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門司港レトロ観光線ラクテンチケーブル~九州鉄道完乗記 [鉄道]

 日本鉄道完乗を目指して、九州でまだ乗っていない2路線に乗りに行くことにした。ひとつは門司にある門司港レトロ観光線、もうひとつはラクテンチケーブル線である。そもそもこれらの路線は乗る必要がないと思っていた線である。
 門司港レトロ観光線は廃線になった貨物線を利用して、2009年に休日のみ運行の観光路線として復活。車両は北九州市が保有し、運行は近隣の第三セクター平成筑豊鉄道が担当している。
 ラクテンチケーブル線は別府市にあるラクテンチという遊園地内にある乗り物で、2008年のラクテンチ閉園に伴って休止していた。そのまま廃止かと思われたところが2009年にリニューアルオープンし、運行が再開したのである。
 復活の経緯はそれぞれドラマチックだが、私としては乗る楽しみが増えたものの、まさかの復活に余計な手間が増えたと思ったものである。九州新幹線はどうした、と思われるかもしれないが、すでに開通して1週間後に乗っているのである。
 2011年5月21日土曜日。和歌山駅から8時8分発の新大阪行きの特急くろしお4号に乗る。その日は深夜業務で、土曜日の6時半に帰宅したところであった。本来なら一眠りしてから、昼過ぎから出発したいところであった。しかしこの2路線の他に日曜日に広島で野球観戦することにしたのでそんな余裕がなくなってしまった。寝ながら移動するしかないので一計を案じた。まず新大阪までは特急を利用する。これは紀州路快速に乗った場合、寝過ごして環状線をぐるっと回ってしまう可能性があるからで、新大阪止まりの特急にしたのは、着いたら車内清掃員が起こしてくれるからである。また小倉までの新幹線はこだまを利用する。のぞみに乗った場合、速すぎて小倉を寝過ごす可能性がある。それにこだまの自由席の方が周囲の客を勘案して席を選べるし、4列シートなので快適という計算もあった。
 そのように乗った特急くろしおだが、実際には眠ることなく新大阪に到着した。
 こだま635号は20番線に待機していた。700系レールスターの車両だ。個人的にはJR東海の700系よりもこのレールスターの塗装の方が格好いいと思う。
 自由席は難なく確保した。はじめから眠るつもりでいたから、新神戸を過ぎたあたりから眠った。覚えているのは新倉敷、東広島、広島に到着したところだけだ。さすがに「こだま」で何度も「のぞみ」に抜かれる。
 それにいらついたわけではないが、新山口で一旦降りて後続の「のぞみ」に乗り換えることにした。もう寝過ごす心配はないだろう。新山口からの利用は意外に多く各ドア10人ぐらい待っている。3両しかない自由席は難なく確保。しかしやはり5列シートは狭い。
 予定より早く小倉に着いたが、14時01分発の門司港行きには間に合わず、当初予定通り、14時14分発の普通に乗ることになった。客はほとんど門司で降りて、門司港に向かうのは僅かであった。
 門司港駅の駅舎は重要文化財に指定されていて、案内板もそれに併せてレトロな感じにしている。自動改札機も茶色に塗って目立たなくしている。
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 駅前では祭りかイベントで子供達が太鼓を叩いたり踊ったりしていた。
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 駅を出て右側に少し歩いたところに九州鉄道記念館があり、ここに門司観光レトロ線の起点である九州鉄道記念館駅がある。「駅市場」というスーパーの横を抜けたところに小さなホームがあった。
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15時00分発に乗る。運賃は往復500円。30人ほどの乗客を集めている。夏休み以外は土日祝のみの運行である。駅員の数が多い。車掌も4人乗っている。両端にディーゼル機関車を配したプッシュプル編成で客車2両。島原鉄道で使われていたトロッコ列車を北九州市が買い取って、JR九州の貨物線を利用して車両を観光車両を走らせる。運行は地元の第三セクター平成筑豊鉄道に委託している。
門司港レトロ観光線の概要については手抜きながらWikipediaの記事をそのまま引用する。
北九州市が観光スポットとして整備した門司港レトロ地区には鹿児島本線の貨物支線である門司港駅 - 外浜駅間および北九州市が保有する田野浦公共臨港鉄道の廃線跡が存在しており、これらの路線を活用して観光客向けのトロッコ列車を運行するものである。
田野浦公共臨港鉄道の廃線跡ならびに日本貨物鉄道が第一種鉄道事業者となっていた門司港駅 - 外浜駅間は北九州市が買い取った。
2008年3月13日に平成筑豊鉄道および北九州市から事業許可の申請が行われ、常設の普通鉄道として特定目的鉄道の制定後初の事例として同年6月4日に事業許可を受け2009年4月26日に開業した。


速く走る必要はないので時速15キロでゆっくり進む。これは関門海峡の潮流と同じだそうだ。
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 終点のめかりの前にはトンネルがある。車内は真っ暗となる。やがて天井に魚を描いた青い照明が点灯する。座席はテーブル付きのボックスシートで明らかに家族向きなので、私は全区間で立っていた。車内は吹きさらしなので雨の日は大変だろう。
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 関門海峡を望む素晴らしい景観だが、やっぱりまだ眠いのと、ここにはかつてクルマで来たことがあるので、観光はせずに15時15分発で折り返す。
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九州鉄道記念館に入館する。戦前のディーゼルカーがあって、これの中は入ることができる。ただしスリッパに履き替える必要がある。若い女の二人組がカメラをバシバシ撮りながら興奮している。今流行の「鉄子」だろうか。男の子は誰もが一度は電車が好きになるという。息子の影響で「鉄子」になったという説がある。しかしそれなら昔から存在していて不思議ではない。女性は一般に動いているものよりも、衣服、貴金属、花など止まっているものに興味を抱く。ここはあらゆるスポーツが女性に解放されていったのと同様の現象が鉄道趣味にも訪れたとみていいだろう。マスメディアに取り上げられてからは後ろめたさどころか「最新の流行」となってしまったのだろう。
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 さて展示車両に戻ると、583系寝台特急がある。外はクリームと濃紺の月光塗装だが、中身は近郊型として利用されていた内装で一部ロングシートもある。せめて1区画だけでも寝台をセットしてもらいたかった。
 本館の展示物はこんなものだろうと思う。全体的にJR九州お得意のレトロ調に統一されている。展示物では三等きっぷに萌える。もちろん硬券で大阪ー佐世保間が1900円ぐらいだった。時代は昭和20年代だろうか。写真に撮っていないので正確なことはいえないけど。
 その後小倉まで戻り、行橋で降りた。行橋は立派な高架駅である。何故別府に行かないのかというと、行橋にあるアパホテルに泊まってポイントを貯めるためである。別府でお手頃な温泉旅館が予約できなかったという事情もあった。
 ともあれ17時30分にホテルに着いて、お酒を飲んでしっかり眠って明日に備えることにした。このアパホテルはどうやらオリジナルではなくて買収したような感じだ。オリジナルより若干広い。

 翌5月22日日曜日。
 6時15分起床。換気扇がうるさかった。雨はまだ降っていない。1階で朝食。パンとジュースとコーヒーは飲み放題。
 行橋7時31分発の特急ソニック1号に乗る。7両編成。自由席は後ろ4両。指定席の方が混んでいるくらいだ。鉛色の空が広がる。883系は初めての乗車。ガラス張りのデッキや独特の形状の椅子。振り子機能で高速運転。しかし宇佐を過ぎるとスピードはガクンと落ちた。乗客は中津までは多かったが、そこからは漸減し、別府に着く頃には5人/両となっていた。
 杵築。古い瓦葺きの駅舎。貨物列車が対向待ち。雨予報のはずだが晴れてきた。
 別府に着いた。ホームに洗面台がある。これは蒸気機関車がはき出す煤煙で汚れた顔を洗うためのものである。高架駅なのにあるのは不思議に思った。この別府駅が高架になったのは1965年で、このころはまだ九州ではバンバン蒸気機関車が走っていたのである。
 バスの乗り場はラクテンチがある西口ではなく、東口にある。ラクテンチ経由10系統の亀の井バスは10時50分にやってきた。最終的には3人の乗客を乗せて走る。ホテル亀の井を過ぎると流川○○丁目という停留所が続き、垂直に上り下りするケーブルカーが見えてラクテンチ到着。ラクテンチで降りたのは私だけであった。日曜日だというのに行楽客は少ない。
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 ちょうど9時00分発のケーブルカーが発車したところであった。ケーブルカーは20分ごとの運転。入場料はケーブルカー込みで1000円。ケーブルカー単独で乗ることはできない。遊園地は山の上にあり、それ故にケーブルカーがあるのだが、現在は「乙原ゲート」と呼ばれる山の上にも駐車場があるので、そこから入ると800円である。つまりケーブルカーの料金は往復200円ということになる。20分間テディーベアの縫いぐるみが座るベンチで待っていると、やがて3名の家族連れがあられた。わざわざ下にクルマを置いてケーブルカーに乗る。ケーブルカーに乗りたがる人はいるのである。
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 9時20分に発車する。最終的には乗客は10人。遊園地内とはいえ、鉄道事業法に基づく立派な鉄道である。駅にはその表示もある。ただ駅名票がない。鉄道事業法の届け出では麓側が雲泉寺、山上は乙原となっている。JTB時刻表にはラクテンチ下、ラクテンチ下と表記されている。
 途中降りてくるケーブルカーと対向する。まだ開園して間もないのに5人ほどの客が乗っている。まさかケーブルカーに乗るためだけに来たのではあるまい。乗務員は「手を振って~」というのはさすがに遊園地の乗り物である。やがてラクテンチ上に着いた。山上駅は観覧車乗り場と一体化している
 これで私の目的は果たしたのだが、せっかくだから遊園地を散策しようと思う。まずは駅というよりも「乗り場」の横にある展望台からは別府市内を一望できる。雨は降っていないが天気が悪い。このラクテンチという遊園地は、もともと眺望のいいところに造られたのである。
 ここでラクテンチケーブルの経緯についてWikipediaを引用してみる。
遊園地「ラクテンチ」およびケーブルカーは1929年に開業した。1954年からは別府国際観光が運営していたが、経営難に陥ったため、2003年11月に遊具機械の製作・再生および中古遊具による遊園地の再生事業を手がけている岡本製作所に営業譲渡され、遊園地は「別府ワンダーラクテンチ」となった。しかしその後も来園者数の減少に歯止めがかからず、2008年7月に岡本製作所が別府ワンダーラクテンチからの運営撤退を表明し、譲渡先が決まらなければ8月末で閉園するとしていた。岡本製作所は別の企業と譲渡交渉を行っていたものの、鉄道事業法に基づく許可の必要なケーブルカーの譲渡が難しく、自社で営業を再開することを決定し、2009年7月18日に「ラクテンチ」としてリニューアルオープンし、同時に車両の前面部分は近鉄生駒ケーブルを思わせるイヌとネコを模したものに模様替えされた。

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 次にアヒルの競走。どのアヒルが1着になるのかを当てる、馬券のようなものもある。観覧者が少なすぎて盛り上がらない。私は競馬ファンでもあるが、今年は全く調子が上がらず、とても当たるとは思えなかったので、買わなかった。赤縞のリボンを付けたのが1着だった。
 午前中の早い時間帯とはいえ、日曜日なのにガラガラである。さすがに一度は閉園になっただけのことはある。遊具は一通り揃っているし、地元の人が家族連れで来るにはいいとしても、遠方からの客を呼び込む魅力に欠ける。個人的には動物園が気に入った。私の好きなミーアキャットが柵越しでなく見れるのはとてもいい。
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 遊園地の乙原ゲートという山の上入り口の近くには民家が見える。非日常を求めてやって来た身から見ると興ざめする。
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 吊り橋を渡ったところに温泉がある。入浴料は無料。客は誰もおらず、管理人すらいなかった。「本日最初の客」であったらしく、誰も入った形跡はなかった。こんな経験は初めてある。温泉といっても掛け流しではなく、下の露天風呂は温かった。
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 10時40分発のケーブルカーで降りる。乗客は私だけ。帰りは土産物店を通るが無視する。
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 歩いて公衆浴場不老泉まで行く。別府は言うまでもなく温泉街であちこちに公衆浴場がある。小雨が降ってきたが大したことはない。不老泉の前にはゲートボール場があって2階は公民館になっている。入泉料は100円。内部は古びていい感じである。ただし湯温は42度とあるが、46度はありそうなほど熱く、私は足湯にしかできなかった。結局たっぷりつかることはできなかった。
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 別府駅まで歩く。昼食は駅ビル内の「豊後茶屋」でとり丼定食。「ソン」と名札をつけた韓国女性が厨房にいる。昨日の行橋の居酒屋の店員の日本語も怪しかったし、今や日本各地で静かに人手不足業種の外国人化が進行している。
 予定より1時間繰り上げて12時18分発の特急ソニックで小倉に向かう。指定席か自由席かで迷ったが、自由席にした。往路があまりに空いていたからである。果たして自由席で十分であった。ところでソニックの特急券の料金が妙に高いことに気づいた。新幹線の乗り継ぎ割引が九州島内では適用されないことを知った。あとで時刻表で確認した。国鉄分割民営化以降そうなっているようだ。
 小倉からは13時55分発の「ひかり564号」に乗る。「のぞみ」でなく「ひかり」にしたのは指定席の座席が広いからである。8号車4D席。奥にコンパートメントが見える。網棚にひとつだけ荷物が見えた。
 眠かったので車内販売のコーヒーを注文。新下関から乗ってきた隣の女性は足元が塞がるほどの荷物を置いている。
 14時47分広島着。広島で降りたのはマツダスタジアムで野球観戦するためである。この詳細は別項を参照。
http://umayado.blog.so-net.ne.jp/2011-05-30
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クリスタル5254

なかなか・・・ハードスケジュール!!

ケーブルカーは乗ってみたいと思いました。
なかなかディープな散策内容!

できれば、鉄子の画像も欲しかった(笑)。

では。
by クリスタル5254 (2011-06-13 01:23) 

umayado

>クリスタル5254さん

どうもです。
ラクテンチは探偵ナイトスクープの「パラダイス」状態でしたね。

鉄子の画像ですが、展示のディーゼルカーに乗り込もうとしているのが、まさにそれです。

ただ自分のポリシーとしてなるべく顔は写さない主義なので、拡大しても顔は分からないです(笑)

でも結構可愛かったですよ~
東京の鉄道博物館に行ったら、鉄子がわんさかいますよ。
by umayado (2011-06-13 19:58) 

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