償却は正直よくわからなかった。時間は2時間目一杯つかった。最後の見直しで貸借対照表の計算間違いを見つけた。
 合計試算表の合計が合わなかったので、どこかで計算が間違っている訳だし、減価償却も確信が持てなかったので、自信満々とはいかないが、どうにか合格点に達しているように思えた。

8.合格発表
 翌日には資格の大原などで模範解答が発表されたが、簿記は問題用紙を持ち帰られるが、解答を書き込む時間がないので、答え合わせができない。したがって、合格発表のある11月28日まで模範解答を見ずに待つことにした。
 そして合格発表の日がやってきた。受験した都道府県の商工会議所のウエブサイトに合格した受験番号が発表させる。その日は仕事で、発表は午後。仕事が終わって、スマホでさっと見てもいいのだが、帰宅してからパソコンでじっくり見た。
 受験番号があった。合格だ。祝杯でジントニックを飲んだ。
 合格証は商工会議所に取りに行くか簡易書留で郵送してもらうかである。12月17日、合格証が届いた。
 この試験の合格率は52%ということだ。簡単な問題でよかった。資格試験というのは簡単な試験の後は難しくなって合格率が下がり、そうなるとこれではまずいと考えるのか、試験が簡単になって、合格率が上がるのである。実際前々回の試験の合格率は30%台であった。努力もそれなりにしたつもりだが、やはり幸運に恵まれたといえる。
 さて筆者はこうして簿記3級の合格証を手に入れた。簿記3級は個人商店の経営に必要な能力を問うもので、会社の経理部を目指す人には不十分だ。モノをいうのは簿記2級だ。簿記2級は商業簿記の他に工業簿記も対象になる。モノを仕入れて利益をつけて得るだけの商業と異なり、工業は材料を購入して、加工して、必要に応じて在庫して、売らないといけない。商業より難しいのは明らかだ。簿記3級の感触からすると、2級は倍ほど勉強すれば、合格できるかもしれない。でも今のところそのような気力が沸かない。どうせならもっと他の資格を取りたいと、移り気な筆者は思うのである。
 ところでこの記事を読んで、簿記3級に興味を持った人にはちょっと他の資格と比べて有利なことをお教えしよう。それはこの資格が低予算で取得できることである。筆者がこの簿記3級に要した費用は以下の通りである。

簿記3級受検料 3218円
参考書 1026円
簿記アプリ 600円
切手代 476円
 合計 5320円

 まず受検料が安い。記述式で採点も面倒なのに、どうやってこの低価格を実現しているのだろうと思う。一般的な資格試験はだいたい6000円ぐらいだ。
 参考書も前述の1冊で十分だ。次にアプリとパソコンでわからないところを検索し、あとはひたすら過去問と模擬試験を繰り返すだけなのだ。今時5000円台で、ある程度の努力で、そこそこ知名度のある資格を取れるのはなかなかない。
 最近、日商簿記の受検者は減少しているというが、決してその魅力は衰えていない。「何か資格を取りたいけど、何が手頃かなあ」と考えている老若男女に簿記は自信を持って勧められる資格だ。

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↑お約束の合格証
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独学で合格☆ファイナンシャルプランナー2級取得記 [資格]

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■■ファイナンシャルプランナーとは■■
 世の中、ないと困るものといったら何といってもお金だろう。もちろん空気、水、食べ物、住まい、知恵と勇気も必要だが、それは大災害が起きてどうにもならなくなったときだ。東日本大震災のような大惨事で家が流出したとしても、お金があれば、すぐに生活を再建できる。平常時で政府が存続する限り、お金があれば何でもできるというのは、暴論かもしれないが、完全に否定することはできないだろう。だから人間は汗を流して働き、お金を稼がなくてはいけないのである。
 そんな大事なお金だが、できれば有効に使いたいのは当然考えることだ。お金でお金を稼ぐのはもっとも効率がいいからだ。しかし、将来自分の公的年金はどの程度もらえれるのか。足りない分の個人年金はどのようなのをいつからすればいいのか。万が一の保険はどうするのか。貯蓄にしても安全性を重視して銀行預金にするのか、高金利を狙って債券を買うのか、またリスクをとって株に投資するのか。また家を買うにしても、どのような返済計画とするのか。相続財産の税負担をできるだけ減らすにはどうすればいいのか。人それぞれに家族構成、収入が異なるので、適切な運用をしている人は果たしてどれくらいいるだろうか。
 そこでお呼びがかかるのかファイナンシャルプランナーだ。いわゆるお金の専門家。稼いだお金をどのように運用するのか助言する仕事で、国家資格となっている。しかし実際こんなことを相談する人がどの程度いるだろうか。ちょっとできる人なら、インターネットで情報を集めれば、適切に運用できるだろう。お金を払ってまでファイナンシャルプランナーに相談しようという人は多くいないだろう。職業として選ぶにはかなりの人脈が必要ではないだろうか。
 だから筆者はファイナンシャルプランナーになりたくて、資格取得を目指すのではない。あくまでも自分の知識として頭に入れておいて、適切に資産を運用するためだ。
 そのファイナンシャルプランナー技能士は独立開業の資格としてよりも、銀行・保険など金融関連企業の社員のスキルアップに使われているのが現状だ。そのためファイナンシャルプランナーはその該当する企業に就職しているか、十分な実績ないと受検できない。ただそれは2級の場合であって、3級は誰でも受けることができる。そして3級に合格すれば2級の受験資格が得られる。
 よって門外漢の筆者は3級から受検することになる。

■■まずは3級に挑戦■■
 ファイナンシャルプランナーの特長は実施団体が二つあり、受験科目も3種類の選択となっているが、どれで取得しても「ファイナンシャルプランナー技能士」を名乗れることである。実施団体は日本FP協会と金財がある。金財はどうやら金融業界向け受験者のようで、自分のような門外漢は日本FP協会から受験するのが一般的らしい。実際、巷で売られている参考書は日本FP協会のが圧倒的に多い。だから受験科目は資産運用提案業務とした。
 3級は学科と実技に分かれている。学科は正誤応答問題と3択問題。実技といっても面接などではなく、源泉徴収票とか預金残高の資料を実際に用いて、適切な提案をする問題で、3級のそれは選択式になっている。
 まずは参考書の購入だ。手頃な資格なので、どれを選んだらいいのかわからないほど種類が多い。「これで合格」とか「この一冊でOK」とか、そういう言葉に惑わされないように、中身を吟味した。そうして選んだのがこの本だった。
「一発合格!FP技能士3級完全攻略実戦問題集」
 そして参考書として
「FP技能2・3級検定頻出用語速習ハンドブック」
 3級合格のあとはすぐに2級を取るつもりなので、参考書は2級3級両用にしたのだ。ちなみに「一発合格!」のタイトルに惑わされたわけではない。念のため。
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↑一発合格!FP技能士3級完全攻略実戦問題集
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↑FP技能2・3級検定頻出用語速習ハンドブック

 そして過去問は「資格の大原」のサイトからダウンロードできるのでそれを利用した。
http://www.o-hara.ac.jp/osaka/syakai/fp/fp_mondai-kaitou_kan.htm
 隙間時間を利用して勉強するにはスマートフォンアプリを利用するのが一番いい。FPは受験者の多い資格なので、多数のアプリがある。無料とうたっていても、アプリ内で購入しなければならなかったりするが、だいたい500円台ぐらいだ。一番有効に活用できたのは「資格の学校TAC」が制作した「オンスクFP3級」というアプリだ。ただただ問題を解いていくだけでなく、ゲーム要素もあるので飽きない。
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↑資格の大原のファイナンシャルプランナー過去問
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↑スマホアプリ「オンスクFP3級」
 ファイナンシャルプランナーは以下の6つの要素に分かれている。
A.ライフプランニングと資金計画(年金)
B.リスク管理(保険)
C.金融資産運用(金融)
D.タックスプランニング(税制)
E.不動産
F.相続・事業承継

 は国民年金や厚生年金。国民年金は20年間納付しないと受給資格がないとか、遺族厚生年金と老齢基礎年金は併給させるとか、公的年金に関する問題だ。あとはファイナンシャルプランナーとしてできることは何かという知識も問われる。
問題例:
(1) 税理士資格を有しないファイナンシャル・プランナーが、顧客の求めに応じて行う 個別具体的な税務相談は、その行為が無償であれば、税理士法に抵触しない。
(4) 確定拠出年金制度の給付には、老齢給付金、障害給付金、死亡一時金があるが、所 定の要件を満たした場合には、脱退一時金が支給される。
(32) 65歳到達時に老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている者が、70歳到達日に老齢 基礎年金の繰下げ支給の申出をした場合の老齢基礎年金の増額率は、( )となる。
1) 18%
2) 30%
3) 42%


 は生命保険、火災保険、傷害保険のように、家の大黒柱の死亡とか、想定外の事故に備える金融商品の知識を問われる。掛けている保険会社が倒産した場合の保険金の支払いはどうなるかといった問題もでる。生命保険に関しては、終身保険、定期保険、養老保険の3種類を確実に理解しておくこと。
(7) 払済保険は、現在契約している生命保険の以後の保険料の払込みを中止し、その時 点での既払込保険料をもとに、元の契約の保険期間を変えずに、元の主契約と同じ種 類の保険(または養老保険等)に変更するものである。
(10) 普通傷害保険は、国内での急激かつ偶然な外来の事故による傷害が補償される保険 であり、海外旅行中に発生した同様の事故による傷害は補償の対象とならない。
(36) 保険期間の経過に伴い保険金額が増加していく逓増定期保険は、( )。
1) 保険金額が増加するに従って、保険料も高くなる
2) 保険金額が増加する一方、保険料は変わらない
3) 保険金額が増加する一方、保険料は低くなる

 は金融資産を運用するための定期預金、国債、株式、投資信託、外貨預金などの知識が問われる。
(13) ETF(上場投資信託)は、上場株式と同様に証券取引所を通じて取引され、成行や 指値による注文も可能である。
(15) 東証株価指数(TOPIX)は、株価水準が高い値がさ株の値動きの影響を受けやすく、 日経平均株価は、時価総額が大きい株式の値動きの影響を受けやすいという特徴があ る。
(44) 米ドル建て外貨預金10,000ドルを円貨に交換する場合、為替レートがTTS=121円、 TTM=120円、TTB=119円のとき、その円貨の額は( )である。
1) 1,210,000円
2) 1,200,000円
3) 1,190,000円

 は所得税、法人税、青色申告などの知識が問われる。所得税は累進課税であること、配偶者控除など所得控除についての理解、法人税で損金算入できるのは何か、消費税の簡易納入者制度の理解。
(18) 勤続年数が20年を超える者が退職手当等を受け取る場合、所得税において、退職所 得の金額の計算上、退職所得控除額は、40万円にその勤続年数を乗じた金額となる。
(20) 納税者が本人と生計を一にする配偶者その他の親族の負担すべき社会保険料を支 払った場合であっても、社会保険料控除として、その支払った金額を総所得金額等か ら控除することができない。
(47) 年末調整の対象となる給与所得者は、年末調整の際に、所定の書類を勤務先に提出 することにより、( )の適用を受けることができる。
1) 雑損控除
2) 寄附金控除
3) 生命保険料控除

 は固定資産税や登録免許税、住宅ローン減税の利用条件など不動産に関する知識だ。
(21) 区分建物に係る登記に記載される区分建物の床面積は、壁その他の区画の内側線で 囲まれた部分の水平投影面積(内法面積)により算出される。
(25) 相続による不動産の取得に起因して所有権移転登記を行う場合は、登録免許税は課 されない。
(53) 都市計画法の規定によれば、市街化調整区域は、( )とされている。
1) すでに市街地を形成している区域
2) 市街化を抑制すべき区域
3) 優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域


 は相続税、贈与税に関する知識だ。法定相続人とか税額控除額はよく覚えておく必要がある。
(28) 相続税の課税価格の計算上、初七日や法事などのためにかかった費用は、相続財産 の価額から控除することができる葬式費用に含まれない。
(30) 住宅取得等資金として両親から資金の贈与を受けた場合、「直系尊属から住宅取得等 資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」の適用と併せて、相続時精算課税制度の 適用を受けることはできない。
(57) アパート等の貸家の用に供されている家屋の相続税評価額は、( )の算式によ り算定される。
1) 家屋の固定資産税評価額 ×(1-借家権割合×賃貸割合)
2) 家屋の固定資産税評価額 ×(1-借地権割合×賃貸割合)
3) 家屋の固定資産税評価額 ×(1-貸宅地割合×賃貸割合)

 3級の学科試験はこの6分野から5問ずつの正誤問題30問と、やや難しい計算問題を含む6分野から5問ずつの3択問題30問の合計60問で構成されている。
 実技は金財が実施する「個人資産相談業務」「保険顧客資産相談業務」、FP協会が実施する「資産設計提案業務」があり、それぞれ問題が異なっている。「資産設計提案業務」の場合、3択問題20問で構成されている。3級の場合、実技とといっても学科と大して内容は変わらず、具体的なキャッシュフロー表とか源泉徴収票、会社四季報、税額速算表、保険契約書などが用いられているだけである。
 勉強法としては、これまで受けた資格試験と大きく変わることはなかった。

1.過去問を予備知識なしにいきなりやる
2.間違えたところを参考書で調べて理解する
3.スキマ時間はスマホアプリで勉強する(今回はオンスクを利用)
4.もう一度過去問をやる
5.再度間違えたところをノートに書き出す。
6.書き出した内容をPCに打ち込み、音声読み上げソフトで録音し、移動時間中に聞く
7.Youtubeに講義のビデオがアップされているのでそれを視聴

 これらを繰り返すことにより、過去問は70%以上は正答できるようになった。勉強時間としては平日2時間、休日4時間を1ヶ月程続けた。ただし、筆者は怠け者なので毎日やっていたわけではない。1ヶ月と書いたが、それはあくまで最初と終わりの期間であって、実際はその半分ぐらいだろう。筆者の場合、小中高と社会科が得意で、その中でも政治経済は得意な方だったし、早くから投資信託や外貨MMFとかを実際に買っていたので、金融の知識は多少はあった。興味のある分野だったので勉強といっても一部復習の要素があったのかもしれない。

■■3級に合格■■
 2015年1月25日、ついに試験日がやってきた。会場は和歌山商工会議所。和歌山市役所の隣にある。受験票には自動車、自転車、バイクの乗り入れ厳禁と書いてあった。しかし日曜日で市役所は休みだし、駐輪場が開放されているのを知っていたので、自転車で行った。
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↑和歌山商工会議所
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↑会場案内
 会場の部屋の割り当てを見ると、2級が圧倒的に多く200人くらいの受検者だ。3級は一番狭い「特別会議室」一部屋だけで、受検者は50名程度だ。このファイナンシャルプランナーの試験はボイラーとか冷凍機器と同じで、その業界に従事する人の持っている知識を証明するためのものとなっているのだろう。2級なら金融業界に2年従事していれば受験できるからだ。
 そんなわけで肩身の狭い3級受験であった。部屋の受験者顔ぶれを見ると、確かに業界に無関係の力試し的な人が多かったが、中には保険関係の人もいるようだ。おそらくいきなり2級を受ける自信のない人が3級を受けているのだろう。年齢は40代が多いようで20代は5人ぐらい。女性も40%ぐらいいる。
 ファイナンシャルプランナーの試験は指定された座席に座ると、解答用紙であるマークシートにははじめから受験番号がマークされている。本人確認は免許証などを机に置いておき、監督官が試験中に巡回して確認する。受験票に写真を貼る必要もないし、何かと手間いらずだ。
 午前中は学科。10時に開始。日頃の勉強の成果が出て30分ほどで終了した。手応え十分で、11時に途中退出した。
 近くのファミリーレストランで昼食。隣の男も何か資格の本を開いていたが、そのページは動いていなかった。
 午後は13時30分から実技。実技といっても前述のように資料を実際に使う点が午前の学科と異なるだけで、学科の知識で解答可能だ。こちらも30分で解答を終えたが、途中退出ができず、目を瞑って過ごした。14時30分に退出。
 試験の模範解答はその日の夕方にFP協会のウェブサイトに公開される。試験問題は持ち帰りができて、書き込みもできるので、答え合わせが可能だ。
 結果は学科が75点、実技が85点。合格点は60点だから、余裕で合格した。
 約一ヶ月後、3級の合格証書が届いた。これで2級の受験資格が得られたので、早速5月の試験を申し込んだ。

■■最初の挫折■■
 さて2級を申し込んだのはいいが、勉強はなかなか手を付けなかった。実のところ、過去問すら見ておらず、試験問題がどのようなものかも知らなかった。資格取得に関するサイトをみても、「2級は3級と出題範囲は同じ。よって3級の知識で合格可能」と書かれていて、そのように認識していた。せいぜい正誤問題が4択になったぐらいだ、と軽く考えていたのだ。
 実際に過去問をやり始めたのは、試験の11日前であった。

 2級の学科は4択問題60問。以下の6分野から各10問ずつ出題される。
A.ライフプランニングと資金計画(年金)
B.リスク管理(保険)
C.金融資産運用(金融)
D.タックスプランニング(税制)
E.不動産
F.相続・事業承継

問題はこんな感じだ。

後期高齢者医療制度(以下「本制度」という)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1.後期高齢者医療広域連合の区域内に住所を有する70歳以上のすべての者は、本制度の被保険者となる。
2.本制度の被保険者の配偶者で、年間収入が180万円未満の者は、被扶養者として後期高齢者医療給付を受けることができる。
3.被保険者が受給する公的年金から徴収される本制度の保険料は、全国一律の保険料率によって算定される。
4.本制度の被保険者が保険医療機関等の窓口で支払う医療費の一部負担金の割合は、原則として、現役並み所得者は3割、それ以外の者は1割とされている。


 3級との大きな違いは、3級の場合は半数が○×正誤問題なので、1問間違えても、それだけで済むが、2級の場合は1問の中の4つの記述のいずれも、正誤を把握している必要がある。つまり、1問のボリュームが3級の4倍あるのだ。それに記述にしても、法律のように堅物だし、どれも正しそうだし、どれも間違っているような選択肢が用意されている。要するに難度が高い。確かに出題範囲は3級と同じだが、何故そうなるかを理解していなければ、正答できないのだ。つまり3級はうろ覚えでもなんとかなるが、2級はそうではない。筆者は舐めてかかっていたのだ。

 まずは3級受験時の知識の記憶だけで過去問をやってみる。この試験の解答時間は2時間だが、やっぱり難しく、フルに頭を使わないとだめで、解答時間は制限時間ギリギリだった。正答率は40%。ほとんど何もやっていない状態でこの数字。あと10日で合格点の60%まで伸ばせるだろうか。いや過去問は80%できないと、本番では60%の合格点に届かないのは経験的にわかっている。そうなると実力を2倍に引き上げないといけない。時間的に間に合うだろうか。

 過去問をこなしつつ、スキマ時間の学習用としてスマホアプリを導入した。アプリはいくつか試したが、もっとも役に立ったのは、
どこトレシリーズFP2級学科試験過去問題集」であった。
過去問と予想問題を合わせて2664問の正誤を答えていく。実際の試験は前述したように4問1組なのだが、スマホアプリで考えた場合、そのような形式よりも、単に正誤問題とした方が実力を養成しやすい。もちろん分野別の正解率や、問題の解説。間違えた問題だけ演習するといったこともできる。さらにありがたいのは、試験が実施される度に過去問が更新させることだ。また、相続税の控除額のように現在と過去問では数式が異なる箇所も、現在の式に直されているのも評価できる点だ。FP2級の勉強には必須のアプリといえるだろう。ただ問題が膨大なのでいくつか解答に誤りがあるのが残念だ。これで400円はお値打ちである。
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↑FP2級学科試験過去問題集

 アプリと過去問の正答率は平均70%で試験本番に挑むことになった。時間がなかったので、実技は問題を見ただけで全く勉強しなかった。今回は学科さえ通ればいいと思っていたのだ。

 2015年5月24日、ファイナンシャルプランナー2級の試験は、和歌山市の旧市街地にある西和中学校で実施された。最寄りのバス停からは歩いて15分ほどとちょっと不便なところにある。
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↑西和中学校
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↑座席案内
 試験会場は中学校の教室。筆者も中学生だった時期があった。あの頃と教室の雰囲気はこぎれいになっているとはいえ、それほど変わっているわけではない。机の中に教科書を置きっぱなししている奴はおそろく勉強しない奴なのだろう。黒板には日付と日直。その左手には学級委員の名前。クラスの出席番号は、筆者の頃は男女別だったが、今は男女混合になっている。
 そうした懐かしさをかみしめながら試験は始まった。全く手も足もでないという感じではなかった。運が良ければ通っているだろう。時間いっぱいまで粘って、退室した。
 午後の実技は全く勉強していないので勝算はない。でも学科の知識があれば答えられる問題も多い。しかし2級の実技は記述式なので、すべての解答を埋めることはできなかった。
 その日の夕方、公式ウエブサイトに解答速報が掲載されたので、答え合わせした。

2015年5月
試験 結果  得点 配点 正答率
学科 不合格  33 60  55%
実技 不合格  46 100  46%

分野別正答数
A B C D E F
7 4 8 5 5 4

 判定は不合格であった。学科は合格までに必要な得点はわずか3点。11日間しか勉強していなかった割には健闘した方でないかと思うし、次回合格への手応えも感じた。実技は散々だったが、過去問を全くやっていないので、これは当然であった。分野別正答数をみると、金融が得意な反面、保険と相続が弱い。強化する点はここだと認識し、再び9月にある試験の受検申し込みをした。

■■奇跡の一部合格■■
 勉強は9月に入ってから本格的に始めた。例のスマホのアプリは空き時間でちょこちょこやったが系統的な勉強は全くしていなかった。覚えたことを忘れない程度にやっただけだ。
 2級用の問題集は購入せず、5年15回分の過去問を繰り返した。やってみると、不動産と相続の得点が低い。3回ほど繰り返したが、その傾向は変わらず、この分野に関しては、重要事項を書き出したノートは膨大になった。大原のサイトでダウンロードできる過去問集は問題と正解だけで解説はないので、自分が納得するまで、グーグルで不明な事項を検索して理解に努めた。面倒な作業ではあるが、これくらいのことをしないと合格はおぼつかないだろうと考えた。
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↑FPの解説サイトはいくらでもある

 最終的には過去問は70%程度の正答率で本番に挑むことになった。スマホアプリも同じような数字だ。もう少し正答率を上げたかったが仕方がない。ただ今回もとりあえず学科が合格すればいいという考えで挑んだので、実技は近年の過去問を1回、それも途中で投げ出した。中途半端に時間を割くのなら、学科に賭けた方がいい。実技の自信はまるでなかった。
 2015年9月13日。試験は和歌山ビッグ愛という紀勢本線の貨物駅跡地に建設された高いビルで施行された。試験会場は12階でそれなりに眺めがいい。
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↑ビック愛からの眺め
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↑試験会場
 まずは学科。ちょっと迷った問題があったが、何とか滑り込みで合格できたのではないかという手応え。30分ほど早く退室する。
 昼食をとりながら、答え合わせをする。自信を持って解答したところが間違えていて、不安になった。最後のあがきで、実技のポイントをチェックした。
 自信のない実技ではあったが、前回よりも学科の勉強を積み重ねたので、皆目見当がつかないということはない。ただ解答が記述式なので、計算間違いがあっても気がつかない。実技は時間が45分しかなく、最後の方は時間がなく焦った。最後の3問はヤマ勘で解答した。自分の解答を持ち帰りの問題に写し取る時間もなかった。

 その日の夕方、公式ウエブサイトに解答速報が掲載されたので、答え合わせした。

試験 結果  得点 配点 正答率
学科 不合格  35 60  58%

A B C D E F
7 3 5 9 7 4


 なんと合格までわずか1問足らずで不合格。分野別の正答数を見てみると、保険がわずか3問の正解。税制が9問正解したもののカバーできなかった。保険に関しては多くの勘違いをしていた。
 地震保険では、地震による津波を原因とする建物の損壊等の損害については補償の対象とされない。
 これを「不適切」としてしまったのだ。正解は「適切」なのだ。

 1.家族傷害保険は、保険契約締結時における所定の範囲の親族が被保険者となり、保険契約締結後に記名被保険者に誕生した子は被保険者とならない。
 2.交通事故傷害保険は、自動車や自転車などの交通事故による傷害のほか、エレベータやエスカレーターの搭乗中に生じた事故による傷害も補償の対象となる。

 この二つはどちらも適切か迷った。結果は1を適切と判断して失敗した。正解は2であった。
 とにかくあと1問正解していれば、合格だっただけに、悔しさがこみ上げてきた。
 実技の方は、実際の解答が不明な上、配点があるので、この速報の時点ではわからなかったが、おそらく合格点に達していないだろうと思われた。
 1ヶ月後、試験主催者から合否判定書が送られてきた。

2015年9月
試験 結果  得点 配点 正答率
学科 不合格  35 60  58%
実技 合格   62 100  62%

 なんと実技が合格していた。ほとんど勉強していなかったのに、合格するとは奇跡以外何物でもない。実はこのFP2級は学科の合格率は25~43%程度だが、実技は50~65%と高いのだ。難易度は実技の方が低いのは確かだが、それにしても合格とは驚いた。実技の一部合格は2年間有効だ。
 これで勉強は学科だけに絞れる。同時に、何としてもFP2級は合格しなければならなくなった。
 実技試験免除を申請して次の試験の願書を提出した。

■■まさかの敗北■■
 過去問の演習とアプリだけでは合格できなかった。対応策として、ファイナンシャルプランナーに関する知識の理解を深めるため参考書を購入した。
 ポイントがクマのイラスト入りで説明されていてわかりやすい。何といっても文字より絵である。人間のパターン認識能力は特殊で、コンピューターでは点の有無という膨大なデジタル情報から解析しなければ、これは何なのかわからないが、人間はヒトの顔に対して特別なコンピュータ化できないような記憶力を持つ。だから勉強にマンガやイラストを用いるのは理にかなっている。
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↑スッキリわかるFP技能士2級・AFP(FP協会対応)
 実際の勉強は12月中旬から始めた。買った参考書をさっと一回読み、過去問に挑む。今までわけがわからないけどとにかく覚えていた項目も、何故そうなるのか理解することにより、記憶が定着する。
 参考書には試験で引っかかりやすいポイントも指摘している。例えば、細菌性食中毒は国内旅行保険も海外旅行保険も補償されるが、通常の傷害保険は補償されない。地震噴火津波の被害は、国内旅行保険は補償されないが、海外では補償される、といった具合である。

 正月休みも精力的に勉強に取り組んだ。過去問は4年分12回を3回やった。あまり古いのをやっても誤った情報を頭に入る可能性があるからだ。さらに間違えた問題をピックアップし、間違えた回数の多いところが自分の弱点だから、多い順に並べてリストを作成した。これを何度も音読して記憶していった。
 そうした努力の甲斐あって、間違えた問題も8割の正答率が得られるようになった。スマホアプリの2000問を越える膨大な問題もどうにかこなし、80%以上の正答率とした。
 1月に入ってから仕事が忙しくなり、帰宅が遅くなって勉強時間が確保できなくなってきたことだ。夜の10時から勉強をするのは並大抵ではない。鉛筆を持ったとたんに眠たくなってしまう。
 試験前日の土曜日はほぼ一日勉強した。この当時は体調がよく、頭も冴えていたが、覚えることが多すぎて頭が爆発しそうだ。似たような数字が並ぶので記憶が混乱する。
 最後にテキストをじっくり読んだ。試験前日なので睡眠不足を避けるため、苦手とする不動産と相続を残して0時には寝た。
 2016年1月24日、去年3級を取得した商工会議所が今回の試験会場。
 10時に試験が始まった。思ったよりも難しい。特に不動産はこれまでほとんど出ていなかった路線価が出題されていた。昨日、不動産を復習しなかったツケが回った。手応えはギリギリ合格に届いたかどうかというところであった。
 大相撲で琴奨菊が優勝するのを見届けてから、ウェブサイトを開いて解答速報を見る。なんと得意の金融で5問しか正答できず、また不動産は3問の正解と惨敗。前回に続き、合格に一問足らずの35問の正解に留まり不合格となった。

2016年1月
試験 結果  得点 配点 正答率
学科 不合格  35 60  58%

A B C D E F
6 8 5 6 3 7

 それにしても今回は順調に準備し、かなりの自信があったのに悔しい結果だ。結局のところ実力不足ということか。知らぬ間に部屋呑み用の焼酎を飲み干していた。

■■4度目の挑戦で■■

 再挑戦の機会は2016年5月となった。試験の申し込みは受付開始後すぐにした。気合い満点といったところだが、一向に勉強を始める気配はなかった。3月には北海道新幹線の初乗り、4月5月の大型連休にはにはバリ島・ニュージーランドに行ったりしていたからだ。筆者の場合、忘れないうちに詳細な旅行記を書いているからその分勉強ができないことになるのだ。それに仕事の忙しさはまだ続いていて、残業した平日はとても勉強する気にならなかった。
 過去問だけでは通用しないので、3月末に分厚い問題集を買った。しかしこれは一部を少し読んだだけで、ほとんど活用しなかった。
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↑みんなが欲しかったFP2級の問題集
 そんなわけでほとんど勉強しなかった。やったのはスマホアプリで、これはかなり熱心にやった。外出先はもちろん家の中でもこればっかりやった。おかげで全問題に対する正答率は85%を越えていた。
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↑アプリの正答率は上がった
 本格的な勉強を始めたのは、試験日の2日前の夜からだった。過去問は1回やってみただけ。ここまで過去問を徹底重視して勉強してきたが、その成果は必ずしも上がっていないので、方針を変えて、参考書をよく読んで広く浅く知識を取得することにした。もちろんこれまでの勉強で作成した要点ノートも活用した。
 この2日間の勉強時間はおそらく15時間を超えていただろう。
 
 2016年5月22日。試験日がやってきた。会場は前年と同じ西和中学校。これまでのファイナンシャルプランナーの試験はどれもそうだが、受験者の半数は女性だ。
 10時に試験開始。前に座っている男はギリギリに部屋に入ったのに、早々と退室した。余程自信があるのだろう。問題のレベルは過去4回の中でもっとも平易な印象だ。筆者は何とか戦ったが、いくつか自信のない問題があった。でも手応えは前2回とそう変わらなかった。いくら考えても仕方がないので試験終了30分前に退室した。
 夕方、解答速報が発表された。手応えが前回とほぼ同じだったので緊張しながら、そして祈るように、答え合わせを進める。

2016年5月
試験 結果  得点 配点 正答率
学科 合格   37 60  62 %

A B C D E F
4 9 7 9 4 4

 天晴れ。得点は37点。合格点を1点上回った。年金、不動産、相続が各4点と冴えなかったが、保険と税制でそれぞれ9点を取り、合格を決めた。保険は最初は苦手だったが、徹底的に学習した成果が最後になって実を結んだのだ。

■■試験を終えて■■

 一ヶ月後、表彰状のような立派な合格証が送られてきた。3級の申し込みをしたのは2014年の11月で2級の合格証を手にしたのは2016年の6月。志してから取得まで約20ヶ月の長期間を要したことになる。
 筆者は3級を含めて5回目の受検で、ようやくFP2級に合格できた。わずか1点差での不合格が2回続けてあり、もう少しまじめに勉強していれば、3回目ぐらいで合格していたかもしれない。しかし、このファイナンシャルプランナーの印象は、個々の問題の難度はそれほど高くないが、とにかく範囲が広い。その広いが故に知識の蓄積が必要だったのだろう。それと丸暗記ではこの資格は太刀打ちできない。しっかり理解しておく必要がある。そのためには過去問だけではだめで、自分にあった参考書が読むべきだ。
 今回の試験ではスマホアプリが大活躍した。過去問に取り組む前に、このアプリと参考書あるいはウェブサイトで調べるを組み合わせることで基礎レベルはできそうに思える。
 ファイナンシャルプランナーの勉強をしておかげで、年金、保険、税制、相続などの知識が身につき、当初の目的は果たせそうだ。この知識を老後に生かしていきたい。
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↑合格証
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第2種冷凍機械責任者合格記 [資格]

■■冷凍機械とは■■
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 食物を腐らせずに保存することや、暑い夏を快適に過ごすことは、長年人類の夢であった。人類は実に長い間、食物の長期保存は干物か燻製にするしかなかった。また高温多湿の日本では夏を乗り切るために風通しのいい家屋にせざるを得ず、そのため冬はすきま風で震えていなければならなかった。古来、冷蔵技術としては、氷を冷暗所に保存するとか、川の水の流れや井戸の水を利用するぐらいであった。その氷も温暖な地域では容易に手に入らないものであった。
 この人類の夢が叶ったのは19世紀に入ってからであった。古来利用されていた氷は、その周囲の熱を奪って冷却するが溶けて水になってしまう。水になってしまうと冷却効果は失われる。氷に食塩を加えるとさらに低温に冷やせることは知られていたが、やはり最終的には水になってしまう。固体から液体、液体から気体のように物質の状態変化に用いられる熱量を潜熱という。水(液体)は0℃で氷(固体)になり、100℃で水蒸気(気体)になる。つまり100℃以下なら液体、それ以上なら気体である。もし細菌の死滅する5℃以下で液体になり、5℃以上で気体になる物質があれば、熱を奪われ液体になっても、気体に変えることができれば、それを繰り返して冷やし続けることができるのではないか。
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↑冷凍サイクル(三基計装のウェブサイトより引用)
 その物質が冷媒であった。当初はアンモニアが用いられた。液体が熱を奪われて気体となり、気体は圧縮されて液体に戻る。圧縮には電気動力が用いられた。こうして20世紀の初頭には冷蔵の基本技術が確立した。しかしまだまだ大がかりな設備が必要で、一般市民が冷蔵技術を利用できるようになるのは20世紀後半以降であった。
 それ以降の発展はいまさら記載するまでもないだろう。冷凍冷蔵庫とエアコンは今やあって当然で、ありがたみも感じなくなっているほどだ。それゆえ工場、事務所、家庭の殆どに設置されていて、その適切なメンテナンスが求められる。
 俗にビルメンテ基本4点セットというのがある。それは「電気工事士」「危険物取扱者乙4類」「2級ボイラー技師」「第3種冷凍機械」の4つの資格のことだ。ビルメンテは比較的高齢者でも求人があり、万が一の失業という非常事態の保険としても使える。管理人はすでに「電気工事士」「危険物取扱者乙全類」「2級ボイラー技師」を取得している。
 もうこれは残りの「第3種冷凍機械」を目指さない理由はないだろう。

■■思わぬ展開■■
 さて第3種冷凍機械の試験は高圧ガス保安協会が実施している。高圧ガス保安協会の実施する資格試験には、一部の難度の高い試験を除き、2通りの方法が用意されている。ひとつは年1回11月に実施される国家試験を受験することだ。受験科目は保安管理と法令だ。もう一つは年2回実施される講習を受講し、その後の検定試験に合格することにより、国家試験の保安管理を免除が免除され、法令の受験のみとすることだ。資格取得にかかる費用は圧倒的に国家試験が安い。受験料は約8000円。要する時間は1日だけだ。しかし講習は3日間を要し、一日でも休むとか途中退場すると、検定受験資格が得られない。講習の約1ヶ月後に検定試験がある。ここまでの費用が2万5千円。さらに合格しても法令のみの国家試験は受験しなければならず、ここでも8千円必要。検定は5日間拘束されて3万3千円。国家試験なら1日で8千円。
 勉強のできる人なら安上がりな国家試験を選ぶだろう。ところがこの国家試験が曲者なのである。検定試験と国家試験の問題は出題範囲は同じとはいえ、難度は遙かに国家試験が高い。合格率20%という数字がそれを物語っている。これに対して検定試験は80%と高い合格率だ。自動車の運転免許の一発試験と教習所の関係に似ている。一発試験をやたらと難しくすることで、教習所で取得するように誘導し、教習所の経営の安定に寄与させているのだ。ことに講習を実施するのは試験を主宰する高圧ガス保安協会だ。国家試験を簡単にすることは、結果的に講習の受講者を減らすことになるので、ほとんどあり得ないだろう。
 なるべく楽に取得したい。そう考えた管理人は講習を受講することに決めた。
 ところがこの高圧ガスの講習は、その業界の社員教育の一環となっているせいか、平日の3日間というのが圧倒的に多いのである。会社勤めの管理人が3日間も有給休暇を取得するのは難儀なことだ。これは先日取得したボイラー2級と同じ現象だ。探してみると一日の休みで済む金土日で講習を実施しているのは岡山と鹿児島のみだった。関西在住の管理人は当然岡山を選んだ。
 そこまで調べておいて、5月の受講受付を待った。
 管理人はうっかりしていて、受講受付開始からかなり経ってから、高圧ガス保安協会のウェブサイトを覗いた。何と、第3種冷凍機械の講習は既に定員に達していて受付が終了していたのである。もう一つの鹿児島も同様だった。次回の講習まで半年待つか、あの難度の高い国家試験に挑戦するか、それともまだ定員に達していない第3種冷凍機械の上位資格である第2種冷凍機械を目指すかである。
 第2種冷凍機械は上位資格だけあって、当然に第3種より難度が高い。保安管理の他に学識という科目が加わり、保安管理もやや出題範囲が広い。しかも検定試験は第3種が保安管理のみ15問に対して、第2種は学識10問に保安管理10問だ。合格点はどちらも60%の正答率だ。だが、第3種が15問中6問まで間違えられるのに対して、第2種は学識、保安管理ともそれぞれ4問しか間違えられない。しかも学識、保安管理両方合格点に達しないといけない。
 ネットで情報収集し検討した結果、「何とかなるだろう」ということになった。締め切り寸前に講習料金を払い込み、第2種冷凍機械の講習を申し込んだ。

■■勉強の開始■■
 受講を申し込んだら、テキストの購入だ。まずは「SIによる上級冷凍受験テキスト」。これは講習の教科書であり、検定試験のみならず国家試験もこのテキストの内容から出題されるので、必ず購入する必要がある。本屋で売られているものでなく、アマゾンで約8000円で購入した(高いですなあ)。
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↑SIによる上級冷凍受験テキスト

 高圧ガス保安協会によると、講習のテキストとして法令集の購入を推奨されていた。しかし法令・規則というものは官公庁サイトからダウンロードできるし、受講経験者の情報で、法規の講習時には要約を記したレジメが配布されることを知ったので、法令集は購入しないことにした。
 それと何といっても資格試験の勉強に必要なのは過去問の演習である。検定の過去問については過去10年分をヤフオクで入手した。送料込みで3000円。届いた品物を見てみると、内容は10年分の過去問集をコピーしたもので、出品者はぼろ儲けであったろう。
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↑過去問集

 SIによる上級冷凍受験テキストは、役人が書いた文章のように堅く、理解しにくいものだった。冷凍機械を扱ったことのない素人の管理人には分かりやすい解説書が必要だった。
 そこで購入したのは「冷凍機械の基礎知識」。内容は難しい数式が出てきたりして、必ずしも初心者向きではないが、図解が分かりやすい。過去問でわからなかったり、間違えたところは、この本を見て理解を深めていった。
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↑「冷凍機械の基礎知識」と過去問集

 このところ資格の勉強でお世話になっているスマホアプリは残念ながら冷凍機械関連のはなかった。需要からすると作ってくれてもよさそうなものだが、今回はこれに頼ることはできない。
 その代わりというわけではないが、PCサイトで冷凍機械に関する専門のサイトが存在する。ECHOLANDというのがそれで、公式の覚え方や要点などが分かりやすくかかれている。冷凍機械責任者を目指すのであれば、絶対にアクセスするべきサイトだ。
 スッカラカンの状態で講習に挑むよりも、ある程度理解しておいた方がいい。しかし参考書を読むのは退屈だ。よっていつものように過去問をいきなりやっていった。学識は公式を覚えれるのが面倒なので、保安管理をまずやっていった。
 この冷凍機械に限らず、高圧ガス協会が管轄する試験は正誤選択式なのだが、選択肢の取り方が変わっているのだ。例として、

問題 以下の設問のうち正しいのはどれか
イ.日本の首都は東京である
ロ.アメリカの首都はニューヨークである
ハ.スイスの首都はジュネーブである
ニ.フランスの首都はパリである

1.イ 2.イロ 3.イハニ 4.イロニ 5.イニ

答えは5である。このように正しい組み合わせを選択肢の中から選ぶので、紛らわしい設問があると誤答してしまう可能性が高くなる。実際は上のような簡単な問題ではなく、どれも正しそうな設問なので迷ってしまうのである。4つそれぞれの正誤なら、一つ間違えても4分の1だが、組み合わせだと4つ間違えたのと同じになってしまう。特に2種では10問しかなく、合格には4問の間違いしか許されてないので、問題をしっかり読んで理解しなければならない。

■■■講習に挑む■■■
 2015年6月12日金曜日。新大阪6時50発の「さくら」に乗って岡山へ。3両しかない自由席は意外に混んでいた。姫路-岡山といった通勤通学の短距離利用もいる。
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↑さくら
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↑新幹線車内(新大阪出発前)
 岡山駅内のドトールコーヒーで時間をつぶす。
 講習会場の岡山商工会議所までの道のりは、意外と遠く、駅から20分ほどかかった。
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↑岡山商工会議所
 講習の初日は法令で2種3種合同だ。併せて100名近くいる。ほとんど男性だが3名ほど女性がいる。講師がいうには、フロン規制が強化されて今回は受講者が増えたという。皆が敬遠する一番前の席が空いていた。
 講習は退屈でたびたび寝落ちしたが、要点は聞き取れた。ただ法令の試験は11月なので気合いが入らない。
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↑講習会場
 予定より早く16時15分に終了。ホテルは商工会議所の隣の岡山シティホテル厚生町を予約してあった。講習生の泊まりも多い。やはり管理人と同じく平日は休めず、遠方から来ているのだろう。
 早起きの疲れと、明日は講義中に寝落ちしないために22時過ぎには寝た。
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↑ホテルの朝食(バイキング)
 翌日から2種3種で会場は別れ、2種講習会場は4階。高校の教室を思い起こさせる小さな部屋ですでに満員だ。女性も一人いる。
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↑2種講習会場
 まず講師が「岡山では9割の人が検定に合格している」といい、いきなり初っぱなから「検定試験は次の範囲から出ます。目次にアンダーラインを引いてください」といって学識と保安技術の各項目にマーカーを引く。講師曰く、講義は予備校のようなもの。国家試験より有利にするのは当然だと言っていた。こういう検定試験は難度を上げて合格率が下がると、翌年は出題者が反省して難度が下がるというのを繰り返している。この年はどうやら楽な方になりそうである。これは幸運だ。
 テキストの解説はこの試験範囲のみ行われた。「ここが大事です」とか「ここから出るとすれば、ここを問題にするしかないですねえ」と言ったところは赤のマーカーにした。
 この講習にあたり、基礎的なテキストを軽く読み、軽く過去問をやって、軽く解説サイトを見ていた。しかしやはり専門の講師の解説は分かりやすい。遠路はるばる講習を受けに来てよかったと思う。
 昼食後はだいたいは睡魔との戦いとなるのだが、昨日の大睡眠のおかげで眠気はなかった。
 最後の30分は試験に出ないが、講師が「運よく通った時のために」知っておくべき重要箇所を読み上げ。違う色のマーカーを入れた。
 16時45分に終了。
 部屋に戻り、テキストの重要箇所に付箋を貼り付ける。鉄は熱いうちに打て、の格言を実践した。

翌日、8時45分講習会場へ。自由席なのになぜか皆同じ席に座る。
 予定通り保安管理。昨日と同じような感じで講習が進む。学識より難しい感じだ。
 11時40分に午前終了。早く終わったのは今日はこの商工会議所で行われる講習が多いからだ。大阪芸大単位取得試験などもあった。
 帰りは少しでも安くするため新幹線ではなくバスにした。両備バスのサイトで予約し、ファミリーマートで高速バスチケットの発券。少々手間取った。
 13時より午後の部。午後はさすがに眠かった。実際寝落ちしたが、講師が終盤にもう一度説明してくれたので助かった。
 講義は基本的に約1時間ごとに15分の休憩があった。理由なく途中退場すると棄権者とみなされ検定試験を受験できない。
 遠方からの受講者が多いということで、16時30分に終了。受講票は朝会場に来たときに提出し、「受講済」の判子を押してもらって、並べれている中から自分の名前の票を見つけて持って帰る。名前、住所、生年月日の個人情報が丸ミエである。
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↑帰りは高速バスを利用
 17時32分、岡山駅西口にバスがやってきた。インターチェンジに入ったのは18時過ぎ。新幹線に乗っていたらもう新大阪に到着している。
 JR難波に到着。高速バスは時間がかかるが、運賃は安い。特に急がなければこれでもいいと思う。ただスマホの充電ができないのは痛い。

■■■冷凍機械のポイント■■■
1.冷凍サイクルのモリエール線図を理解すること
2.計算問題に必要な3つの公式を覚えること
3.蒸発熱は高いほど、凝縮熱は低いほど効率がいいこと

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↑モリエル線図

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↑数式1(ECHOLANDより引用。以下同)
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↑数式2
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↑数式3
ηは”効率”と考えていい
 学習は過去問の繰り返しが基本だった。1回目は40%ぐらいだったが、2回目は60%。しかしなかなか80%までいかなかった。年2回10年分の過去問は学識と保安管理を合わせれば40問あり、一つの問題に4つの設問の正誤を判定する必要があるから、160問を解答するのと同じ労力だ。なかなかのボリュームで挫折しそうになった。学識は120分、保安管理は100分の制限時間。実際そんなにかからないが、それぞれ1時間必要だ。平日2時間の勉強時間では2回やるのが精一杯だ。
 他の資格試験の勉強でも同様だが、過去問を繰り返しているうちに、何度も間違えるところが、自分の弱点なので、そこをノートに書き出して徹底的に暗記する。暗記を確実にするために、ノートに書き出したポイントをパソコンに打ち込み、それを音読ソフト(筆者は詠太を使用))に読み込ませ、それをジョギング中やクルマの中で聞く。これの繰り返しである。
 要するにこの冷凍機械の勉強法としては
1.過去問の演習の繰り返し
2.弱点を把握
3.参考書、Webサイトでなぜそうなるのかを理解する
4.要点を記憶する

 これを繰り返せば、1ヶ月で合格圏内に入れるだろう。
 使った参考書は前述の「冷凍機械の基礎知識」が役に立った。これと過去問集だけで実力はつく。講習の教科書として使っている「SIによる上級冷凍受験テキスト」はとても理解しにくい内容だが、試験範囲が定義されているのでこれを読まないわけにいかない。端から端まで読む必要はないが、過去問に出たところはマークする必要がある。
 Webサイトでは前述のECHOLANDはぜひ押さえておきたいサイトだ。学識の計算問題のコツはここで理解できるはずだ。あと、Yahoo知恵袋で「ミスター高圧ガス」で検索すると、冷凍機械を含む高圧ガス検定試験の疑問質問がいろいろ出ているので参考にしてもらいたい
 このような先達たちの作った良質な情報を活用しながら、勉強すれば、おのずと合格に手が届くはずだ。だからここでわざわざ冷凍機械の理解のコツなどというのは書かないことにする(といって手を抜く)。

●冷凍サイクルの理解
↓三基計装のウエブサイト
http://www.sankikeiso.co.jp/tec_refrigerating.html

●EchoLand-plus.
http://www.echoland-plus.com/

■■■検定試験■■■
2015年7月5日。いよいよ決戦の日がやってきた。
 5時半起床。新大阪から。岡山で講義を受けた以上、試験も岡山まで行く必要があるのだ。
 岡山駅から歩いて商工会議所へ。さすがに2回目は迷わなかった。後から考えればこの「ももちゃり」というレンタルサイクルに乗ればよかった。
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↑岡山にはレンタルサイクルがある
 9時頃到着。すでに80%ぐらいの人が座っている。全体の40%が2冷で残りは3冷だ。私も最終チェック。
 10時に試験開始。学識、乾き度の計算問題が目新しい。傾向的には講習で「ここが出ます」といったところしか出ていないようだ。
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↑試験会場
 ケアレスミスのないように何度も見直し、11時には退出した。保安技術の試験開始は13時。
 12時半には商工会議所に戻った。直前チェックの時間が足りなかった。
 保安管理の試験開始。思っていたよりもややこしかった。もっと直前チェックをしておけばよかった。保安は割と自信があったので安心していたのである。
 それでも学識、保安とも自信のあるのは4問。残りの6問も五分五分の自信があるので、理論的には70%の正答率で合格しているものと思われる。もし落ちたら悲惨である。
 13時50分には退室。まだ40%の人が残っている。
 予定より早く終えたので、バス停近くのチケットセンターで14時半発のバスに変更できないか尋ねた。今回は帰りははじめからバスに決めていて早割で買っていたのである。しかし早割は変更できず、払い戻しと通常料金の差額の合計570円が必要とのこと。それならやめておこうということになった。
 バスターミナルの横には津山線のディーゼルカーが停まっている。国鉄末期に標準色とされた朱色に塗装されている。初めて見た時はどキツく感じたが、今となっては、日本の田舎にとても合っているように思えてしまう。
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↑津山線のディーゼルカー
 15時半定刻に大阪行きのバスは発車した。
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↑今回も帰りは高速バス
 18時半前、大阪空港着。8人ほど降りた。やはり伊丹空港は人気がある。
 難波で降りて、通天閣の麓にあるラジウム温泉で入浴し、新世界で一杯やって帰宅する。
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↑ラジウム温泉

■■保安学識正解発表■■
翌日高圧ガスのウェブサイトで試験の解答が発表された。問題の持ち帰えられるので、自己採点ができる。学識が80点、保安管理が90点。余裕で合格であった。
 後日、検定合格証書が送られてきた。これで国家試験は法令の受験だけですむ。ちなみに検定合格者で国家試験合格者は90%を越えるという。自分としてはほとんど第2種冷凍機械責任者の資格は手にしたと思えた。

■■法令の勉強■■
 国家試験は11月8日。検定試験の合格発表は8月だったから、10月頃まで全く何もせず過ごした。そろそろ勉強しようかなと思って、過去問を物色するが、法令だけというのは存在しなかった。法令だけを扱った参考書としては「冷凍機械責任者受験対策冷凍法令」しかなく、選択の余地がないので、それを購入した。
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↑冷凍機械責任者受験対策冷凍法令
 その本の内容を見てみると、法令、規則について漏れなく記述してあるものの、「ここが間違えやすい」といった試験の役に立つ情報はほとんどなかった。索引の出来も悪いので、わからなかったところの知識補強も難儀だった。勉強中にこの本を開いたのは10回以下だった。よってこれは購入しなくてもよかったと思う。
 もっとも役に立ったのは、岡山での法令講義で無料で配られた冷凍法令規則のレジメだ。これの講義中における書き込みが結果として重要ポイントとなった。何度も言うが、さすが高いお金を払っただけのことがあるのである。過去問に関してはECHOLANDにある第2種法令過去問を繰り返した。平成18年から23年度から6年分を3回繰り返した。最初は45点くらいだったが、3回目には80点ぐらい取れるようになった。法令は20問出題され、合格点は60%。つまり12問の正解でいい。満点を狙う必要はないので、過去問で80%の正解できれば、例え珍奇な問題がでて正解が得られなくても、合格点に達しているわけだ。
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↑役になった法令のレジメ

 法令で重要なのは1日の冷媒製造量や種類によって変化する、保安検査の有無、責任者の選任、高圧ガス保安法の対象とするかどうかなどだ。フロン、アンモニア、その他によって数字は変わるので確実に記憶しておきたい。それと受液器、凝縮器の液漏れ対策や耐震基準の必要となる容量。どの資格試験でも法令に関しては数字がポイントなるが、冷凍に関しては、3トン、5トン、20トン、50トンの冷媒量。第1種冷凍責任者が300トン以上、第3種は100トン以下といった数字。受液器が10000cc、縦置き凝縮器の高さが5m5000リットルといった数字が超重要だ。それと認定機械の場合、保安検査が不要である点や凝縮器のが横置きの場合は耐震基準の対象外であることはありがちな落とし穴である。
 法令については試験前10日間、一日3時間の勉強で対応できた。

■■■国家試験■■■
 2015年11月8日、国家試験当日。高圧ガスの国家試験は年に一度11月のみ。冷凍機械の検定合格証に有効期限はないが、もし不合格の場合は、法令の受験のためだけに1年待たねばならない。この愚を犯さないために、しっかり勉強しておく必要があるわけだ。ちなみ、受験料は法令だけの受験であっても、フル受験と同様に8000円徴収される。さすが高圧ガス保安協会。やることが「高圧的」である。
 国家試験は検定試験の受験地でなくともよい。したがって筆者の地元和歌山で受験が可能だ。
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↑和歌山駅からバスに乗る
 試験会場は和歌山県立星林高校。当日は雨が降っていたので、バスで行った。試験開始は9時30分。9時に訪れると、もう教室は満員だった。受験者はざっとみて200人はいるだろうか。ただし冷凍2種だけでなく冷凍3種、乙種化学、販売士など高圧ガス保安協会の扱っている試験のすべてである。受験者は圧倒的に男性が多く、若いのから年寄りまでいる。筆者のような個人受験よりも、実際に高圧ガスを扱っている会社の社員の方が多い感じだ。
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↑試験会場は星林高校
 筆者の入った教室は、法令のみ受験者ばかりであった。試験開始20分前には参考書を机に置くなといわれ、解答用紙にはすでに受験番号や住所名前が記載されていたので、何もすることがなく窓の外のグラウンドを眺めたりした。
 9時30分試験開始。15分ぐらいでできたが、じっくり見直して、10時15分に出た。自信のないのが6問。これが全部間違えても正解率が70%。十分合格できる手応えで、喫煙者の群がる校門をかき分けながら、バスに乗って帰った。行きもそうだったが、あれだけ受験者がいるのに、バスの利用者はほとんど皆無であった。これから少子化が進み、地方のバスはどうなってしまうのだろう。

■■法令正解発表■■
 翌日高圧ガスのウェブサイトで試験の解答が発表された。早速自己採点すると70点。自信のない問題は全て間違えた。しかし合格点に達していた。何だかんでこれで勝負は終わった。
 合格証書が送られてきたのは翌年の1月7日であった。県の収入証紙3400円分を買って免許を申請。1月28日、ようやく免許証が簡易書留で送られてきた。
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↑合格のお知らせ
受験を申し込んでからこれを手にするまで8ヶ月を要した。ずいぶん取得に時間がかかる資格だった。
■■試験を終わって■■
 こうして2種冷凍機械責任者の資格を得たわけだが、試験が終わって3ヶ月を経過し、覚えたことはすっかり忘れてしまった。もちろん、この資格が必要な仕事に就けば、全くゼロからよりも理解が早いだろうが、今の仕事に応用できるようなことはない。
 勉強することは知識が増えること。毎度のことだが、これは基本的に財産になるはずである。

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↑こんなレトロなケース付き
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↑免許証
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第2級陸上及び航空特殊無線技士ダブル合格記 [資格]

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↑琉球エアライン(本文とは関係ありません)

【受験の動機】
 筆者は以前、第1級海上特殊無線技師を取得した。
↓URL
http://umayado.blog.so-net.ne.jp/2014-08-23

 動機はきわめて単純で「海を取ったのだから陸と空も取っておこうか」というものであった。海上特殊無線技師で使った問題集もそのまま使い回しできて、余計な出費も必要なかったということもあった。
 「陸」については、第1級陸上特殊無線はかなり難度が高いのであきらめ、その一つ下の第2級陸上特殊無線とした。「空」については等級がなく航空特殊無線以外に選択の余地がなかった。
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↑使い回した問題集

【試験の概要】
 第2級陸上特殊無線技師が取り扱えるのは公的機関の警察無線、防災無線やタクシー無線(これは3級でも扱える)となっている。50歳手前の筆者がこの先公務員になる可能性はゼロであるから防災無線は関係がない。タクシー無線は、筆者は普通自動車2種免許を持っているから転職したときに多少使えるかもしれない。航空特殊無線は自家用飛行機の操縦者が地上基地から支援機器を操作する時に必要な資格で、つまり飛行機の操縦免許がなければ全く役に立たない資格である。操縦できなくても無線機のオペレータとして、飛行機に乗り込む、つまり例えが少しずれているが宇宙戦艦ヤマトの相原や森雪のようなことをことをしようと思えば、航空無線通信士という資格が必要だ。
 はっきりいえば、一般人が取得しても全く意味のない資格なのである。しかもこれほど明確に役に立たない国家資格は他にないのではないかと思うほどである。
 そう思いながらも、2014年12月、受験を申し込んだ。陸上と航空を合わせて10,680円。ATMから払い込んだ。筆者は独身だからいいけど、家族のいるお父さんの小遣いでは難しい金額ではないか。


【勉強方法】
 特殊無線技師とは無線機器が進歩して特別な技術がなくとも操作できるようになったので、ごく簡単な知識で無線機の操作ができるようにした資格のことで、その字のごとく特殊な機械を操作できるわけではない。特殊でない「○○無線技師」の方が遥かに試験の難度が高く格上だ。
 そのような資格なので、試験はごく簡単で、「問題は過去問が繰り返して出題される」「簡単な計算で求まる平易な問題」と問題集の編者は記載している。実際、海上特殊無線で経験済みだが、過去問さえやっておけば大丈夫なレベルである。ただ法規にしても無線工学にしても、陸上、航空それぞれに必要な知識は問われる。大ざっぱにいえば24問の問題のうち、8割は陸海空共通、残りがそれぞれの専門分野というところであった。必要な知識は中学校卒業程度というところである。
 第2級陸上特殊無線は電波法規・無線工学のみ。航空特殊無線はそれに加えて電気通信術となっている。航空特殊無線合格者の特典として、航空無線通信士の受験時にはこの電気通信術が免除させるというのがある。このためにまず航空特殊無線を受験する人も多いと思われる。
 全体としては過去問丸出しで、引っかけもひねりもない。たまに新規の問題も出ているようだが、合格とされる正答率が60%だから、過去問さえきっちりやっておけば不合格になるおそれはない。
 問題集に載っている過去問を3回ほど繰り返し、間違えたところをノートに書き出して覚える。試験時間は1時間とあるが、15分もあれば十分である。やっているうちに問題を見ただけで答えがわかるようになった。
 平易な学科に比べ、電気通信術はやや特殊だ。決して難しくはないのだが、訓練が必要なのである。
 要するに無線電話で情報を確実に伝えるために、日本語ならアを「朝日のア」とかイを「イロハのイ」という「通話表による送受信」の英語版の試験が行われる。英文の通話表は以下のようになっている。

A ALFA (アルファー)
B BRAVO (ブラボー)
C CHARLIE (チャーリー)
D DELTA (デルタ)
E ECHO (エコー)
F FOXTROT(フォックストロット)
G GOLF (ゴルフ)
H HOTEL (ホテル)
I INDIA (インディア)
J JULIETT (ジュリエット)
K KILO (キロ)
L LIMA (リマ)
M MIKE (マイク)
N NOVEMBER(ノーベンバー)
O OSCAR (オスカー)
P PAPA (パパ)
Q QUEBEC (ケベック)
R ROMEO (ロメオ)
S SIERRA (シエラー)
T TANGO (タンゴ)
U UNIFORM (ユニフォーム)
V VICTOR (ビクター)
W WHISKEY (ウィスキー)
X X-RAY (エックスレイ)
Y YANKEE (ヤンキー)
Z ZULU (ズル)

 これは国際機関で定められているので、旅行業界で広く使われているような、LをLONDONといったり、CをCHINAと言ったりすると減点になる。
 受信はランダムに発生された英文字を5字を1語にして、3分間聞き取って書きとる。送信は逆に紙に書かれた英文を通話表を用いて発声し、目の前の試験官が聞き取る。
 試験対策は「第1級海上特殊無線技師合格記」と重複するので省略する。
 とにかく受信に関してはパソコンのフリーソフトに練習用のソフトが存在するので、それを繰り返すことである。
 難しいのは日本語では同じ音となるCとS、KとQ、BとV、LとRだろう。通話表ではCはチャーリー、Sはシアラ、Kはキロ、Qはケベック、Bはブラボー、Vはビクター、そしてLはリマ、Rはロメオである。シアラと聞いてCと書いたり、ケベックと聞いてKと書くのはやってはいけないミスだが、「どっちかな?」と迷っていると、次の語が聞き取れなくなるのである。
 諸般の事情により、2週間程度しか勉強時間がなかったのだが、何の問題もなかった。

【試験当日】
 2015年2月7日、試験会場の大阪天満にある西沢学園関西テレビ専門学校にやってきた。特殊無線の試験は年3回あるのだが、休日に試験があるのは2月だけである。
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↑関西テレビ専門学校
 午前中に陸上特殊無線、午後から航空特殊無線の試験がある。試験会場へは学校の正面ではなく、裏口から入る。裏口には池があったり、犬小屋に猫小屋、はては個人宅の入り口があったりする。在校生の憩いの場か学校のオーナーが住んでいるのか。謎の多い空間である。
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↑裏口
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↑憩いの場
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↑池と犬小屋猫小屋
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↑何故か個人宅
 さてまずは陸上特殊無線。試験会場は3階。受験者は106名。会場は4階にもあるから約200名の受験者。受験者は男性が圧倒的に多いものの、年齢は下は10代から上はおそらく60代までと幅が広い。確信していえるのはこの資格を必要とする人たちではなく、簡単な資格だから取っておこうという人が圧倒的に多いことだ。
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↑陸上特殊無線試験会場
 11時試験開始。その10分もかからずに勝負は終わった。例によって過去問丸だし。満点を確信して、退出時間の30分が経過するのを待った。退出可能時間が告げられると、ほとんどの受験者が一斉に退出した。まだ残っている人はいったいどういう勉強をしていたのだろうと思ってしまう。
 駅前のマクドナルドで昼食。自信はあるが一応問題集を開いて航空特殊無線の最終チェックをする。目の前の専門学校性と思われる男女が先ほどの試験の答え合わせをしていた。女の方が背が高く、しっかりしてそうだ。
 昼からは航空特殊無線。陸上特殊無線よりも受験年齢層が低いように思える。これは電気通信術があるために、簡単に取れる資格ではないので資格ヲタクが敬遠しているのだろう。筆者の隣は専門学校性と思われる若い女性だったが、とても自家用機の操縦者でなく、おそらく上級の航空無線通信士の科目免除を狙っての受験であろう。あるいは筆者がアロマテラピー検定を受験したように履歴書に箔をつけるためか。
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↑航空特殊無線試験会場
 まずは電気通信術の受信。まずは、アルファ(A)、ブラボー(B)から始まってズル(Z)まで読み上げられる。その後ランダムなアルファベット5文字1語の3分間の受信。海上特殊無線で経験済みなので、さほどの緊張はなく、早く終わってくれてという気持ちだった。乱字はあったものの完璧だろう。
 その後13時18分から学科試験。陸上特殊無線と同じく10分で勝負あった。もちろん30分で退場した。
 通路を隔てた教室で待機。トイレに行っていたら座るところに苦労するくらいであった。筆者の隣に座っていた女性を含むグループはどうやらこの学校の生徒で、送話を前にかなり緊張している様子だった。「少々のミスは大目に見てくれるらしいよ」などと楽観的な情報で辛うじてリラックスさせていた。
 電話送話試験は4人の試験官が送話のチェックをする。5人ごとに廊下に待機する。自信があるとはいえ、やはり学科試験と異なり実技試験は緊張する。10分ほど待って呼び出された。
 筆者の番だ。試験官は海上特殊無線の時と同じ人だ。受信と同じくアルファベット5文字1語が並んだ問題用紙をみて「指差しOKですか?」と確認を取った。言い方が若者風のせいか試験官はすぐに意味がわからなかったようだが、了解が得られた。間違えないのが一番なのだ。「始めます。本文。」といって問題文を読み上げる。W=ウイスキーで3秒ほど躓いたが、最後まで乗り切った。「終わり」とはっきりした声で結んだ。試験官は鉛筆も動かさずしたがって減点項目もなし。合格を確信した。

【合格発表】
 模範解答は試験終了後数週間後ウェブサイトで発表されていたのだが、それは見ずに、葉書での合否判定を待った。
 2015年3月1日。その葉書は送られてきた。陸上航空とも合格だった。
 こういう「士」ついた資格は合格だけで終わらず、免許証の発行を申請しなければならない。
 海上特殊無線と同じように郵便局で収入印紙を買い、申請書の送付、免許証の送付の両方とも簡易書留より安い、特定記録郵便とした。
 3月31日、免許証が届いた。免許証のフォーマットは海上特殊無線とほとんど同じで、異なる点は海上特殊無線が国際免許なので英語の表記があるが、陸上、航空は日本語のみという点だ。陸上が国内専用というのは理解できるが、海も空も世界に繋がっているというのに、航空が日本語のみというのはいかにもこの資格が軽いものかわかろうというものである。
 こうしてめでたく資格を手に入れたわけだが、単に取りやすいから取っただけで、何の意味もない。受験申請から勉強、試験地の大阪まで交通費、免許証の取得まで、面倒なだけでそれに要する見返りがあったのか疑問だ。海上特殊無線は英語の試験があるからまだしも、中学校卒業程度の学力しか試されない2級陸上と航空特殊無線は履歴書に書かない方がいいかもしれない。
 無線関連の資格としては、携帯電話などの多重無線に必要な第1級陸上特殊無線が、就職では多少有利になるようであるが、今さら老体を雇うところはないと思う。もし取るとすれば、どうせ遊びだから航空無線通信士を狙い、「相原通信長の下働き」を目指そうと思う。

●この資格に要した費用
特殊無線技士問題集 2,160円
第2級陸上及び航空特殊無線受験手数料 10,680円
収入印紙 3,500円
特定記録郵便 242円
特定記録郵便 242円
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合計 16824円
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↑あべのハルカス(本文とは関係ありません)
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2級ボイラー技師合格記 [資格]

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■そもそもボイラーとは
 人間が生活するには水が必要だ。そして快適な生活をするには湯が必要だ。人類が火を手にしてから程なく湯を使うことを覚えたはずだ。お茶を飲む、料理する、手を洗う、部屋を暖める、風呂に入る。すべて湯が必要だ。家庭ではその程度だが、水を沸騰させて蒸気にすることにより、膨大なエネルギーとなり、これをタービン(羽根)に吹き付けることにより、発電機を回転させて電力を得る。これは火力発電所の基本原理である。つまり水を湯または蒸気に変換するボイラーは人類を支えているといっていいだろう。あの原子力発電所も核燃料で水を蒸気に変換して発電機を回しているのだ。
 だからかつては工場やビルにはボイラーがあって、給湯から暖房、自家発電まで利用していた。それゆえ工場やビルの設備管理に携わる人はボイラーを操作する技術が必須で、その技術を証明するボイラー技師の資格は重視された。
 しかし現在はビルの給湯は電気温水器や真空温水器を利用するのが主流で、ボイラーを備えているのは蒸気そのものを利用する大工場ぐらいしかなくなってしまった。
 だからボイラー技師の資格は、その権威を低下させつつあるのが現状だ。しかしながら雇い主としては、給湯設備の理解度の証明として、検定試験的な扱いでボイラー技師を評価していて、あいかわらずその需要は高い。
 俗にビルメンテ基本4点セットというのがある。それは「電気工事士」「危険物取扱者乙4類」「2級ボイラー技師」「第3種冷凍機械」の4つの資格のことだ。ビルメンテは比較的高齢者でも求人があり、万が一の失業という非常事態の保険としても使える。管理人はすでに「電気工事士」「危険物取扱者乙全類」を取得している。この際基本4点セットをそろえ、すでに持っている大型2種運転免許を加えて、盤石の再就職対策を目指すことにした。
 そう決めたのは1月末であった。
 さてボイラー技師の資格は筆記試験だけで得ることができない。3日間の実技講習を全て出席し、筆記試験に合格する必要がある。ただし、その順序は逆になってもいい。つまり筆記試験に合格して、実際に資格が必要になってから講習を受けてもいいのだ。講習は毎月全国のどこかのボイラー協会でやっていて、その費用は1万8千円くらいだ。
 さしあたりボイラー免許の必要がない管理人としては後者の選択があり得たが、やはり形になった免許がほしいというのと、講習を受けてから、試験を受けた方がボイラーの理解が進み、試験勉強が捗るのではないかと考え、講習から試験を受けることにした。
 その3日間の講習の時期だが、なんとほとんどが平日の3日間で行われているのだ。会社が業務の一環として出張扱いにしてくれるのであれば、その方が歓迎されるが、管理人のような門外漢が趣味で3日連続有給休暇を取得するのは至難の業だ。どこかに1日の休みで済む金土日で講習をしているところはないのか。あった!
 2月から3月では宮城と鳥取で、金土日で講習をしている。近畿在住である管理人は当然鳥取を選んだ。時期は2月27日金曜から3日間。テキスト込みで講習手数料は1万8千円。さらに講義を受けるだけで取得できる「小型ボイラー特別教育講習」のために3千円追加し、21000円を鳥取県ボイラー協会に振り込んだ。
 筆記試験は3月14日だ。この日は土曜日で休み。好都合である。中四国安全衛生技術センターから試験申請書を送ってもらい、2月中旬に提出した。受験料は郵便振替による払い込み。窓口で振込証明書を発行してもらわないといけない。この場合、有人窓口での対応となり、集配局だと平日18時、それ以外だと16時までに郵便局に行く必要がある。独り者には厳しい仕組みである。
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↑取り寄せた試験申請書
 インターネットを徘徊して2級ボイラーに関する情報を集める。ほとんど過去問を繰り返し勉強することで合格できるとある。参考書は読んでいて眠くなるので不要、理屈抜きに覚えるのが一番などと書いてある。
 彼らが勧める「過去6年間2級ボイラー技師過去問題集」を買って、これをひたすら繰り返すことにした。
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↑購入した過去問集
 さらに危険物取扱者で成功したように、スマホアプリで隙間時間に勉強することにした。幸いその危険物でのアプリと同じ作者りすさんがボイラー2級の問題集を作っている。さらに要点を記載したテキストアプリも買った。それぞれ300円と500円だった。
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↑りすさんのボイラー2級
 まずは何の予備知識もなく、いきなり過去問をやる。40問中19問正解。全くの勘で解答した割には上出来である。
 過去問を解きつつ、間違えたところをテキストでチャックする。これを繰り返していった。2週間後、6年分の過去問2周目には60%を越えていた。
 そしてさらに有効だったのはYoutubeにある2級ボイラー技師の講義である。ヘルメットをかぶったオッさんが分かりやすく解説してくれる。ほとんどの分野を網羅していて、これを聞いておれば、資格取得の専門学校に行く必要などないだろう。管理人がこの存在を知ったのはある程度勉強が進んでからであったので、全ての講義を聞くことはなかった。

↑2級ボイラー技士 資格試験対策講座

■準備万端の鳥取行
 そんなツールにも恵まれて順調に勉強が進み、講習に挑むことになった。前述したように講習は鳥取市で行われる。鳥取は不便なところだ。大阪からクルマで3時間から4時間。管理人の地元和歌山からだとさらに1時間余分にかかる。
 講習は金曜日の9時から始まるので、早起きしてクルマで行くのは危険を伴う。何しろ、講義を一日でも欠席、遅刻、早退すれば修了証が発行されないのだ。そこで木曜日の夜から移動して鳥取で前泊することにした。
 大阪から鳥取に行く場合、特急スーパーはくとを利用するのが最も速い。和歌山からだと19時前に出発すれば、23時前に鳥取に到着する。しかし特急料金と運賃は片道1万円近く必要だ。鉄道で行くのは確実だが、問題点がある。それは現地での交通をどうするかである。講習は駅前の便利なところではなく、クルマで30分走ったところにある労働基準局で行われる。また2日目の午前中は実際にボイラーを操作するため、別の工場に行くことになっている。その近くを通るバスも走っているようだが、田舎のバスだけに不安な要素が大きい。自分のクルマで行けば、その問題は解決する。
 しかしこれには別の問題がある。すなわち鳥取は北国だ。2月末から3月では雪が残っているかもしれない。鳥取市内はどうもなくても、鳥取岡山の県境部分などは降雪してチェーン規制がかかっているかもしれない。特に往路は夜間走行になるのでその確率は高まる。
 そこでタイヤチェーンを購入することにした。いろいろ調べた結果、取り付けのしやすさよりも、確実にグリップすること、非降雪時でも安心して走れることを重視し、サイルチェーンという高級品の中古をネットオークションで入手した。さらに本番であわてないために取り付け練習した。メーカーのウェブサイトに取り付け動画がアップされていて、それをスマホでダウンロードして練習した。スマホを見ながら取り付け作業できる便利な世の中になった。
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↑購入したタイヤチェーン
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↑装着練習もやった
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↑ショベルも買った(ただし使わなかった)
 さらに鳥取のホテルに駐車した際、雪に囲まれている可能性があると考えて、ショベルまで買った。いろいろとお金のかかる資格取得である。
 さて、クルマで行くとすれば、安くそしてなるべく速く行きたい。最速ルートは、阪和道、近畿道、中国道、鳥取道だが、料金は5000円ほどかかるので却下。最安ルートはもちろん全て一般道を利用することだが、これだと6時間ほどかかる。もっともバランスがとれているのは、阪和道、関空道、阪神高速、神明道路、姫路バイパス、国道29号線、山崎ICから中国道、鳥取道であった。これだと料金は3000円程で最速ルートと30分程しか時間が変わらない。
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↑鳥取行き走行ルート(見えにくいけど灰色の線)
 19時過ぎ自宅を出発。阪和道に乗って関空道へ。この関空道はいつも閑散としている。大阪方面からのクルマはほとんど阪神高速湾岸線を利用するからある。この関空道を利用するのは泉南の山側の人と和歌山方面のみであろう。それだったら2車線で十分だったはずだ。将来に備え用地買収はしておくにしても建設費は節約できた。
 阪神高速湾岸線に入った。かつての阪神工業地帯も重厚長大産業の衰退により、倉庫業が多くなっている。
 六甲アイランド住吉浜で降りる。ここで一般道を走って摩耶から阪神高速神戸線に乗り継ぐ。この乗り継ぎは不便で何とかしてもらいたいのだが、湾岸線の西方への延長は海中トンネルや海上高架橋の連続で建設費が高額過ぎて実現には多大な時間がかかるだろう。しかし阪神高速の京橋ー月見山間は慢性的に渋滞しており、その救済のためにも早期実現を期待したい。
 神明道路の垂水で休憩。姫路パイパスは無料化されてクルマの量が増えてしまった。道路は無料が原則だと思うが、高速道路というからには早く目的地に到着しないと意味がない。鉄道でいえば特急券のようなものだ。世界最高水準の道路設備を維持するために、建設費が償還しても料金を取り続け、その代わりに料金を大幅に値下げしてはどうだろう。
 姫路からは国道29号線方面に向かう。一部バイパスの建設が始まっている。ここからは一般道。田舎の真夜中であるのでクルマは走っておらず、ほとんど信号もない。カーナビの指示に従って、山崎から中国道に乗る。中国道は山陽道が開通してからはほとんど地域輸送に徹している。沿道は鉄道が不便なので、高速バスは通勤通学にも使われているという。
 鳥取自動車道は無料である。無料である理由は有料にしても建設費を償還できる見込みがないので、はじめから税金を投入しているからである。受益者負担で地元の出資ということになっているが、地方交付税交付金を手厚くするなど、実質、国が相当補助する仕組みになっている。ただし無料にするので、インターチェンジには料金所を設ける必要がなくその分買収する用地が少なくて済み、サービスエリアのような立派な設備も不要で、インターを降りた道の駅やコンビニで代用する。その分低コストで建設できることになる。
 鳥取自動車道は佐用から乗る。真夜中なのでほとんどクルマは走っていない。トンネルが多い。これは確かに建設費を償還できそうにない。
 途中粟倉ICで降りてすぐの道の駅で休憩。売店は全て閉まっていてトイレだけが利用できる。
 鳥取自動車道の特徴として、志戸坂峠でいきなり一般道になる。ここはもともと歩行者原付の混合交通のトンネルである。新たに自動車専用のトンネルを掘るだけの需要もないので流用しているわけである。
 23時半にホテルモナーク鳥取に到着。結婚式場もあるホテルということで高水準な設備を期待していたが、机は傷だらけで平凡だった。温泉はよかった。
■講習一日目
 7時前起床。温泉に入ってから朝食。朝食はバイキングで魚が充実している。
 8時半頃に出発。カーナビとスマホのグーグルナビに従って鳥取労働基準協会に到着。JR因美線沿線の整地された新興造成地にある。
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↑鳥取労働基準局
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↑講義教室
 ボイラー2級の講習は12名。男性ばかりで年齢は20代から40代が多い。作業服を着ている人もいる。それは中国電力の社員であった。あとは人形峠の原子力施設の職員とか、自営業の人。完全に趣味の人も私の他にいるようだ。中には試験は既に合格していて、講習だけの人もいた。座席は受験番号による指定席である。和歌山から来ている当然私はダントツの「遠来賞」だろう。おばちゃん事務員が「遠いところから」と労ってくれた。
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↑講習用テキスト
 初日の講習はボイラーの基本的構造。配れた「教育日程表」によると、このようになっている。
 1.ボイラーの概要
 2.付属設備、付属品の取り扱い
 3.水処理及び吹き出し
 熱効率のいい水管ボイラーよりも、蒸気機関車と同じ煙管ボイラーが主流らしい。私は鉄道マニアなので、蒸気機関車の構造はある程度把握している。そういうわけではないが、午前中から眠たいものであった。しかし要点は押さえている。
 昼食は近くのパオという焼き肉レストランでビビンバ。後藤騎手の自殺の報に驚く。
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↑レストランパオ(肉屋もやってる)
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↑ビビンバ
 140円の缶コーヒーを飲んだにも関わらず、昼からも眠たかった。湯を沸かすという行為は普段の生活でよく目にするし、難しい熱力学理論も何となく理解できてしまう。液体から気体に変化すると体積は拡大し、その逆は縮小する。急激に縮小すると液化した水の周囲が真空化し、その水が管内ではねて暴れ回る。これがウォーターハンマーである。なるほど。
 16時からは小型ボイラーの法令講習。これは受講者は5名だけだった。講師にしてもいかにもお座なりという感じだった。
 17時講習終了。外は雪が降っていた。
 ホテルに戻る。風呂に入ってから、歩いて外出。駅前の居酒屋で一杯やる。なかなかの味だが、客が少なすぎる。鳥取市は最も勢いのない県庁所在地だろう。BGMはサザン・オール・スターズにこだわっている。店長の趣味か。1時間ほどいた。20時に出る。外はマフラーなしでは寒い。
 駅の北側にはコンビニエンスストアーはなく、南口にローソンがあった。まだ飲み足りないのでカクテルを買う。
 ホテルに戻り、部屋飲み。
 この講習は3日間。日曜日に夜に帰宅しすぐに仕事だ。しかもその週の土曜日も出勤だ。疲れを残さないためにも、早く寝るのが先決だと思った。
 21時半にはベッドに入った。

■講習2日目
 7時00分起床。こんなに眠ったのは久しぶりだ。温泉に入る。こういう温浴設備のあるホテルは朝風呂の利用者が多い。
 朝食はパンにした。ビールを飲んでいる人もいる。
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↑ホテルの朝食
 8時25分に出発。今日は実技講習なので、労働基準協会ではなく数キロ離れた全国農業協同組合連合会鳥取県本部果実袋工場に向かう。昨日のオバサンが門番に立っていた。工場は古びていて、昭和40年代いや30年代の世界だ。
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↑鳥取県本部果実袋工場
 この工場は果実袋を作っていて、袋に塗っている鑞を溶かす必要から、蒸気ボイラーが必要という。
 実地では吹き出しの停止とボイラーの停止を担当した。ぜんぜん難しくない。
 ここ鳥取では人数が少ないので、このように順番にボイラーの操作ができるが、大勢のところは操作しているのを見て終わりらしい。それではやっぱりおもしろくない。これらは後から知ったことだが、わざわざ鳥取に来てよかったと思った。
 いまやボイラーを設置している事業者が少なくなっている上に、こうした講習で頻繁に停止起動を繰り返しているので、ボイラーの調子が悪くなってしまったという。
 11時に終了。昼食はコメダ珈琲。ここは飲み物のセットメニューがないので割高となる。昼から晴れた。
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↑コメダ珈琲のウインナーコーヒーとミックスサンド
 午後からは労働基準協会で教習。パソコンを使ったシミュレーション教習となる。講師は昨日と違う人だった。
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↑使用したシミュレーター
 順番に指名されてプロジェクターの文句を読み上げるのを1回。シュミレータの操作を2回やった。1回目は起動シーケンス。講習生のひとりがボイラーを爆発させた。これはこれでおもしろい。2回目は水面計の掃除をする際のコックの操作だった。ボイラの水面計のコックは少々特殊で、普通コックは管と平行にすることで流れるのだが、水面計の下側は管と直角で流れるのである。これは上下二つのコックが下側に下がておくことを標準にすることで、視認性を良くし安全性を向上させているのである。この水面計のコックの向きは試験で必ずといっていいほど出るので確実に覚えていないといけない。
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↑ボイラー水面計の仕組み
2級ボイラー技士になるまでの道程(http://www7.atpages.jp/warabiclub/)より引用
 16時には講習が終わった。
 ホテルに戻って風呂に入り、外出した。
 最初に入った「大阪新世界串カツやまちゃん」という店はオーダーに30分かかるということで退散。商店街の「だいぜん」という店に入る。ここははやっているが、鳥皮、なんこつ、が欠品していた。客が少ないから仕入れが少ないのか。
 20時過ぎに退散。結局昨日と同じ部屋飲みとなった。少々飲み過ぎたようだ。

■講習3日目
 朝起きて、温泉へ行って、8時半ごろにチェックアウト。入湯税が1日150円徴収された。
 雨はやや強く降っている。
 9時前に労働基準協会会館着。
 昨日と同じ講師。本日のメニューは次のようになっている。
 1.燃料及び燃焼方式
 2.点火
 3.燃焼の調整
 4.点検及び異常時の処置
 要するにより実践的な内容になるわけである。
 講師は「ここが試験に出ます」というような露骨な表現はしないが、重要な項目を読み上げて「これですね」と言う。実際そこが試験ではキーフレーズになった。
 雨の中、昼食は一昨日と同じパオ。しかも同じ石焼きビビンバだった。
 講習は確かに眠いこともあったが、部屋で黙々と過去問を解いているよりも、実際にボイラーを目にして操作し、写真入りのテキストで専門の講師が説明してもらった方が理解が早かったのは間違いない。費用、交通費、宿泊費の合計が得られる資格の有効性が釣り合うかどうかは疑問だが、とにかくおもしろかったのは確かで、いずれ自分にとって役に立つはずだ。そのように考えて、無駄遣いを正当化した。
 16時45分講習終了。「小型ボイラー特別教育講習」の修了書をもらった。これで仮に2級ボイラーを不合格となっても格好がつくことになる。
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↑もらった修了証
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↑基準局の駐車場(ナスカの地上絵に似てない?)
 即、帰宅の途につく。国道29号線を南下。自分のクルマのナビのマップは2002年から更新しておらず、鳥取道に対応していていないので、スマホのグーグルマップを併用した。
 往路と同じルートで帰る。智頭付近は雪が残り、気温は4℃。夕食は粟倉温泉の道の駅で食べた。結局、タイヤチェーンもショベルも使わなかった。
 往復578kmのドライブだった。家に着いたのは22時。


■試験当日
 約2週間後の3月14日土曜日。筆記試験が行われた。筆記試験は講習が実施された都道府県が属する支部で試験を受けねばならず、今回の場合、広島県福山で行われる。この安全衛生技術センターの支部はほとんどその地方の最大都市にはない。中国地方は広島県福山市、近畿地方は兵庫県加古川市、関東は千葉県市原市、東北は宮城県岩沼市といった具合だ。いかにも製造業のための組織という感じだ。
 ところでまたも福山という遠隔地に赴くということでさぞ交通費がかかるだろうと思うかもしれないが、この時期には強い味方がある。それは青春18きっぷである。学生の休み中限定で、JR普通列車に限り1日乗り放題なのだ。1冊で5回乗れるが、バラバラにして使えない。これを友人の買った青春18を1日分使わせてもらうことにしたのだ。試験は幸い昼からであり、阪和線の早い電車に乗れば間に合う。
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↑試験の行程
 朝起きて、ラジオをつけると、北陸新幹線の金沢開業を報じていた。
 予定通りに乗った阪和線紀州路快速は、北信太で踏切直前横断者のせいで列車が停止。遅れは4分ほどであったが、これが後に大きな問題となった。
 予定していた大阪発8時の新快速にはタッチの差で間に合わず。というかはじめからどれくらい遅れているのか知っていれば必死に走って間に合ったかもしれない。何とかなるやろう、と思ったが甘かった。姫路と相生の接続が悪く、福山到着が12時45分となってしまうことがわかった。試験開始は13時30分で、会場は福山駅から離れている。バスはあるが本数が少なく、タクシーを利用するしかない。タクシー料金を検索すると2000円から2300円ぐらいだという。
 それなら新幹線でワープするしかない。西明石ー姫路間、姫路ー相生間、岡山ー福山間を調べた結果、2700円を払って岡山ー福山間を新幹線移動すれば、12時00分に福山に着くことがわかった。これは当初予定よりも15分も早い。さすが新幹線はすばらしい。ということで、このまま姫路、相生で乗り継いで岡山まで移動した。姫路で20分、相生で31分の待ち時間があったが、この損失は新幹線が帳消しにしてくれるのだ。
 さて岡山では約5分の乗り換えで11時46分発の「さくら」に乗り換える。楽勝だろうと思ったが、予想より連絡通路が長く、切符購入に時間がかかった。なにしろ青春18は「ここまでの乗車券」として自動券売機に挿入できないので、乗り継ぎがスムースでないのである。
 在来線出口を出て、みどりの券売機に並ぶと列ができていた。「さくら」に間に合うかどうか微妙になった。やっとこさ切符を手に入れたものの、さくらには1分差で間に合わず。なに、「のぞみ」なら福山に停まるさ、と思っていると、次の「のぞみ」は徳山に停まるが福山に停まらないことが判明。12時28分発の「のぞみ」に乗る羽目になった。
 待ち時間は駅ナカでカツカレーを食べた。特に考えたわけではないが、結果としてゲン担ぎになった。
 のぞみの自由席はほぼ満席。3列の真ん中に辛うじて座れた。もっとも乗車時間は15分ぐらいしかなかった。
 福山は晴れていた。福山の到着時刻は12時46分。バスには間に合わず、タクシーを利用して試験会場に急行。信号待ちが多くイライラする。
 13時過ぎに中四国安全保安協会に到着。街外れの港湾地区にある。試験会場は天井から液晶テレビが吊り下げられ新しい印象。しかし机は小中学校みたいだ。席に着くとすぐに説明に入った。直前に重要事項の確認をしたかったのにできなかった。冒頭で試験官はこの中国地区は毎年受験者が多い、今後の参考にしたいのでアンケートに答えてほしいと述べた。受験者が多いのはおそらく土曜日に試験を行っているのがここだけだからだろう。他ならぬ私が遠路はるばる福山にやってきたのはそういうことだからだ。
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↑中四国安全保安協会
 13時31分試験開始。意外と過去問以外の問題が出てる。やったところなのに迷った問題もある。直前チェックができていれば、と悔やんだ。試験開始30分後解答を埋めた。自信のない問題が各単元に4問あり、それが全て間違えたとしても、どうにか合格できる手応えだ。試験時間は3時間だが、ほとんどの人は1時間で退出する。免許申請用紙が積まれていて1部持ち帰る。
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↑卸町南バス停
 早く退出したのはいいが、バスの本数が少なすぎる。セブン-イレブンでコーヒーを買って、卸町南バス停で待つ。本日をもってダイヤ改正したみたいで、バス停の時刻表どおりに来なかった。15時32分、バスはやってきた。私のいたバス停は卸町ではなかったわけだか、支障はなかった。卸町からは受験者が10数人乗り込んできた。
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↑福山駅着
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↑さらば福山城
 16時6分発の姫路行きに乗る。問題集を開いてみると迷った問題は見事に間違えていた。ちょっと気を悪くした。
 姫路着。森の湯という銭湯まで歩く。貸しタオル込みで480円。炭酸泉が人気だ。入れ墨男もいる。
 駅前商店街の地下にある「げんか酒馬」に入る。入場料が1000円で2時間制限。それ以降は延長料金が発生するが、店から終了時間知らせることない。ビール2杯にカクテル。馬刺し、枝豆、焼きなす、軟骨唐揚げ、豚肉ニンニク芽炒め、フライドポテト。紙に書いて渡す。料理が原価。マリブパインというカクテルが旨い。合計3355円であった。まずまず安いだろう。ただカウンターは寒かった。結構な人気があるらしく、店を覗いては撤退する人が4組はいた。
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↑げんか酒馬
 姫路発21時17分の新快速を乗り継いで、0時頃帰宅した。

■合格発表
 3月23日、中四国安全保安協会ウェブサイトで合格発表があった。管理人の受験番号は、しっかり掲載されていた。125名の合格者。大体7割ぐらいの人が合格したようだ。
 しばらくして協会から葉書が届いた。
 改めて、判定「合格」
 手応えはあったから、多分合格していると思っていた。だが問題を持ち帰ることができないので、自己採点ができず、かすかな不安があった。
 福山で入手していた免許申請書の文字を埋める。クレーンや潜水士といった安全保安協会で取り扱っている免許すべてに対応しているので、ややこしいものであった。手数料の収入印紙を貼り付け、簡易書留で送る。
 数日後、免許が送られてきた。自動車の運転免許のように、取得した免許の種類にフラグが立つようになっている。
 これで晴れて2級ボイラー技師になることができた。今の仕事には全く関係がないこの資格。しかしそれが故に勉強はおもしろかった。それに実際にボイラーの操作もできた。おそらく将来に役立つことはないだろうが、管理人はまだまだ懲りずに資格取得に励むのである。
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↑手に入れた免許

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危険物取扱者乙種全類取得記(Z作戦計画) [資格]

 危険物取扱者はその名の通り、危険物を取り扱うための資格である。誰もが知っている危険物としてはガソリンがある。ガソリンに引火すると爆発するし、ニトログリセリンは衝撃を与えるだけで爆発する。黄リンは内服すると数時間で死亡する。また意外に思えるかもしれないが鉄粉は条件が整えば発火し、しかも注水すると、さらに燃え広がるという性質がある。このような危険物の性質と消火の方法を理解していなければ、惨事が拡大するので、正しい知識を身につけた取扱者を当該部署に配置する必要から、このような資格が存在するのである。

 危険物取扱者の資格のうち乙種は次の6種類がある。ちなみに甲種はこの6種類の危険物を全て扱えるが、化学系の大学を卒業するか、実務経験、または所定の条件の乙種を取得する必要があり、試験の難度も高い。また乙種を全て取得しても甲種を称することができない。
 第一類 酸化性固体 塩素酸カリウム、硝酸ナトリウムなど
 第二類 可燃性固体 赤燐、鉄粉、マグネシウムなど
 第三類 自然発火禁水性物質 黄燐、カリウム、ナトリウムなど
 第四類 引火性液体 ガソリン、ベンゼン、トルエンなど
 第五類 自己反応性物質 硝酸エステル、ニトログリセリン、ヒドロキシルアミンなど
 第六類 酸化性液体 過酸化水素水、ハロゲン化合物など
 こう並べてみると、もっとも身の回りに存在し、実際に目にするのはガソリン、ベンゼンを含む第四類だ。実際、第4類はもっとも需要があり、危険物取扱者の資格を目指す人はほとんど最初に乙四類を選ぶ。
 管理人も実はその一人で1993年に取得している。もう20年以上も前のことなので、どのような勉強したか覚えていないが、とにかく一冊の過去問集をやっただけで合格した。
 この危険物取扱者は3年に1度保安講習を義務づけられている。しかも受講義務のあるものが保安講習を怠ると免状の返納命令の対象となる。まあ実際、没収されることはないだろうが、そういう決まりになっている。この保安講習は大体は平日の3時間で、5000円近くの費用を要する。
 この資格は今勤めている会社で役に立っているわけではない。ただ会社が一部の職場で灯油を扱っているために、免状保持者に対して、講習を受けるための時間と費用を出してくれるので、その分仕事の時間が減るという特典がある。もちろん汗をかきながら仕事するよりも、涼しいところで座っているだけでいい講習の方が楽に決まっている。
 あと面倒なのは危険物取扱者の免状は10年ごとに写真の書き換えが必要で、その際、県の証紙を買ったり、申請書を簡易書留で送るとか、とても面倒なことだ。この資格に興味のある人は、取得したらそれで終わりではなく、余分な更新費用がかかることを覚えておいてほしい。
 乙4類だけで十分だった管理人が危険物全類取得に乗り出したのは、資格の取得数を増やしたいというのが、ほとんど唯一の思惑であった。
 実は乙種の場合、いずれか1種を取得してる場合、法令、物理化学、危険物の性質及び消火の方法(以下性消)の3科目のうち、法規と物理化学が免除され、試験は性消の15問だけとなる。そのため、乙種4類の合格率は30%であるのに、他の類は65%と高率となっている。しかも同じ日に3科目受験が可能であり、最短で2回の試験で全類制覇が可能なのだ。資格の数を増やすのが目的なら、これは最適な資格といえるだろう。
 早速、作戦実行を決断。2014年の春のことであった。乙種を全類取得することから、作戦名は
Z作戦計画
とした。


●教材の選択
 まずは問題集の購入だ。「危険物第12356類問題集」というのを買った。重要事項の語呂合わせが載っていて覚えやすそうだったし、解答の解説も分かりやすく、はじめから4類を取っているのが前提の編集方針となっているからだ。
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↑購入した教科書
 さっそくページを開いてみる。冒頭に載っている語呂合わせは
「イチローは燃えない」
第1類と6類はそれぞれ酸化性固体と液体である。それらは酸素が燃焼を促進するものの、それ自体は燃えない。この語呂合わせはよくできているが、その他は怪しいのが多い。例えばこのようなのがある。
「エチなアセ・水・メタ軽く、リン・塩水有毒」
意味~エチレン、アセチレン、水素、メタンは空気より軽く、リン化水素ガスと塩化水素ガスは有毒
「黄水、ジ粉、他は砂岩石」意味~黄リンの火災は水と土砂、ジエチル亜鉛は粉末消化器、その他は乾燥砂、膨張真珠岩、膨張ひる石を用いる

そもそも語呂合わせというのは、歴史の年号を覚えるのによく使われる。
794年=な(7)く(9)よ(74)ウグイス平安京(平安京遷都)
1941年=行(1)く(9)よ(4)一(1)気に真珠湾(大東亜戦争開戦)
これなら無理なく覚えられるが、前述のは語呂合わせとしてはとても覚えにくい。個人差はあるだろうが、そのまま覚えた方がましなぐらいである。
 そんなわけでこの本の語呂合わせは期待できないことがわかった。
 結果的に、勉強方法はテキストの問題をひたすら解き、何回も間違えた箇所をノートに書き出し、空き時間で覚えるという一般的なものになった。
 ところで会社員の場合、仕事から帰って夕食を取ると、急に眠気に襲われ、勉強をする気が失せることはないだろうか。年齢を重ねると確実にそうなる。したがって集中力を持って取り組める平日の勉強は2時間が限度であろう。そこで外出先の空き時間などで勉強をするための工夫が必要となってくる。
 管理人が採用したのはスマートフォンの勉強アプリの利用であった。スマホなら常時携帯しているし、荷物にもならないからだ。危険物を扱ったアプリは数多いが、無料のお試し期間を経て採用したのは、K.Joker氏作成の「りすさんシリーズ危険物乙○類問題集」だ。このアプリのいいところは、通信を行わないところと、自動的に間違えた問題と記憶し、間違えた問題、未解答の問題を優先的に出題し、効率的に記憶できることである。残念なのは全問正解したところで、リセットされてしまい、全問正解に要した問題数とか日付が残らないことだ。この機能さえあれば完璧に近いアプリである。
 1種類300円でまずは3種類購入した。
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●どの順番で受けるか
 危険物は一日に3種類まで受験できる。5つのうち、どれを選ぶかが問題だ。できるだけ早く資格を獲得したから、初回に3科目受けることにした。赤燐、マグネシウムなど可燃性固体の第二類と黄燐、ナトリウムなど自然発火禁水性物質の第三類は名前も似ているので、この二つを組み合わせる。酸化性固体の第一類と酸化性液体の第六類は酸化性という共通項があるので、これも組み合わせる。自己反応性物質の第五類は孤高の存在である。
 いろいろネット調べてみたが、定番というのはなさそうであった。そこで数字の若い順ということで、一類五類六類をまず受けることにした。危険物の数が一番多いのは一類でもっとも少ないのは六類だ。だからバランスも取れるだろうとも考えた。
 危険物取扱者はインターネットで受験申し込みができるのだが、それは単種受験に限られる。管理人のように三種類受ける場合は、申請用紙を取り寄せ、簡易書留で発送する必要がある。

●どこで受けるか
 もちろん地元和歌山での受検なら交通費もいらないし、楽なのだが、6月と10月にしか実施されない。6月は第1級海上特殊無線を受けるので無理だし、10月では先が長すぎる。危険物取扱者は、幸い、免状申請に不便はあるものの、他府県でも受験できる。7月に徳島で3種類、8月に奈良で2種類を受けることにした。

●めざせ乙156取得
 さて7月受験の日がやってきた。送られてきた受験票によると、試験地は徳島大学一般教養棟とある。徳島まではフェリーに乗り、自転車で徳島大学に向かうことにした。
 フェリー出航は5時35分。こんなに早く出なければならないのは次の8時30分発だと、試験開始まで間に合わないからだ。早朝便にありがちなガランとした船内で、アプリを立上げ最後のチェック。しかしたちまち眠くなって寝落ちした。
 朦朧とした意識の中、徳島港に着いた。ここからはグーグルマップのお世話になって徳島大学を目指す。しかしグーグルマップという奴は実走調査をしていないので、路地裏みたいな道を案内される。「本当に到着するのか」と不安になりながらも結果的に到着した。しかしまだ試験開始時間には早いので、近くのガストでモーニングを食べた。となりの男は徳島大学の学生なのか法律に関する本を読んでいる。
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↑徳島大学会場
 いよいよ試験に挑む。受験者は高校生が多いようだ。ヤル気のありそうなのもいるし、なさそうなのもいる。年輩の人は直前までテキストを開いている人が多く真剣だ。
 問題は1類から6類まで全て印刷されていて、必要なところのみ解答する仕組みだ。管理人の場合、1類、5類、6類の性消だけでいい。問題は持ち帰ることができない。
 問題を解き終えた。手応え十分とはいかなかった。比較的平易な第六類はおそらく大丈夫だろうとは思ったが、一類、五類は自信がもてない感触だった。
 問題は持ち帰れないし、問題も答えも覚えていないので自己採点もできない。そんなわけで意気揚々と感じでなく、消化不良のまま徳島を去ることになった。

●第1回結果発表
 まもなく結果がハガキで送られてきた。第1類6類が合格、第5類が不合格であった。得点も掲載されている。第1類は60点、第5類が50点、第6類が70点であった。合格点は60点だから、第一類はギリギリで踏ん張ったものの、5類はわずかに及ばずという、悔しい結果となった。実は勉強を進めていて、一番不安に感じていたのは第5類だったのだ。これについては後で詳しく述べる。
 不合格となった第五類の再挑戦は10月に大阪と決めた。
 この手の免状あるいは免許の試験は合格して終わりというわけにいかない。免状発行申請という手続きが必要だ。 今回は徳島で受験したから、発行手数料は徳島県の証紙が必要だ。当然これは和歌山県では売っていない。徳島県の消防試験センターに電話し、手数料相当分を現金書留で送れば代行してもらえるということなのでそのようにした。

●新たな勉強法
 五類はさておき、二類三類の取得に全力を上げることにした。
 この二類三類の勉強に関しても、基本的にはテキストとりすさんアプリを繰り返した。管理人はさらに効率的な勉強法を「発明」した。
 管理人はジョギングを趣味としている。その走っている時間を勉強時間に当てられないかと考えたのだ。いい方法があった。耳から覚えるのである。その方法を解説する。
 まずは、「危険物乙○類 ポイント 要点」をネット検索する。すると誰かが要点を記載しているので、それを自分で適当にピックアップして、コピペする。こうしてできあがったテキストを、読み上げソフトで音声化し、そのmp3ファイルを音楽ソフトで再生させるのである。それを聴きながら走るわけである。管理人の場合、一太郎ユーザーなので諒太というソフトを利用したが、精度を問わなければ無料でも読み上げソフトがあるだろう。
 これを何回も聞くことによって、記憶の定着を図れた。やや面倒ながらもこれは効果的だったといえるだろう。管理人は走っているときに聞いたが、クルマで運転しながらでももちろん効果があるだろう。しかしながら勉強量としてはこれだけでは不十分で、机に向かう時間は必要だ。

●めざせ乙23取得
 8月24日、試験日がやってきた。試験地は天理教の教団施設だ。駅からはかなり遠く、自動車乗り入れ禁止とは書いていない。クルマで行くことにした。
 部分開通している京奈和自動車道で約1時間。天理市に着いた。駐車場といっても正規分で足りず、未舗装の空き地に順番に置いていく。
 天理教の教団施設に入るのは初めてだ。黒い法被を着た人をたびたび見かけるし、施設内の掲示物にも宗教色を感じる。しかし、少子化で信者数が減るのが確実な中、これだけの巨大な設備を維持するのは大変だろう。
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↑奈良試験会場は天理教施設
 試験会場の教室だって、そこら辺の学校よりもずっと立派だ。少なくとも私の出身高校よりも上だと断定できる。
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↑試験があった教室
 さて、試験の手応えだが、今回は大丈夫そうだ。効果的に勉強できたこともあるが、2類3類の組み合わせは相性がよく、難易度もやや低かったように思えた。
 天理名物彩華ラーメンを食べて帰宅の途についた。
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↑彩華ラーメン
 後日送られてきた結果は2類3類とも合格だった。
 今回も奈良の消防試験センターに現金書留を送って免状を申請。それにしても書留で送り、返信封筒にも簡易書留の切手を貼らねばならない。もちろん証紙4000円も必要である。交通費だって莫迦にならない。資格取得はなかなかにお金がかかるのである。

●残るは五類のみ
 これで未取得は五類のみなった。試験日は10月だ。実は9月は大型2種免許取得に手こずっていて、かなりの時間を要していた。しかし大型2種は実技のみで学科はないので、勉強時間に支障はなかった。
 ところで五類危険物は自己反応性物質である。これは水や酸素がなくても反応するもので、もっとも分かりやすいのはダイナマイトなどの火薬である。まさに危険物中の危険物だが、それだけに一般の需要がほとんどない。求人でも「第5類取得要」なんてのは皆無である。
 危険物の名称もやたらと長い。「メチルエチルケトンパーオキサイド」、「アゾビスイソブチロニトリル」、「ジアゾジニトロフェノール」、「塩酸ヒドロキシルアミン」、「硫酸ヒドラジン」といった具合に、まるで怪獣の名前のようである。比較的知名度のあるのはダイナマイトの原料であるニトログリセリンだが、これとてニトロとついているが、ニトロ化合物ではないという怪奇さだ。
 そのような複雑怪奇な第5類だが、名前以外はそれほど複雑ではなく、1科目の受験で負担も軽く、勉強法も確立していたので、順調にメニューを消化できた。

●めざせ乙5取得
 10月4日、試験日がやってきた。試験地は大阪府池田市大阪大学である。関西人には「阪大(はんだい)」の愛称で親しまれていて、阪大生は京都大学に次ぐ学力を持つものと見なされる。
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↑大阪大学会場
 阪急石橋駅から坂を登って10数分。キャンパスに入ってからの方が時間がかかった。広い構内だ。管理人が通った大学は高校に毛が生えた程度の敷地しかなく、低い偏差値にふさわしいものであったが、この広い敷地はうらやましく思えた。これでこそ教養がはぐくまれるというものだ。
 閑話休題。試験は5類受験者のみが集められていたようであった。自信のない問題が3問ほどあったが、それが全部間違えたとしても、合格確定だ。退出時間まで何度も見直す。ほとんどの人が途中で退出していった。

●最終結果発表
 後日葉書が届いた。合格。得点70点。これで乙全類取得作戦が完了した。
 今回の免除申請も大阪府の証紙が必要なのだが、証紙は警察署で入手できるという。自宅から最も近い泉南警察署に出向くことにした。しかし警察署なら24時間対応してくれてもよさそうなものなのに、販売は平日のみというまさに役所対応だ。
 大型2種の運転免許申請で有給休暇を取った際、ついでに証紙を購入することにした。さらにその近くの郵便局で簡易書留を出して免状申請。

●乙全類完全制覇
 やがて免状が送られてきた。取得する度に免許申請したのでわずか5ヶ月で3度免状が発行された。実はこの全類取得作戦が始まる前に乙四のみで写真の書き換えをしたので、半年間で4度も免状が発行されたことになる。そのたびに返却しなければならないので、大いに無駄だが、受験地が違うのでまとめてというわけにいかないのだ。
 あらためて免状を眺めてみると
乙1類 徳島
乙2類 奈良
乙3類 奈良
乙4類 和歌山
乙5類 大阪
乙6類 徳島
とならび、なかなかに壮観だ。これは10年ごとの写真の書き換えでも変更されないから、永久に楽しむことができる。
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↑危険物取扱免状
 こうして、Z作戦計画は終了したわけだが、知識が増えただけで、別に今後役に立つわけではない。同じことをやりたいという人は止めはしないけど、常識的には乙4類だけで十分であるし、乙を何種類か取った時点で甲類を受験した方が、免状により箔がつく。乙全類取得と甲類とは扱える危険物の数は同じでも、管理者として選任されるのは甲類の方だからだ。
 ただ資格の数を増やしたい人は、それほど時間も掛けずに取得できるので、おすすめできると思う。

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大型二種免許取得記~後篇~ [資格]

・中篇のあらすじ
 予定された合宿日数で大型二種免許を取得できず、やむなく故郷に帰った筆者。故郷から合宿に通うという荒業で4度目にして修了検定に合格。ようやく仮免許を手にした筆者は路上教習に挑むことになった。
大型二種免許取得記~中篇~

 第14日/9月13日
 鳴門へ4度目の遠征。今回も南海フェリーと自転車で行く。3泊なので荷物が多く登山用のザックを背負う。
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↑またこれに乗って徳島へ
 8時半和歌山港を出港。3連休の初日。時間帯もいいので船内は混んでいる。自転車は積み込みが最後になるので、客室の座席は確保できなかった。いやカーペットにはまだ余地はあるし、座席も空いているのだが、荷物を置いているので座れないのだ。それでも船は広くて大きい。何とか座るところはあるものだ。屋外のベンチに座る。
 ここで千葉ロッテマリーンズ里崎捕手の引退を知る。2度の日本一の功労者。Twitterに投稿したら、電波が圏外となっていまい、せっかく書いたつぶやきが消えてしまった。潮風が寒くなってきたので退散した。その後は自販機の前のベンチで過ごす。
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↑鳴門渦潮高校。元鳴門工業高校で里崎の出身校
 10時半徳島港着。パンクしないように慎重に船を降りる。今日は自転車やバイクの客が多い。客室に自転車を持込、到着後組み立てている人も多い。
 さすがに教習所までの道のりは慣れたものである。
 阿波しらさぎ大橋は立派なハープ橋。しかしこの道は国道ではなく県道である。
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↑橋の北詰
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↑歩道自転車が色分けで分離
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↑阿波しらさぎ大橋
 11時半に宿舎に到着。あてがわれた部屋は1階道路側で、日除けを降ろさないと外から部屋が丸見えになる。食堂の近くなので食料保管スペースが近く、ここで食べている米は「元気一杯すくすく米」だと知った。
 路上教習の第2段階は筆者のように中型免許を持っている人は9時限で行われる。1限目は既に消化したシミュレーションなので、7回乗っただけで見極めとなる。これは中型を持っているということはトラックに乗っていて、大型車に慣れているから、この程度で技術取得できるだろうという見込みによる。しかし筆者はトラックは教習所でしか乗ったことはなく、素人同様である。普通免許所持の大型2種の場合19時限で行われることを考えると、この第2段階も筆者は苦戦することが予想された。
 教習は15時からであった。第2段階2回目の教習は、はじめての路上教習。緊張する。卒業検定は4コースあって、路上教習は往路1コース復路2コースか往路3コース復路4コースが基本である。今回は3、4コースだ。大ざっぱにいえば、教習所から旧徳島空港方面を目指すコースとなる。教官による模範運転というのはなく、いきなりハンドルを握る。


 教官に初っ端から「発進、その他の基本的なことができてませんねえ」とダメ出しされた。いきなり厳しいこと言われ焦る。狭い道ではミラーを木の枝に当てないよう、真ん中寄りを走る必要がある。しかしセンターラインを踏めば右側通行となってしまう。2車線の地域道路の場合幅員は3m。バスは車幅が2.5mあるので木の枝が張っている場合、ほとんど余裕がないのだ。直進時にもミラーに路側帯が映っているか確認しないといけない。
 もうとにかく事故を起こさないように運転することに重点を置き、技術的なことは二の次にした。教習所に戻ると教官は「これではお客さんを乗せて走らすことはできない。特に発進が遅すぎるし、停止も急ブレーキになっている。」と再度ダメ出しされた。
 ちなみに2種免許の場合、わざと教習生を怒らせるようなことをいって、その反応を見るという指導項目があるらしい。常に冷静に感情をコントロールできることがプロの運転手として必要だからだ。
 ガッカリしている暇はなく、16時から本日2度目3回目の教習。今回は1、2コース。大ざっぱにいえば北方面にある鳴門駅を目指すコースである。


 そんなブレーキではお客さんがこけるで、と語気を強く言われた。教習所に戻ってから、車内で立たされあなたのブレーキはこうだといわれる。確かにこけそうになる。発進時、車体がガタガタ震えるのは、アクセルの踏み込みが足りないからで、もっと踏みなさいと何度も練習させられた。
 18時に本日3度目4回目の教習。外はもう暗いのでライトをつける。横をすり抜ける自転車とバイクに気をつけないといけない。発進は徐々に上手くなってきた。アクセルは1300rpmをあれば十分で、ガタガタ震えだしたら、クラッチを少しだけ上げればいいのである。バスのブレーキはエアで動作するので、普通車のように強く踏んでいけない。停まる寸前に弛める「真綿で首を絞める」感じになる。教官はたまに上手くいっていることがあるので、それを常に出せるようにしやんといかんね、と指摘した。
 3回乗った路上で自信めいたものが芽生えた。しかし緊張感と疲れから取るもの手に着かず、早い目に寝た。

 第15日/9月14日
 11時より5回目の教習。心優しいH教官。クラッチをゆっくりあげるようアドバイスをしてくれた。盆休みのころは大型バスの教習は筆者だけであったが、9月になってから3台のバスがフルに動いている。
 宿舎に戻って少し間がある。近所をジョギングしたり、洗濯をやって過ごす。
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↑セブンイレブンまで711m
 15時より6回目の教習。3、4コース。旧空港近くの細い道から左折で縁石に乗り上げ寸前だった。オーバーハングを計算してもっと前に出てからハンドルを切ること、シフトチェンジが荒い、一呼吸置いてからチェンジするように指摘された。
 卒業検定では路上検定の前に場内課題として、鋭角と縦列駐車または方向転換、後方感覚が課せられる。これは第一段階のはじめの方でやったのだが、筆者は修了検定の突破に時間がかかったので、それらの課題はほぼ1ヶ月以上やっていない。今回は早めに教習所に戻ったので、鋭角をやった。予想通り脱輪して抜けることができなかった。見極めまであと3回しかない。路上教習に時間がかかるので場内課題をする時間がない。筆者は第1段階の悪夢を思い出し、不安になってきた。
 続いて16時から7回目の教習。今回は特別教習で卒業検定のコースとは無関係に走る。普通車の高速教習のようなものである。バスは小鳴門橋を目指す。景色のいいところ走る。これは鳴門自動教習所の特権といえる。排気ブレーキを体感するのが目的の一つとなっている。排気ブレーキとはワイパーレバーの近くにあるスイッチを押すと作動し、アクセルを弛めると、排気ポートが閉じて、より強いエンジンブレーキがかかるというものだ。長い下り坂でそれを試した。ところが全く利いている様子がない。教習所に戻ってから教官が動作確認していた。2号車はどうやら動作しているようだ。構内の短い直線で確認した。
 鳴門自動車教習所は全般的に設備、教官とも良好だといえるが、バスの古さは如何ともしがたいものがある。掲示板に貼っている「教習所へのご意見」でも「バスが古いのを何とかしてほしい」の回答が「我々も新車購入を望んでいます」とのことであった。バスともなると中古でも相当な値が張る。なかなか買えるものではない。ただ古いバスで練習した方が、就職先のバス会社で運転が楽になるという側面もあるかもしれない。
 夕食は焼き鯖だった。若い子はこれ、食べるのだろうか、と余計な心配をした。
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↑夕食の焼鯖

 第16日/9月15日
 9時から8回目の教習。1、2コースを周回。教官は「バスの運転手になるんですか?」と聞き、とりあえず必要ないけど将来不安から取ると答えた。和歌山に住んでいると答えると、南海電鉄関係のバス会社は関西大手私鉄5社で最も給料が安いという。
 ここまで方向転換、鋭角などの場内課題はほとんどやらずに来てしまった。教官に不安を表明すると、「課題ができるまで見極めが通らない」と言っていた。なるほど見極めを何度も落ちるわけだな、と覚悟した。
 続いて10時から9回目の教習。これが見極めとなる。まずは場内課題。鋭角で失敗、縦列も失敗、後方感覚では後ろをぶつけた。散々であった。「これは卒検を受けるレベルではないですねえ」と言われ落ち込む。路上は省略した周回コース。左折時、ハンドルを切るタイミングが遅れ、信号待ちのクルマを下がらせてしまった。「これはプロの運転ではありませんねえ」と再びダメ出しされた。クルマを降りる前には、「先は長いと思っておいてください」と言われた。見極めは落ちてしまった。
 再度の見極めは15時からの10回目の教習。2階の鋭角はいずれも失敗。2回目の縦列駐車は脱輪寸前。方向変換は教官の補助ありでどうにか入った。路上は省略された三角コースのみ。クルマを降りる際教官は「とにかく安全確認を怠らないように」と評した。これはまた見極めを落ちたなと思った。しかし教習簿をみると「良」の文字が書いてあった。あれで良?という感じだが、とにかく見極めが通ってしまった。そんなわけで明日は卒業検定である。
 この技量で見極め合格とは、あまり嬉しくない。自分としては見極めを何回か落ちるのを覚悟していたし、その方が技量が上がると思っていた。もしかすると教習所側としては、見極めを何回か落とすよりも、卒業検定を何回か落とした方が、補習も受けることになるので、実入りが多くなるから、そのようにしているのでは勘ぐりしてしまう。しかし見極めは卒業検定を受ける技量にあることを認めるという意味だから、表立っては表明できないだろう。あるいは無責任にも奇跡が起きればと思っているのか。
 夕食後、大型を教習中の合宿生と話をする。65歳と29歳の男性だが、彼らは仕事で必要になって免許を取得しに来たという。筆者のように趣味でここに来ているのと真剣味が違うのか、ここまで教習は一度も落ちていないという。
 検定前の緊張をほぐすという口実で、近くの焼き鳥屋へ飲みに行く。タッチパネルによる注文が目新しい。
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↑注文はタッチパネル(そのうちめずらしくなくなるだろう)

 第17日/9月16日(火)
 卒業検定は12時から実施される。宿舎は10時にチェックアウトし、荷物は教習所に預けることになる。筆者の場合、合否にかかわらず、本日で一時帰宅となるが、もし合宿を続ける場合も一旦チェックアウトし、再度チェックインすることになる。その際は別の部屋になることがある。前年の普通二種の卒業検定はそのケースだった。
 この鳴門の地では卒業検定はそのように相性が悪い。今回は普通二種よりも技量が完璧でないという点で、合格の可能性が低いだろう。
 午前中は時間が空いているので、散髪をするつもりだったが、残念ながら今日は月曜日でほとんど閉まっていた。教習コースの沿道にあって、気になっていた「やまなみ珈琲店」で時間調整。高級な雰囲気で値段もそれなりである。平日の昼間なので高齢者と女性が中心。
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↑やまなみ珈琲店
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↑ウインナコーヒー
 12時前に教習所に着いた。もう合宿料金に含まれている延泊費は使い切っており、延泊料金として18650円を支払う。
 やがて教室で説明が始まった。今日は免許の種類が多く普通車AT、普通車MT、牽引、自動2輪、大型1種、大型2種、普通2種。合計18人の受験者。大型2種は3名。私は3番を引いた。担当する検定員は修了検定で1分退場で不合格にした教官だ。この時点で私はおそらく路上にでることはないだろうと確信した。そう思うと逆に気楽になった。
 13時検定が始まった。まずは右鋭角。切り返しの際、左前輪を脱輪させてしまった。次に、方向転換左。右前輪をラインを踏み脱輪。これで80点以下となり検定不合格が確定した。路上も出ることなく敗退。
 待合室で合宿生の若い男と話をする。鳥取大学農学部の学生さんだ。彼がいうには、鳥取県は109年後には人口がゼロになるという。もともと鳥取は島根と同一県だった。しかし松江市に機能が集中し、鳥取県部分の人口が流出してしまい、その引き留めのために別の県にしたのだという。鳥取県の農業の従事者後継者不足に悩まされており、また西日本は東日本に比べ農業の規模が小規模でコストが高いのだという。
 結局不合格は私だけだった。モニターを見ると大型二種の横に1、2、3の文字が現れ、筆者の番号の3が消えた。
 ショックは大きなものではなかった。これは折り込み済みだったからだ。しかしその後、1回の検定の度に補講費用1万円、卒業検定6480円、宿泊費4680円と交通費5200円がかかってくる。1回約2万5千円。さすがの私も鼻白んだ。
 できるだけ早く卒業する方針に変更し、10月の3連休ではなく、9月末の土日に行くことにした。もし次も落ちたら、その次からは日曜日の日帰りで行こうと思う。つまり落ちたその日曜日に補習を受けて、1週後の日曜日に検定を受けるわけである。これを繰り返せば宿泊する必要はない。今回もそうすることはできたが、やはり、補習と検定の日にちが開くのは、技量の保持上問題があるので、とりあえず次は土曜補習で宿泊、翌日曜日検定にしたのだ。
 15時に撤退。南海フェリーに乗り、定刻18時半に和歌山港着。
 この週の土曜日は仕事なので、挑戦は来週の土日となる。

 第18日/9月27日(土)
 交通費の削減のため、今回の遠征は自転車を分解して船内に持ち込むことにした。自転車をそのまま車両甲板に運び込んだ場合、往復1400円必要だが、それを浮かそうというわけである。
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↑和歌山港駅からフェリーを結ぶ連絡通路には動く歩道がある
 10時、早い目に和歌山港に着いた。久々の自転車の分解だが、手際よくできた。ちなみに自転車はこれまで乗ってきたクロスバイクではなく、トライアスロンをやっていた時に使っていたレース用のロードバイクである。ロードバイクであるから前傾姿勢をとるため高速走行できるが、荷物を背負って走る自転車ではない。ペダルもビンディングシューズで足を固定するタイプで、とても小さく、普通のシューズでは漕ぎにくいものだ。それにヘルメットなしのジーパンで乗るわけだから、外から見ればそうとう可笑しかったであろう。なぜこれに乗ったかというと、クロスバイクは分解した実績がないからである。
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↑乗っていったロードバイク
 12時40分徳島港着。組立時間を含めても自転車を航走してもらうのと大して時間が変わらない。ただ今日は快晴。天候に恵まれている。気象条件が厳しくなると話しは違うだろう。
 修了検定で成功した「Coco壱番のカツカレー」でゲン担ぎの昼食にするかと考えたが、この卒業検定はまだ先が長いだろうということで断念。あれはまさに「ここ一番」で使うべき、今はまだ早い。ということで昼食はケンタッキーフライドチキンになった。これには特にゲン担ぎはない。
 14時半宿舎に到着。管理人のおばさんはすっかり顔なじみになった。
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↑宿舎のフロント
 15時より補習教習。検定で失敗した方向変換を徹底的にやった。縦列駐車は一回のみ。鋭角は一度で成功した。これは自信が持てるようになった。路上は変速と進路変更でミスがあった。方向変換に関してはハンドルを緩く切って後輪を角に近づけ一気にハンドルを切ればいいとわかった。落ち着いてやり、安全確認を怠らなければ何とかなりそうな気がしてきた。
 教習終了後、カラオケに行く。2時間でも3時間でも料金は同じ950円。ならばと3時間いた。
 宿舎で夕食。もう夏休みが終わり学生はいなくなり、宿舎は閑散としている。賄いのおばさんもひとりだけだ。大型を受けに来ている年輩の人ばかりだ。9月に入ってからバスの教習が増えたし、中型二種を取りに来ている人もいて、中型バスが動いている。この中型バスはおそらくこの教習所で一番新しいクルマと思われる。
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↑中央の黄色いのが中型バス

 第19日/9月28日(日)
 よく眠れたはずなのにまだ寝たりない気がする。
 大型二種検定のポイントを某サイトでチェック。うんざりするほど多い。かえって緊張してしまった。
 検定までの時間を散髪に当てることにした。テレビは昨日噴火した御嶽山のことばかり報じている。
 あとは卒業検定を待つのみ。普通MT、普通AT2名ずつ、大型、大型特殊、牽引、大型二輪、普通二輪各1名。そして大型2種は3名。車両は2号車で一人の検定員が1名を見る。筆者は2番くじを引いた。検定コースは2。右鋭角に左方向転換である。
 13時過ぎ検定開始。まずは場内課題。1番の若い男はそつなくこなした。続いて筆者。まず、左方向転換。ここは右より左の方がやりやすい。これ以上なく上手くできた。ところが右にでるときに左前輪が脱輪しかけた。まずいと思ったが、ギリギリはみ出さずにすんだ。続いて後方感覚。ちょっと遠いと思ったがギリギリ入っていたようだ。右鋭角ははじめから3回の切り返しで行くつもりだったので巧くいった。
 続いて路上課題。まずは1番の人の手並み拝見。あまり上手ではないが、大きなミスなく終了した。続いて筆者の番だ。課題は2コース。駅北の三叉路でうっかり3速にいれて発進し、その後も3速発進をやってしまった。あと違法駐車のせいで左が狭すぎて、中央線を踏みかけて、3回検定員にブレーキを踏まれかけたが、ギリギリ踏ん張った。
 どうにか完走できた。検定員からは「免許を取ってから左に気をつけて運転するように」といわれた。どうやら合格の感触である。
 続いて筆者が3番の人の添乗を務める。1番の人にじゃんけんで勝ったのだ。他人の運転を見るのは勉強になる。3番のおじさんは全般的に不安定な運転で、鋭角でも脱輪寸前だった。それでも大きなミスなく完走した。思ったのは他の2名は私と技量的に同程度だとわかったことだ。これは少し安心材料。
 帰還後受験者3名と談笑する。他の種目の受験者は既に全員合格し帰ってしまった。
 1番の人は地元徳島の男性。地元のバス会社に就職が決まっての免許取得。会社から補助をもらうと3年間やめられないというので自費で行くことにしたという。
 3番の人は京都の55歳の男性。電車の運転手をしていて今は無職。就職のために大型2種と牽引の免許取得を目指していた。
 やがて所長が現れて「全員合格」と発表された。みんなにつられて「やったー」と言ってしまった。実は自分としてはあまりにも時間とお金がかかったので安易に喜ぶまいと思っていたのである。
 卒業証明書が手渡され、所長から講話。といってもプロドライバーになることを自覚せよとの簡単な内容だった。去り際私に「よくがんばりましたね」と言われた。
 それぞれの人生の健闘を祈って堅い握手を交わす。いいものである。
 16時ちょうどに自転車を走らせる。
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↑さらば鳴門自動車教習所
 出航までまだ時間がある。その時間を夕食に当てることにした。もちろん祝杯を兼ねてである。阿波しらさぎ大橋の南にある「酒菜和の香」という割烹風の店に入った。雰囲気相応の価格だが美味しかった。
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↑店入口
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↑お通し
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↑よこ(マグロの子)のお造り
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↑太刀魚の天ぷら
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↑サワラの塩焼き
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↑シジミの味噌汁
 お土産は小松島の竹輪。かつて南海フェリーは小松島港に発着していて、船付き場には竹輪の立ち売りをしていたものであった。小松島港には国鉄小松島線が乗り入れ、和歌山港には南海和歌山港線が乗り入れていて、歴とした鉄道連絡船だったのだ。しかし小松島線は1985年に廃線となり、徳島側の発着は徳島港に移った。そこで懐かしい写真を2枚。
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↑フェリーからみた小松島港(1984年9月)
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↑小松島港仮乗降場駅名票
 19時発のフェリーに乗る。80%ほど埋まっていた。椅子席を確保。
 暗い夜道を自転車で走る。22時前帰宅。
 こうして19日間の戦いが終わった。夜道を自転車で走っている時こんなことを考えた。免許取得を目指し徳島に渡った8月はまだ夏の暑い日差しが照りつけていた。しかし今はそこかしこでキンモクセイの甘い香りが漂っている。長い道のりであったが、まずは目的達成。素直に喜ぼう(帰宅後、また祝杯をあげた)。

おわり
大型二種教習日程
コマ(限) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
日/時刻 8am 9am 10am 11am 12pm 2pm 3pm 4pm 5pm 6pm 7pm
8/7(木)             1 2      
8/8(金)   3   4              
8/9(土)   5     6            
8/10(日)                   7 8
8/11(月)   9   10              
8/12(火)       11(1)     12(2)        
8/13(水)         13(3)   14(4)        
8/14(木)           15(5)   16(6)      
8/15(金)   修●         17(7)        
8/16(土) 休養日
8/17(日)   修●                  
  一時帰宅
8/30(土)             18(8)        
8/31(日)   修●                  
  一時帰宅
9/6(土)             19(9)        
9/7(日)   修○       1          
  一時帰宅
9/13(土)             2 3   4  
9/14(日)       5         6 7  
9/15(月)   8 9       10(10)        
9/16(火)         卒●            
  一時帰宅
9/27(土)             11(11)        
9/28(日)         卒○            
  赤字=第1段階 青字=第2段階 (数)=通算延長補習数

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大型二種免許取得記~中篇~ [資格]

・前篇のあらすじ  合宿にて大型2種免許の取得を目指した筆者だが、本人の予想以上に技量が低く、予定していた11日間では卒業できず、それどころか仮免許も手にできない事態となった。そしてせめて仮免許を取得を目指し、合宿最終日の修了検定を迎えた。
大型二種免許取得記~前篇~

 第10日/8月17日
 朝起きたときから体調が悪かった。金曜日に受けた前回の修了検定の方が体調がよかったくらいだ。はじめから体調不良を言い訳にしているようで、今回も落ちるような気がする。
 9時、教室で所長による検定の説明。「日曜日に検定をやってるのは徳島県ではここだけだ」と自慢する。日曜日だというのに検定受験者は3名のみだった。
 今回の検定員は中条静夫に似たH教官だった。H教官はポイントを突いた優しい指導で筆者のお気に入りだ。不合格にした検定員は以後の検定で担当しない。嫌いな教官だと、こちらにも先入観があるのでやらなくてもいいミスをしてしまう。好きな教官の時に通っておかないとダメだなと少しだけ気合いが入った。
 大型2種免許は筆者だけ。女子事務員が監視役として添乗する。
 修了検定は2コース。S字、隘路、路端停止、前回落ちた左折も何とかクリア。これはいけるぞ、とワクワクしながら外周道路へ。しかしここで落とし穴があった。外周道路に出る際、中央線を踏むまいと意識するあまり、左前が脱輪寸前となり、標識にぶつかりかけたのだ。検定員にブレーキを踏まれ、検定中止。つまり今回も不合格となった。前回と違い、ここで降ろされることなく、予定されたコースを走らせてくれた。
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 前回1分で終了した修了検定。今回は3分保ったから大きな進歩だが、とても喜んでいるような状況ではない。
 合否発表の待合室で、所長が近づいてきて、「残念な結果になりましたね。でもかつて4回落ちた人もいるんですよ」と慰めてくれた。「俺は鳴門で伝説を作りに来たんだ」というと、隣にいた見知らぬおじさんに笑われてしまった。
 明日から仕事だ。伝説づくりは中断することになる。今後の段取りとしては合宿は継続し、一時帰宅という措置となる。帰宅している間、宿舎は利用しないので、宿泊費は必要ない。土曜日に補講を受けて、日曜日に修了検定を受ける。この1泊2日の合宿を修了検定の合格まで続けることになる。
 13時、筆者はクルマで帰宅の途についた。鳴門北インターより神戸淡路鳴門自動車道。盆休みの最終日とあってサービスエリアは混雑していた。須磨から京橋まで渋滞。阪神高速湾岸線が須磨まで延長しない限り、この渋滞は解消されないだろう。湾岸線に入ると順調だった。
 帰宅後、ビール付きの夕食を食べながら、両親に顛末を報告。親からは「そんなもの途中で投げ出せ。やめてしまえ。今更バス免許をとってどうする。」と言われた。そんなことを言われるとますます取りたくなってしまった。

 第11日/8月30日
 再度の徳島行きは2週間後となった。今回は自転車で行くことにした。8時半発の南海フェリーに乗る。
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↑南海フェリー
 夏休み最終日に近い。座席は6割程度埋まっているようだ。自転車は車両甲板の後方に置かれるので、最後の方に追い出される。なので船が徳島港に接岸しても客室でのんびりしてたら、船員に促されて、甲板に降りた。
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↑車両甲板で待機
 1時間ほど自転車で走って、鳴門自動車教習所に着いた。
 昼食をマクドナルドでとってから、15時より3回目の補習。2週間のブランクがあるのでまずは外周を2周回る。左折で脱輪、ギアチェンジミス、左ミラー接触をやった。大いに不安を感じる内容であった。S教官はとにかくゆっくり落ち着いてやることとアドバイスしてくれた。
 夕食後、ひとりカラオケに行った。2時間でも3時間でも同じ料金なので3時間歌った。こんなに歌ったのは初めてある。3時間歌うなんてまるでプロの歌手みたいだ。しかし歌は下手なのでお金は取れない。そして今の自分の運転はお金が取れない。ここまでの検定員はそう判断しているのである。そんな中途半端な自分に乾杯して、明日の3度目の検定に挑んだ。
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↑カラオケWAVE

 第11日/8月31日
 通常より多く受けた補習のおかげでバスに乗る機会が増えて、その分経験値が上がっているはず。検定は確かに緊張するものであるが、これも場数を踏むことによって、平常心で挑めるはずだ。それは合格の可能性を高めるものであると思われた。しかし誰が言ったのか知らないが「2度あることは3度ある」という。この伝でいくと3度目の不合格はありうることになる。
 そんなつまらないことを考えながら、3度目となる所長の説明を聞いた。「まれに検定に落ちる方がいらっしゃいます」などという。それは筆者のことだ。まさか2度も落ちている莫迦がいるとは、他の受験者は思いもしないのではないだろうか。
 今日の大型2種は3名の受験者がいる。筆者は2番のくじを引いた。最初に前の人の検定の添乗をやることになる。検定は3コースだ。修了検定は日、火、木、金に実施されるが、どうやら3、2、1の順で割り振られているようだ。
 その男の検定が始まった。なかなか上手い。隘路は入れるのを失敗していたが落ち着いて幅寄せしていた。およそ不合格など考えられない出来だ。あとで聞いたらトラックの運転経験がないそうだ。彼曰く、トラックの経験がある方が教習時間が短いために苦労するという。
 さて筆者の番だ。S字から抜けたとき外に大きく膨らんでしまい、本来検定中止になるところが、「ふらつき運転」の減点ですんだ。隘路は1回で決まった。その後も課題を順調にこなす。あとは坂道発進さえミスらなければ、合格が見えてくる。
 しかしここで落とし穴があった。坂道発進の坂路に入る前の右折で中央線を踏んでしまったのである。検定員にブレーキを踏まれ検定中止。左折は何度も失敗していたので意識していたが、右折も車体が大きい分ちょっと外側をねらわないといけないのにそれを怠っていたのだ。
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 またしても不合格。予想外の展開だ。たださすがに「3度あることは4度はない」と根拠のない自信は芽生えてきた。
 待合室で合否発表。テレビモニターを注目する。「大型2種1、2、3」と表示される。その後、筆者の受験番号2がその後に消え去った。「おっ、お情けで合格か」と淡い期待も一瞬で崩壊した。
 所長に「今後どうなさいますか?」と聞かれた。ちょっとカチンと来て「諦めるつもりはありませんよ」というやや強い口調で返した。所長は「再教育用の座学を受けるか」という意思確認だったらしい。筆者は芽生えた自信を信じることにした。
 カレーライスの昼食を食べて、宿舎をチェックアウト。
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↑昼食のカレーライス
 13時半、南海フェリーは徳島港を出航した。
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↑徳島港の南海フェリー

夏休み最後の日曜日とあって船内は混み合っている。これだけの客があれば廃止するなど考えられない。和歌山の政治家は紀淡海峡大橋の建設を目指しているようだが、そんな維持費のかかる採算の合わないものを作るんだったら、フェリーに補助を出した方がいい。南海地震が発生したら、橋だと崩壊する可能性があるが、フェリーなら岸壁の修復さえできれば復旧できるからだ。南海フェリーを利用しているうちに愛着が沸いてきたようである。
 高校軟式野球大会の準決勝はサスペンデッド延長50回で決着し、同じ日に行われた決勝で、延長を戦った方の高校が優勝したという。筆者の延長戦はまだ決着がついていない。
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↑延長45回でサスペンド時の新聞

 第12日/9月6日
 毎度おなじみの南海フェリー。今回も自転車で鳴門に向かう。10時40分に出航した。さすがに夏休みも終わると乗船率は50%ぐらいだった。
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↑またしても南海フェリーに乗る
 教習所までの道で、天気雨に遭遇。昼食はゲンを担いでCoco壱番のチキンカツカレーを食べた。その心は「ここ一番で勝つ」ためである。もうこんなことをしないと合格しそうにないような気がした。
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↑Coco壱番のカツカレーでゲン担ぎ

 14時半に宿舎に到着した。部屋は一時帰宅の度に替わる。
 雨が激しく降り、教習所まで歩く。15時より補習。ミスったのは木の枝にこすったことと、70度カーブで大回りしたこと。これは何とか矯正可能だ。何だか合格への自信が沸いていた。
 先週と同じように、カラオケに行ってから夕食へ。
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↑本日の最高得点
 ちょっとした希望を胸に明日の検定に挑んだ。

 第13日/9月6日
 天気は快晴。本日の検定の結果も晴れ渡ってもらいたいものだ。
 コース説明は4度目とあって覚えてしまいそうであった。木の枝に当たったら減点はあるのかと質問すると、ミラーが歪んだら検定中止になるとのことであった。
 10時10分、いよいよ、検定が始まった。今日は2コースであった。過去3度の検定、3度の補習の成果を見せるときが来た。
 採点は路肩発進からではなく、最初の直線走路から開始する。まずはS字。これは得意だ。次に隘路。左折隘路は自分の十八番でほとんどミスした記憶がない。次に小回り左折。これを超苦手にしていたが、場数を踏むことによって克服した。その後脱輪しそうになったが、ギリギリ踏ん張る。
 次は路端停止。ポールに近づきすぎ、発進時にリアオーバーハングに接触しそうになった。しかし何とか突破。次に鋭角左折。やや大回りになったもののクリア。直線加速も30キロまでどうにか出せた。坂道発進の前にエンストがあったものの減点のみですんだ。踏切、一時停止も無事通過。中央線を踏んでいたが、ここは黙認のようだ。交差点も信号が青で、余計なシフトチェンジをしなくてもすむからラッキー。障害物を無難によけて、中央線を踏むことなくゴールを目指す。最後の外周道路からの左折も何とかクリア。最後の目標停止も問題なし。
 検定中止がなかったし、あとは持ち点が60点残っていれば合格となる。検定員の講評。「だいぶここまで苦労されているせいか、運転でいっぱいいっぱい。安全確認を怠らないように」というだけで合否については言及しなかった。
 11時10分、ついに修了検定4度目にして合格。モニターは見ていないが、合格を確信している。その後仮免許発行の手続きに入った。
 平日であれば即日で仮免許証が発行されて、1日で3限の路上教習が始まる。しかし今日は日曜日なので、仮免許証が発行ができず、教習は初日のシミュレーションしかできない。
 14時より第2段階教習1限目。教習は2名で、3回目の修了検定で一緒だった男性がいた。彼は検定に合格していたはずだが、2週間のブランクを経て2段階の初日。つまり筆者は追いついてことになる。
 シミュレーションの内容は、前年の普通2種と同様で急いで走っても制限速度で走っても3分しか変わらず、事故の危険性が増すというものであった。逆に3分も違うともいえる。「五十歩百歩」という格言がある。五十歩も百歩も逃げたことには変わりがないという意味だが、五十歩と百歩では五十歩も違うとは考えられないだろうか。
 これで本日の教習は修了。
 16時徳島港着。6回乗ると1回無料になるポイントカードが自転車バイクでも適用されることを知る。ウェブサイトには徒歩のみとしか書いていないし、そもそも和歌山港にはポイントカードの掲示はなかった。もしポイントカードの存在を早く知っていれば、次回の帰りのフェリーが無料になったのに残念である。
 徳島港は車両で乗船する場合はドライブスルーとなる。そこでポイントカードを押してもらった。ポイントカードは現金で乗船したのみ適用と書いているが、窓口氏に聞くとカードでも可という対応だった。一貫性がない。
 フェリーから下りると、自転車のハンドルが急に重くなった。前輪がパンクしていた。フェリーの桟橋の段差を乗り越える時に、チューブがリムに挟み込んだようだ。細いタイヤのクロスバイクに重い荷物を背負って乗る場合は、段差は腰を上げてゆっくりと降りねばならないが、それを怠っていたのだ。仕方がないので自転車を和歌山港駅の駐輪場に停めて、電車で帰宅。夕食後、クルマで自転車を回収しに行った。
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↑自転車を置いて電車で帰宅
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↑あとでクルマでパンクの自転車を取りに行く
 帰りにスーパーに寄り「甘くないキレ味」「甘味料ゼロ」「プリン体ゼロ」のチューハイを買った。別に「甘くないキレ味」でなくてもよかったのだが、もちろん理由は祝杯である。

 こうして4度目にして修了検定を突破した筆者。しかしまだまだ困難は続くのであった。大型二種免許は「甘くは」なかったのである。
つづく

大型二種免許取得記~後篇~
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大型二種免許取得記~前篇~ [資格]

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 10数年前のとある日、乗客が筆者一人のホテルの送迎バスに乗ったとき、Mr.オクレに似た運転手が突然このように話しかけた。
クルマは大きければ大きいほど運転しやすいんです」。
「そんなアホな」と思った。クルマは大きければ取り回しがしにくいに決まっているではないか。筆者はそのように応えると、彼は否定した。昔のことなのでどういう理由で否定したのか忘れたが、とにかく否定した。それ以来、筆者はその言葉が忘れられず、時を過ごした。
 筆者は前年に普通二種免許を取得し、中型免許を8トン限定解除をした。このときの顛末は既に書いたとおりである。
中型限定解除合格記
普通2種免許取得記

中型トラックは意外に運転しやすく、本当にあの運転手のいう通りかもしれない。そう思った。そうであれば、大型免許を取りたい。どうせなら、既に普通二種免許を持っているのだから、大型二種免許を狙おう。実は普通二種免許はAT限定で、運転代行業をするにはちょっと残念な資格となっていた。大型免許はAT限定はないから、大型二種を取れば、AT限定も自動的に解除される。
 大型二種免許は盆休み利用の合宿免許とした。教習所は徳島県の鳴門自動車教習所。ここは前年の普通二種免許でお世話になった。とりわけこの教習所の指導や宿舎の設備がよかったわけではないのに、同じところにしたのは、周辺の道路事情がよくわかっているからである。大型二種は路上教習がある。そのとき土地勘があればコースを覚えやすいし、その分運転に余裕が生まれるだろう。合宿免許の場合、場内教習は一日2時限、路上教習は3時限進む。中型免許を持っている筆者は、場内は最短10時限、路上は9時限だから、卒業検定を含めて最短9日間で取得可能だ。しかも普通2種を持っているので学科はなし。教習料金は約22万円。これには3度の食事と、10回の補習料金、2日間の延泊費用が含まれる。
 普通二種免許の時と同様、「合宿免許ワールド」に申し込んだ。
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 ただよく考えてみると、大変な無駄使いのような気がしてきた。仮に免許を取ったとしても、乗務未経験で50歳前の男を雇ってくれるバス会社があるとは思えない。タクシーや運転代行のできる普通2種免許で十分といえた。でも大きなクルマを動かしたい。そして例の運転手のクルマは大きい方が運転しやすいというあの言葉が後押しになって、免許取得を目指す気持ちになったのである。

 第1日/2014年8月7日
 さて免許の合宿教習は鳴門で行われる。和歌山から鳴門に行くには、南海フェリーに乗るのが最短距離だ。前年に普通二種を取りに行ったときには、家から自転車に乗ってそのままフェリーに乗って、さらに1時間ほど自転車を走らせて鳴門に向かった。これだと片道2700円で行ける。ただしクルマを乗せると話しは違う。筆者の愛車フィットは4m未満とはいえ7800円に跳ね上がる。これにわずかとはいえガソリン代が必要だ。あとは神戸淡路鳴門自動車道を経由するルートがある。距離的には逆Uの字を描く大回りとなるが、自動車は船より高速で港の待ち時間もない。走行時間は約3時間とフェリーよりわずかに速い。高速道路の料金は7250円と高いがETC割引があって4110円となる。走行距離は約200kmだからおよそのガソリン代2000円を加えると、フェリーよりもわずかに安くなる。ただし神戸付近の渋滞でイライラするのと、自分が運転しなければならないので疲労してしまうのが難点だ。
 今回は自動車で行くことにした。合宿の宿舎はホテルではないので、洗濯は自分でしなければならないし、タオルや寝間着が備えられているわけではないから、こちらで用意しなければならない。9泊10日と荷物が多いことも決め手になった。
 この日と次の日は会社に有給休暇を申請した。筆者の旅行好きは社内で知られているので、周りから「どこ(国)に行くの?」と聞かれ、「バスの免許を取りに行く」と答えると、あきれる人もいれば、激励してくれる人もいれば、何の反応もしない人もいた。
 阪和道、阪神高速湾岸線、神明道路、神戸淡路鳴門自動車道を走る。途中、摩耶から月見山の間で渋滞していて、間に合わないのではと焦ったが、淡路島内はガラガラで遅れを取り戻した。
 集合時刻11時の30分前には鳴門自動車教習所に着いた。前年に来たところなので、懐かしいというよりも、今年も来たかという感慨にふけった。
 まずは深視力検査とカリキュラムの説明。最短で9日後の8月15日に卒業となる。前回の普通二種の卒業検定では一回落ちたので、今回もそうなるだろうと思い、17日の日曜日には卒業検定を突破し、歓喜の凱旋をあげることを予想した。
 次に宿舎に向かった。前年もここに来ていたので、管理人による説明は一切省略された。部屋も前年と同じであった。
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↑去年と同じ部屋
 適性検査のあと、早速教習が始まった。まずはバスのドアの開け方。旅客用の前扉から乗り込むわけだが、エアが残っている場合はスイッチを入れればドアが開く。そうでないときは、手で押せば開く。セキュリティ性はきわめて低い。次に点検の仕方。タイヤに石が挟まっていないかチェック。後輪はダブルタイヤなのでパンクしているかどうか見にくいが、きっちりチェックしないと致命的だと説明された。エンジンルームの簡単な説明。バスはブレーキとドア開閉に圧縮空気を使うのでコンプレッサーを備えている。この点検はこの初回で教えられただけで、その後は省略となった。
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↑教習用のバス
 緊張の1コマ目。まずは教官が手本を見せてくれる。外周内周を右回り左回り、路側停止。さすがに慣れたものである。続いて筆者の運転。こんな大きいクルマを運転するのは無論初めてである。アクセルをどれだけ踏んだら動くのかわからないし、ブレーキを普通車のつもりで踏めば急ブレーキだ。変速機はフィンガーシフトである。これは変速レバーの動きを電気信号に変えて、圧縮空気でギアを動かす仕組みである。非常に軽いがしばらく保持しないとニュートラルに戻ってしまう。これがない頃は運転席から後部のエンジンまで長いロットで変速操作していて非常に力のいるものだった。パーキングブレーキはエア式ではなく機械式だった。この方が坂道発進はしやすいだろう。とにかく初回は動かすだけで精一杯だった。
 連チャンで2コマ目。さっきに加えてS字と坂道発進と目標停止が加わる。目標停止はバスの後部ドアに合わせて停めることである。坂道発進は思ったよりも簡単だ。ディーゼルエンジンはパワーがあるので、余程下手をしないとエンストはしない。
 テレビを見る。地元の朝ローカルテレビなのか鳴門テレビというのがある。鳴門1中と鳴門2中のバスケットボールの試合を中継している。カメラは1台のみで、アナウンスや解説もない。地元の人しかわからない番組だが、ローカルテレビ番組の未来の方向性としてはおもしろいのではないか。

 第2日/2014年8月8日
 台風が近づいているのに晴れている。
 9時より3コマ目。課題としては隘路と鋭角が加わった。隘路は中型トラックで割と得意にしていた。しかし鋭角はかなり悩んだ。一番戸惑うのは、バスの運転席は前輪よりも前にあるので、コースを完全にはみ出さないと回れないことだ。
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↑隘路コース
 11時より4コマ目。坂道発進、左鋭角が上手くできなかった。というより車体感覚がつかめていない。左折も脱輪することが多い。左後ろの脱輪を避けようとすると、右前輪がセンターラインを踏んでしまう。これは右側通行と判定され検定では中止となる。教官から「このままでは危ないですよ」という趣旨のことをやんわりといわれた。
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↑鋭角コース

 第3日/8月9日
 台風は現在種子島。時間によっては雨が強くなってきた。
 9時に5コマ目。左折は上手くいったが、変速がすんなりいかなくなった。鋭角はどうしても上手くいかない。タイヤをギリギリまで路縁に寄せるあまり脱輪させてしまう。切り返し1回で進むのは無理だ。2回を前提にこの関門を突破することにした。
 次の教習予定は15時からであったが、台風が近づいているので前倒しになるとのことで所内で待機した。合宿生はこんな時に優先される。割を食うのは地元の教習生で、予約した時間に乗れなくなったりする。だから教習所によっては合宿生と地元生と軋轢を生むことがあるという。
 次の教習は12時に指定された。望むところだ。6コマ目は雨の中行われた。さっきとあまり進歩してない。
 この状況を何とかしたいので、本屋へ大型免許の本を買いに行く。残念ながらトラックを対象にした大型1種しかなかった。仕方がないのでそれを買った。結果的にはその本はあまり役に立たなかった。
 それよりもネットで検索した大型2種合格体験記の方が役に立った。だが、だいたいの人はあまり苦労せずに突破しているようで、試してみるべき策がいくつか見つかったものの、同じ苦しみを味わっているものは少ないらしかった。

 第4日/8月10日
 2時頃、南側の窓を叩きつける雨で目が覚めた。風が建物が揺れている。6時、台風は高知県安芸市に上陸。こっちに向かっている。
 10時半、雨風が収まったので外出。教習所のコースは水浸し。道路には魚の死骸が転がっている。野ざらしの駐車場に置いていた自分の車が心配だったが、無傷で、安心した。
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↑台風に襲われた教習所
 17時、7コマ目の教習。今回は鋭角を徹底的にやった。2回の切り返しでなく、3回でいくことを提案された。これを受け入れることにした。隘路は左側進入が上手くいかない。タイミングが早いのだろうか。
 18時、8コマ目の教習。中型限定解除では難なくできた方向転換は後輪の位置の把握が難しく、縦列駐車は脱輪させてしまった。教官は遠慮がちに、まだ大型2種のレベルに達していない、普段クルマに乗っていないのでは、と図星な指摘をされてしまった。
 この時点で4コマつまり2日分遅れている。このまま順調にいっても卒業検定は帰宅予定の日曜日ギリギリに追い込まれた。
 合宿教習が予定通り消化できなかった場合に備えて、地元の自動車学校に編入したらどうなるか調べてみた。入学金だけで7万5千円もかかる。しかも合宿の返金はほとんどない。これなら延泊と交通費を払ってでも鳴門に通った方が安い。
 なんだか気分は落ち込み、ここに来たことを後悔しはじめた。大型を甘く見ていた自分が悪い。

 第5日/8月11日
 よく眠れた。しかし運転への不安からか元気がない。
 すっかり苦手意識が芽生えてしまい、9時からの9コマ目、11時からの10コマ目は散々だった。だんだん焦りだしてきた。そうするとよけいにミスするのだ。
 昼からクルマで1時間飛ばしたところにある鴨の湯へ行く。天井がテントになっている。観光客より地元客が多い。台風の水害のことが話題になっている。
 バスの車庫入れの練習のできるスマホアプリを探す。スクリーンタッチではリアルな操縦性が再現できないため、ゲームレベルにとどまっている。つまり適当なのはないのである。
 一番役に立ったのは、下の2D自動車シミュレーターである。ただしキーボードを使うのでスマホでは動作しない。
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↑2D自動車シミュレーター

 第6日/8月12日
 11時より11コマ目。この教官は前年普通二種免許の卒業検定を受けたときに、筆者を不合格にした人だ。そんな苦手意識があったので、あまり進歩しなかった。方向変換と縦列駐車。半クラッチを上手く使え、クラッチをあげるのが早すぎる、急ブレーキをするな、やたらと2速に落としてだらだら走るなと指摘された。練習しているうちに今やっていることはできるようになるだろうが、お客さんを乗せる2種免許では、それに加えてスムースな運転をする必要があると述べた。
 また普通免許からいきなり大型2種を取りに来た人は、だいたいが車幅感覚がつかめず、第一段階に時間がかかるという。これは慰めの事実だろうか。
 今回も復習項目として残ってしまったので、合宿予定最終日の卒業検定の可能性がなくなった。
 15時より12コマ目。もう予定より6コマ遅れている。方向転換を徹底的にやった。クルマをコーナーから1mくらいの位置に寄せ、バックする。コーナーが近づいたら、ハンドルを1回転させて後輪を縁石に近づけ、角を踏んだら一杯にハンドルを切ること。縦列駐車はまっすぐにする際、右側延長線が車庫の後ろ左角から1m外側を目指すこと、後輪が駐車スペースの道路側延長線に入ったら、ハンドルを右一杯に切ること。これと幅寄せ、切り返しを組み合わせれば、たぶん見極めは大丈夫だろうと、教官は復習項目を消してくれた。これでようやく前進できた。実に3日間のロスとなった。
 大型二種の教習内容については以下の動画が詳しい。リンク切れは御容赦の程を。


 第6日/8月13日
 12時より14コマ目。修了検定3コースで練習。今回の教官はいつも車検でお世話になっている自動車整備工場のアンチャンに似ている。名前も偶然にも同じだった。とても教え方が上手い。
 彼曰く、まずセカンドギアで引っ張りすぎて円滑な運転ができていない。ハンドルを固定すればカーブでギアチェンジしても減点はないので積極的にあげること。それと右折は基本3速、左折は2速かクラッチを踏んで減速すること。中央線踏みが2回あった。左側にできるだけ寄るつもりで。
 個人的にはクラッチの踏むポイントをつかめていない。普段はAT車しか乗っていないので、クラッチは無縁の生活をしている筆者のこと。このあたりは初心者と全く変わらず、これから技術を作っていくところだ。
 14時より15コマ目。今回も修了検定3コースを3回回った。中央線を1回踏み、隘路はかろうじて収まった。最初のハンドルを切るタイミングは良かったのだが、戻すタイミングが早すぎて、車体が曲がってしまった。その場合の修正技術が必要だ。いつも同じタイミングでハンドルを切れるとは限らないからだ。
 ともかく、大甘の判定で次の段階に進むことになった。

 第7日/8月14日
 14時より16コマ目。今回はシミュレーション。薄暗い部屋に1500万円はするというシミュレーター2台置いている。昨今の台風で雨漏りしていて、教官は片づけに忙しい。雪道と悪路をシミュレーションで体験。本来は複数人で行う教習なので、時間があまり、残った時間は教則本を読んで自習となった。
 宿舎に戻り、受付の女性と話をする。和歌山の有田に友達がいるらしい。フェリーで渡るのが楽で早いのだが、運賃が高い。なので高速道路を使うのだが、淡路島内のまたーりとして道路と阪神間の渋滞のギャップが激しすぎるといっていた。このままでは予定通り卒業できないというと、台風を言い訳にして会社に休みをお願いしたら、とお気楽な回答をしてくれた。
 16時より17コマ目の見極め。これは修了検定受けて合格する力量があるかどうか見極める課程だ。教官は海坊主のような禿頭だった。発進時、いきなり安全確認を怠った。「検定を受けるレベルではないですねえ」
 厳しい言葉をかけられる。S字カーブに入る前の減速が十分でない。「今ので10点減点!」。修了検定3コースを2回回り、修了検定の課題にはないが卒業検定に必要な縦列駐車と方向転換をやった。
 大型免許の修了検定は100点満点の60点で合格と緩やかだ。即中止になるような決定的なミス、安全確認と中央線を踏まないように気をつけてと忠告してくれた。

 第8日/8月15日
 さあ、修了検定に挑む。張り切っていたので8時半には教習所にいた。大型2種は筆者だけで、普通ATは合宿生らしい若い男女が2名。検定員は基本的に抽せんで選ばれるのだが、先入観をなくすために、見極めをした教官と、過去に検定を不合格にした教官は除外される。検定の説明は教習所所長が行う。「あなた方は『これなら検定は合格できる』ということで見極めを通ってきました。だから普段通り実力を発揮すれば検定は合格できます。ただ、まれに検定で落ちる方がいらっしゃいます。その場合はほとんど検定員がブレーキを踏むなど危険行為を犯した場合です。どうか自信を持って検定に挑んで下さい。
 ほとんど落ちないのなら安心だ。しかし筆者は前年、普通2種の卒業検定に落ちた経験がある。技術的に完璧とはいいがたい状態で、合格点が60点と低いのが望みだ。果たしてどんなものかと疑心暗気だった。
 外は雨が降ってきた。修了検定は3コース。運転免許の検定は不正防止のために、検定員の他に1人同乗する。大型2種は筆者だけなので、教習所の事務員が乗り込んだ。
 10時10分検定開始。運行前点検はやらなくてもよく、そのまま乗り込む。ミラーを触って調整するふりをする。緊張の中、無事に発進。しかし2度目の左折をしたところで、中央線を踏んでいるという理由で、ブレーキを踏まれた。これは検定中止を意味する。検定が始まってから1分も経過していない。この修了検定にはS字や隘路、坂道発進、路端停止などの課題があるのだが、そのいずれの課題もすることなく退場となった。思いもよらない結果で顔面蒼白となった。
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↑修了検定の顛末
 技術的はに左折は危なかったのは確かだ。しかしこんな短時間で終わるとは予想もしなかった。
 ロビーで結果の発表を待つ。不合格はわかっているが、次の補修講習を予約する必要があるからだ。
 宿舎に戻るとしばらく脱力した。実際にバスに乗って練習できないから、心の準備をしておきながら、この結果だからトラウマになりそうで、またこんな面倒なことになるなら合宿免許なんてやめればよかった。その費用をつぎ込んで海外旅行に行けばよかったなどと思いはじめた。
 14時半、早い目に教習所に行き、一時帰宅について相談した。次の修了検定は2日後の日曜日で、仮に合格しても2段階の1コマ目を消化できるだけだ。月曜日には会社に戻らねばならない。ここまでの教習料金を払い戻して、地元の自動車学校に転校するという手もあるのだが、入学金だけでも約5万円必要で、合宿料金自体割安に設定されているので、正規料金で控除されると、ほとんど残金はない。この鳴門に通う形になっても、一時帰宅した方が安くなることが判明した。1泊3食付きで8400円の宿舎代は別途必要だ。
 15時、補講開始。日曜日に予定される2コースを重点的に練習した。いきなり左折で中央線を踏んだ。踏まないようにするには、軽くハンドルを切って、縁石に近づけていき、コーナーに来たら、一気にハンドルを切ること。ハンドルを戻すのが速すぎると、中央線を踏む羽目になる。右折時は車体の左前を外へ外へ持っていくこと。そうしないと中央線を踏んでしまう。
 もう一回補講を受けたいぐらいだが、それはできないことになっている。
 夜、近くの焼鳥屋で一杯。合格のお祝いのはずが残念会となってしまった。一人でカウンターで飲み、捲土重来を誓った。

 第9日/8月16日
 この日は講習がなく、一日自由行動だ。クルマに乗ってきてるので、観光することにした。それも遠くへ。金比羅さんと祖谷温泉をめざすことにした。金比羅さんは特に船乗りの信仰が厚い。別に船乗りでなくても、1400段もの石段を登った先にある社からの眺めは有名で、香川県を代表する観光名所だ。筆者は一度行ったことがあるのだが、御神印をもらっていないので、もう一度行くことにした。
 祖谷温泉は個人経営のケーブルカーで川べりの露天温泉に降りるという、日本でも唯一の温泉である。温泉マニア、乗り物マニアの筆者としては見逃せないスポットだ。
 こんなところに行けるのは修了検定に落ちたおかげだ。まさに傷心旅行となったわけだ。
 本題と外れるので、簡単に。
 まずは金比羅宮。駐車場の料金は神社に一番近いところが700円で1500円のおみやげ購入で無料。少し離れた古道具屋がやっている駐車場に停めた。一日300円。
 1400段の石段を登って金比羅さんに参る。夏場のことに女の人の短いスカートからパンツが見えそうで目のやり場に困った。
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↑こんぴらさん
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↑珍しい月毛の馬
 さぬきうどんの昼食後、弘法大師ゆかりの善通寺へ。四国88カ所の名刹とはいえ、金比羅さんより参拝者が少ない。
 次に祖谷温泉へ向かう。正確には祖谷温泉ホテルである。阿波池田からの道は険しく、舗装されているとはいえ、クルマの対向もできないような狭い道。しかし路線バスが通っているのに驚く。しかも人も住んでいないようなところにバス停がある。
 道は細いがホテルは立派だ。建物の高さはないが質が高そう。
 1500円で河原の露天風呂と展望浴場が入れる。
 早速ケーブルカーで降りる。ケーブルカーはほとんど45度のエレベーターである。発進ボタンは乗客が押すことになっている。
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↑自家製ケーブルカー
 外人客がいる。最近はインターネットの口コミが普及しているので、穴場のような変わったスポットに外国人が出没するようになった。
 川の流れは濁流となっている。すごい迫力だ。露天風呂は源泉掛け流し。39度と湯温が低い。しかし気泡が泡立つ炭酸泉で肌がすべすべになりそうだ。すばらしい泉質。
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↑露天風呂の脇の濁流
 展望風呂はその名に反して展望はよくない。身体を洗うための風呂である。ケーブルカーの乗客からは一瞬だが丸見えとなる。
 あとはもう帰るだけだ。19時頃には宿舎に戻った。気分転換としては完璧だ。
 明日の修了検定のことは全く考えていない。考えても無駄だからだ。
 さて、2度目の修了検定の結果はどうなったのか。

大型二種免許取得記~中篇~

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