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ソフトボールを冬季オリンピックの種目に [スポーツ]

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 新型コロナウイルス騒動で一年延期された東京オリンピック2020で、ソフトボールと野球が暫定的に復活し、両方とも日本が金メダルを獲得するという大団円となった。しかしこの二つの競技は2024年のパリ五輪では採用されないことが決まっている。その次のロスアンジェルスとブリスベンは野球の母国アメリカとプロリーグもあるオーストラリアにあるので、復活の可能性があるが、それ以外の地域が開催地になったら採用されないだろう。
 野球とソフトボールの問題点は、アマチュア段階を含めて実施している国が限られていることだ。プロ興業として成り立っているのはアメリカ、日本、韓国、台湾、メキシコなど10数カ国だけだし、これはサッカーに比べて断然少ない。野球はルールが複雑な上、専用の競技場とバットやグラブなど高価な道具が必要で、プロ野球で使用している硬式球はその名の通り硬く初心者には危険を伴うものだ。ルールを知らないIOCの委員が野球の試合を見ても、全く面白くないというのは当然だ。2004アテネ五輪、2008北京五輪では正式種目採用されたが、せっかく作ったスタジアムはオリンピックが終わるとすぐに朽ち果ててしまった。これでは開催国にとって負担が大きすぎ、無駄なものを作ってしまうことになる。
 野球については、オリンピックが開催される7月から8月というのはプロ野球リーグの真っ盛りであり、特にアメリカはこれまで五輪にプロのトップリーグであるメジャーリーグから選手が派遣されたことはない。選手にとっても怪我のリスクがあることからできることなら避けたいだろう。何しろオリンピックはメダル獲得の名誉だけで、IOCからは一切賞金は支給されない。もし怪我をしてレギュラーシーズンに支障が生じれば給料や選手生命に影響するからだ。それにサッカーのFIFAのような世界を統括する組織は近年まで存在せず、日本ではプロ野球、実業団、大学野球、高校野球と主催団体がそれぞれ別個であり、統一された組織もない。これはアメリカも同様だ。組織がピラミッド状になっておらず、それぞれに互換性のない王者が存在する。プロ・アマが混在するサッカーの天皇杯のようなものは野球にはなく、日本代表チームが常設されているわけでなく、大会毎に招集されているのが現状だ。国別対抗戦としては2006年からMLB選手や日本のプロ野球選手も参加するワールドベースクラシックが始まったが、サッカーのワールドカップと比べて、本気度や権威、伝統もまだまだこれからというところだ。
 ソフトボールはリクリエーションとしては野球よりも普及している。ボールが大きくて身体に当たってもそれほど痛くなく、敷地も野球よりも狭くてすむからだ。日本では男女ともソフトボールは実業団リーグがあるほどだ。つまり企業で仕事をしながら、その企業の宣伝活動としてソフトボールができるわけで、興業として客を呼ぶには弱いソフトボールにとっては現実的な活動だといえる。男子は野球のうまい子は高校野球から直接プロに入る道が用意されているので、ソフトボールを実業団でやっている男子は野球の競争からはじかれた人たちがやる余興に近い。しかし女子は危険防止のため高校野球の選手として登録できない。東京六大学や独立リーグではその制限はないので何人か選手がその壁に挑んだものの、やはり男子と混ざるとスピードにおいて見劣りする。したがって女子はソフトボールを目指し、男子は野球を目指すという図式ができあがった。
 さて会社がお金を出してスポーツ選手を抱える以上、それの見返りとして要求するのは会社の宣伝である。つまり競技団体の主催する大会で好成績をあげることにより、メディアに取り上げられ知名度が上がるという構図である。好成績といってもソフトボールのようなマイナースポーツの場合優勝しないと一般紙では取り上げられない。ある意味プロよりも厳しいといえる。
 しかし一般紙あるいはスポーツ紙にしても優勝しても記事は新聞の片隅。やはり国民の注目を集めるオリンピックが最高の宣伝効果だ。例えジャパンのユニフォームを着ていても、選手の所属会社名がメディアに頻繁に掲載されるからだ。したがって、プロ興業として成立している野球やサッカーを除き、オリンピック選手で活躍することが実業団スポーツにとって最高の宣伝となるわけだ。
 そういう意味でソフトボールがオリンピック種目に残ることは実業団の切なる願いといえる。しかし常に野球とセットになっていたソフトボールが夏季オリンピックで正式種目で復活することは前述したように極めて困難だ。
 そこでソフトボールを冬季オリンピックの種目として採用を推進するのである。さすがに雪と氷の屋外でソフトボールを行うのは無理だ。しかし日本でも雪の降らない地域では冬でも屋外でソフトボールをやっている。冬季オリンピックが開催している2月上旬はプロ野球チームがキャンプインしている。それはトレーニングの段階だが、早いところでは紅白戦もやっている。ソフトボールの普及している国ではほとんど2月は屋外でできるだろう。
 問題はいうまでもなく、冬季オリンピックの開催都市では屋外でソフトボールは現実的ではないということだ。何らかの屋内競技施設が必要だ。ソフトボールは元々アメリカで冬場に屋内で野球をするために工夫された競技なので、実は冬季にふさわしいスポーツなのだ。少し大きめの体育館であれば、観客の問題は別にして競技はできるはずだ。日本には出雲ドームや大館樹海ドームなどソフトボールはもちろん軟式野球もできる室内競技施設がある。これに少しばかり3000人ほどの観客席を設け、興業面を考えて開催都市の中心部、あるいは少し離れた練習施設として郊外に建設すれば、後利用も可能だ。
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↑出雲ドーム
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↑大館樹海ドーム
 他の競技との共用を考えるなら、スピードスケートが最も適している。スピードスケートの競技施設は平成以降のオリンピックは1992年のアルベールビルを除いて全て屋内リンクで開催しており、稼働率を上げるため、リンクの上に蓋をして、催し物など多目的に使えるようにしていることが多い。スピードスケートのトラックは一周400mで陸上トラックよりも狭いものの、ソフトボールができる広さを確保することができる。スピードスケートからソフトボールに段取り替えに1日、練習期間を1日、オリンピックには8チームが出場するとして、準々決勝、準決勝、敗者復活、3位決定戦と決勝戦を行うとすれば、6日間の競技日程となる。
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↑左・スピードスケート、右・催し物@エムウェーブ
 ただ問題は近年団体戦のマススタートやパシュートなどスピードスケートの種目が増えており、ほぼ大会期間中の競技日程が埋まっていることだう。基本的に2人ずつの周回でタイムを争うスピードスケートは距離が長くなるほど時間が掛かる。時間短縮は容易ではないが、室内競技で天候に左右させることもないし、時間も前後にずらせば、何とか6日の捻出は可能ではないか。
 もちろんベストは専用の競技場で実施することだ。オリンピック規定では競技の過半数以下は開催都市以外で実施できる。いささか邪道ではあるが、ソフトボールは雪の降らない温暖な地域での開催が可能だ。それなら屋根付きに拘る必要がないし、スピードスケートに遠慮することはない。ソフトボールはマウンドがないため、スタンドの見やすさなどを考慮外にすれば、陸上競技場でも仮設は不可能ではない。陸上競技場ならある程度の人口の都市ならば既に存在するし、後利用にも困ることはない。
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↑ロス五輪の野球は元陸上競技場で開催された
 もっともヨーロッパには競技場の問題を解決する以前に、ソフトボール競技の普及という大問題が立ちはだかっている。ソフトボールとは全く違うが、ヨーロッパはハンドボールが普及しているし、こちらはアメリカ生まれのバスケットボールよりも人気がある。同じくアメリカ生まれのソフトボールがヨーロッパの人々に受け入れられるのは至難の業だろう。今後ソフトボールが普及する可能性があるのは、台湾、フィリピン、中米各国があげられるが、これらの国では気候から冬季オリンピックが開催されることがない。やはり野球・ソフトボールが盛んなアメリカ・日本・カナダが音頭を取らないと実現は難しい。しかし万難を排してソフトボールが普及すれば、野球も開催しようという雰囲気が熟成されるかもしれない。まずはソフトボールを世界の人々に知ってもらうのが重要だ。
 かつて元ロッテマリーンズ監督のボビー・バレンタイン氏が「野球・ソフトボールは冬のオリンピックでやればいい」と発言したことがある。最初聞いた時は突飛な意見に感じたが、ソフトボールに関しては熱意があれば実現する可能性があるのではないか。
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