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長崎新幹線は最終的にはフル規格が望ましい [鉄道]

 長崎新幹線の全線フル規格化について佐賀県が反対の意思を示している。筆者は最終的には長崎新幹線は全線フル規格にする方がいいと考える。
 まず長崎新幹線の建設される経緯について説明する。なお長崎新幹線は通称であり、本来は全国新幹線整備法に基づく、九州新幹線西九州ルートなのだが、この記事では長崎新幹線で統一する。
 長崎市は人口約42万人。江戸時代はオランダ貿易の基地として発展し、アメリカ軍により原爆を投下された都市としても著名である。明治以前では福岡以上に重要都市であり、坂の多い独特の景観は日本離れしており観光資源にも恵まれている。現状、九州第一の都市福岡とは特急かもめで2時間弱。それが新幹線なら50分で行ける。さらに大阪までは推定3時間半と日帰り圏に入り、新たなビジネス需要を喚起できる。つまり長崎県としては新幹線はフル規格にしてこそ意味のあるものといえる。
 それに対して佐賀市は人口23万人。ビジネス、観光とも長崎とは大きく見劣りし求心力に欠いている。現状福岡とは特急で45分で結ばれている。福岡とは距離が近いためフル規格になっても時間短縮効果は10分程度。大阪直結の意義もさほどではなく、多額の建設費のかかるフル規格には当初から否定的だった。
 そこで両県の主張を調整し、長崎新幹線のうち、時間短縮効果を見込め観光需要を喚起できる、佐賀県の武雄温泉と長崎の間のみフル規格で建設し、九州新幹線の新鳥栖ー武雄温泉は在来線を活用することにした。当初は武雄温泉で在来線の特急と長崎新幹線を同一ホームで乗り換えられるようにし、将来は新幹線の標準軌と在来線の狭軌で車軸の幅を変えられるフレーゲージトレインを投入して、山陽新幹線に乗り入れることにした。これにより長崎側はフル規格に比べ時間が延びるものの大阪直通を果たせ、佐賀県はフル規格の建設費用負担の必要がなくなるという一石二丁の結論を導き出した。
 しかしフリーゲージトレインの開発は難航した。狭軌の急曲線と新幹線の高速運転を両立するのは難しく、長期試験での不具合の解決策は見つからないままだった。さらに山陽新幹線を運行するJR西日本は軌間可変機能で車体が重くなるフリーゲージトレインの運行に難色を示した。フリーゲージトレインを開発するなら、東急と京急あるいは近鉄の橿原線と吉野線など低速の路線で実績を積み上げてから、新在直通に取り組むべきなのに、いきなり難題に取り組んだのが失敗の要因であろう。
 長崎新幹線を運行するJR九州はフリーゲージトレインの導入を諦めた。建設中の武雄温泉と長崎間は狭軌の高速新線にして、博多から乗り換えなしで行けるようにする方法も検討されたが、長崎県はこれが固定化されてフル規格が闇沙汰になるのを恐れたのか、フル規格で建設し、武雄温泉で在来線に同一ホームに乗り換えと当初の構想通りとなった。
 しかし長崎県としてはいつまでも乗り換えを強いられるのは、利便性の低下に繋がる。対福岡で考えた場合、距離が短いので高速バスとも戦わねばならず、しかも在来線の走行距離が長いので時間短縮は小さなものだ。長崎県にとっては大阪直通を狙う意味からも、何としても全線フル規格での開業が譲れないところであった。
 与党の検討委員会は全線フル規格の開業が適当との結論を出した。前述の在来線規格の高速化や、武雄温泉ー新鳥栖間のレールの幅を広げるミニ新幹線化は長期的な費用対効果が小さいとして退けられ、佐賀県に建設費の負担を求めた。
 納得しないのは佐賀県である。国のフリーゲージトレインの開発失敗したために600億円もの負担することはできないとして、与党の要求をはねつけた。しかしこのまま乗り換えが強いられるのでは長崎市の衰退を招きかねない。
 筆者の結論は長崎新幹線は全線フル規格で建設するのが適当だと思う。恩恵が薄い佐賀県は建設費の負担を半分にし、残りを利益を享受する長崎県とフリーゲージトレイン失敗の責任を取って国が負担する。佐賀駅には新幹線駅を設ける余地はないので、現駅の南方に単独の新佐賀駅を設置する。建設費の低減を図るため、人口密集地を避け、極力直線で結べるよう路線設定する。新佐賀以外の駅は設置しない。利便性が低くなる点に関しては、武雄温泉ー佐賀-鳥栖間はJR九州の経営を維持する。佐賀から博多方面は基本的に在来線、急ぐ時や博多以遠の利用なら新佐賀から新幹線と使い分けることができる。佐賀県の武雄温泉、嬉野温泉も関西と直結するので観光面でも好影響があるだろう。長崎県の経済効果は言うまでもないだろう。同一ホーム乗換の設備は維持して佐世保方面の利便性を上げるのもいい。
 また南方に設けられる新佐賀駅にはもうひとつ壮大な夢を描ける。それは佐賀空港への延伸である。いまでこそ佐賀空港はただの地方空港だが、市街地にある福岡空港に比べ、24時間稼働が可能で拡張余地もある。旅客についてはわざわざ高い新幹線運賃を払って福岡、長崎に行くとは思えないけど、将来貨物輸送するのであれば状況が変わってくる。これはJR九州元社長が言及していたので絵空事ではない。ただ佐賀空港の貨物便は採算が合わずに撤退しており、あくまで遠い将来の備えだ。
 さらに九州新幹線の久留米側から佐賀方面に短絡線を設けることにより、熊本や鹿児島から長崎への直通列車を設定できる。それぞれの都市は人口を抱えているので潜在利用はあるのではないか。
 長崎県、佐賀県、国で三方一両損で長崎新幹線のフル規格化を進めるべきだ。
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