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北陸新幹線の今後の展開 [鉄道]

 2015年3月、北陸新幹線が金沢まで延伸し、東京からの観光客の流れ込みが倍増し、概ね好調な滑り出しを呈している。
 反面、大阪方面は富山直通の特急がなくなり、必ず金沢乗り換えとなり、また新幹線は保安検査のため午前6時からしか電車が動かないので、初電に関しては富山からは大阪到着が遅くなるなど弊害がでている。簡単にいえば東京方面は便利になったが大阪方面はむしろ不便になったといえる。
 その北陸新幹線は敦賀まで建設中だ。福井県は金沢開業で羨ましく思ったのか、政権与党自民党を動かして、福井までの先行開業をぶち上げた。ところが認可権を握る国土交通省と運行を担当するJR西日本は難色を示した。その理由として国土交通省は敦賀までの一括開業を前提としていたので、福井駅はホーム1面で側線もなく、周辺には車両基地を設けるスペースを確保していないと述べた。JR西日本はこれに同調したものの、本音は別の理由で反対であったのだろう。つまり福井まで部分開業すると、並行在来線は第3セクターに経営分離される。現状金沢までは乗り換えなしで行ける特急サンダーバードは福井止まりとなり、ここでの乗り換えが強いられることになる。富山は新幹線開業前から東京志向であったので、乗り換えに関してはあきらめもついたが、金沢まで福井で乗り換えとなると、乗り換えなしで行ける高速バスに乗客が逸走する可能性がある。乗り換えの負担を減らすために、同一ホームで乗り換えできるようにする方法があるが、いずれ敦賀まで開業するのに、開業すれば無用となるそのような設備を設けるのは、経営上得策ではない。地元の建設業者や自民党はそのような技術上の問題は理解していないから、今後も「福井部分開業」と声を上げるだろうが、JR西日本は婉曲に断り続けることだろう。
 しかし福井開業は回避されたとしても、敦賀開業はやがてやってくる。敦賀からどのようなルートで大阪に向かうのかまだ決まっていない。これについては後述するとして、とりあえず当分の間、敦賀で乗り換えを強いられるのは既定路線だ。本来はここで在来線の狭軌と新幹線の標準軌を自在に行き来できる軌間可変電車(フリーゲージトレイン)を投入する予定で、JR西日本はその方向で検討していた。しかし先行投入する予定だった九州新幹線長崎線での試験車両が原因不明の故障を発生してしまい、試験が延期されてしまった。日本指折りの豪雪地帯で複雑な軌道変換機構の他に耐寒耐雪機構の必要な北陸新幹線に投入するには時間が余りにもなさ過ぎる。よってフリーゲージトレインの導入は敦賀開業の時点では消滅した。かつて筆者が提案した、敦賀ー金沢間を三線軌道化して在来線車両のまま金沢に向かう案は、中途半端な案として検討させることなく終わったようだ。
 その敦賀では大阪あるいは名古屋から来た在来線の特急と新幹線の乗り換えが強いられる。乗り換えの負担を可能な限り減らすには同一ホームに在来線と新幹線を並べて、乗客の水平移動だけで乗り換えできるようにするのが一番いい。しかしJR西日本が発表したところでは、階段またはエスカレータを利用した上下移動を強いられるとのことである。これは敦賀の新幹線駅が線形の関係で、現状駅の東方に離れたところに、ビルの6階に相当すると高さに設けられるためである。現在地平の在来線からビルの6階分まで登るアプローチ線を設けるのはかなり難しい。だからJR西日本は新幹線の高架駅の真下4階相当分ぐらいの高さでアプローチ線を建設し上下移動してもらおうというわけである。
 確かに利便性は欠けるが、エスカレータの乗り口に改札口を設けられるので、不正乗車は防ぐことができる。また将来北陸新幹線が大阪に延伸した場合でも、小浜方面あるいや名古屋方面への乗り換え手段として利用できるという利点もある。この面倒な乗り換えを嫌って、高速バスへの乗客逸走はある程度はあるだろうが、最小限に抑えることはできると思われる。
 さて敦賀開業により、敦賀市民が便利になるかといえば、必ずしもそうではないのである。現状、敦賀からは在来線特急で米原へ出て、そこから東海道新幹線に乗り換えることにより、東京まで最速約3時間で到達することができる。ところがこの北陸新幹線に乗ったところで、東京までの到達時間はそれより長い3時間10分が予定されている。これは北陸新幹線が整備新幹線で最高速度が260km/hに制限されていることと、山岳部を通過するためにその最高速度すら出ないところがあること、またあちこちの都市を寄るために、直線距離に比して走行距離が長くなっているためである。これに対して米原経由では、米原で1回乗り換えしなければならないとはいえ、運転本数がけた外れで、東海道新幹線の最高速度が275km/hと高いため、乗り換えの不便を帳消しにしてしまう。
 これは福井に置き換えても同様であり、自民党や利権が絡む建設業者や福井先行開業に熱心なのに、地元住民が比較的に冷めているのはそのためである。地元としては建設費負担を強いられた上に、新幹線に並行する在来線の経営を押しつけられ、しかも便利にならないとあってはたまったものではないだろう。もちろん北陸各県や長野方面は大幅に時間短縮になるから、潜在需要の掘りおこしの効果はあるし、東海道新幹線のバイパスという意味を考えれば、敦賀延長は決して無駄とはいい切れない。
 そこで敦賀からの延伸はできるだけ早期に決定する必要がある。
 現在、検討されているルートは以下の4つである。
1.小浜と亀岡を通過し新大阪に至るルート
2.米原まで延ばし、東海道新幹線と連絡するルート
3.米原から湖西線と並行して京都に至るルート
4.小浜と京都を通過し大深度地下で新大阪に至るルート
5.小浜からさらに西に舞鶴を通過し、大阪東部を経由して関西空港に至るルート

 まず、1は全国新幹線整備法で規定されているルートで、いわゆる整備新幹線を図で説明されている場合、第1番目に取り上げられている。全国新幹線整備法成立を推進した田中角栄氏が主張していた「日本列島改造論」に沿った、過疎地の利便性を高めて、国土の均衡ある発展を目指す意向で、沿線最大都市である京都を無視していること、大きく迂回していること、それにともない建設費が高額となることなど、問題が多く、小浜市と亀岡市以外は恩恵を受けないため、評価は今一つである。
 2は最も建設距離が短く、京都を通過するだけでなく、名古屋方面への連絡もいい。また並行在来線もJR西日本のまま運営する可能性が高く、経営分離の問題もおそらく発生しない。いいことずくめのようだが、最大の問題は東海道新幹線がJR東海の経営だということだ。現在、1時間10本以上の過密運転の東海道新幹線に北陸新幹線の入り込む余地はない。それにJR東海は16両編成に統一したい意向で、そんな長物は必要のない北陸新幹線の乗り入れは拒むだろう。ただ、将来リニア新幹線が東京ー新大阪間を結ばれれば、現在のような過密運転が必要なくなり、編成も多様化されるだろうから、乗り入れる余地はある。そのときには名古屋方面への直通列車が運転される可能性もある。
 3はほぼ湖西線と並行するルート。米原ルートよりもやや距離は長くなる。しかし名古屋方面への連絡が悪く、接続する京都でまたJR東海との問題が発生する。
 4はJR西日本から2015年に提案されたルートで1、3の折衷案となっている。小浜を通過しつつ滋賀方面向けてから京都を通過、そこからは大深度地下で新大阪を目指す。この案の利点は、東海道新幹線に乗り入れないのでJR西日本がJR東海に遠慮することなくダイヤを設定できることだ。それに滋賀県を通過しないので、同県と協議する必要がなく、人口が稀少ながらも観光資源がある小浜方面との連絡がよくなり新たな需要を創世できる点がある。問題は京都駅をどのように設置して、新大阪駅でのホームの配置をどのようにするか、それに大深度地下で建設するために高騰する費用をどのように確保するかという点だろう。また迂回経路となることで関西対北陸の速達性が欠けるのも減点材料だ。もっともこの区間は驚異となる航空路線がないので、多少の迂回は考慮する必要はない。
 5は4が発表されてから周辺の自治体から表明されたもので、小浜まで来るなら舞鶴も、そしてどうせ迂回するんだったら、大阪東部を通過して関西空港まで作ってくれという、自治体のエゴ丸出しの案で評価に値しない。だいたい、こんなにあちこちに寄っていては、大量高速輸送の新幹線の意義が損なわれる。結果的に利用されない交通機関になってしまう。
 北陸新幹線の敦賀開業が2022年。リニア中央新幹線の名古屋ー大阪開業が2045年を予定されている。ただリニア中央新幹線の南アルプストンネルの貫通に時間がかかれば、さらに先送りになる可能性がある。なにしろ世界初の本格的磁気浮上鉄道だ。実際に営業してみないとわからないことが多い。仮にリニアが大阪に来るのが2050年になるとすれば、28年間も米原乗り入れができないことになる。それならば小浜経由の別ルートで建設し、大深度地下は京都付近だけにして、新大阪まで二重高架で建設する荒技を用いれば、20年もあれば建設できそうに思える。大幅な迂回で乗り換えが必要とはいえ、東海道新幹線以外に、東京ー大阪間の高速鉄道ができるのは大きい。少子化で人口減が予想される日本とはいえ、東京ー大阪間にリニア中央新幹線、東海道新幹線、北陸新幹線と3ルートあっても需要減に悩むことはないだろうし、経由地の異なるこのルートは新たな需要を掘り起こす可能性がある。
 よって筆者としては4の小浜ー京都ルートを推したい。通過しない滋賀県は不満だろうが、並行在来線の経営移管もなく、すでに東海道新幹線のあるし、リニア中央新幹線ができれば、おそらく米原-京都間に新駅が建設されるはずだ。滋賀県としてはそちらの方が経済効果が高いだろう。

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