SSブログ

北陸新幹線が開業すると [鉄道]

 2014年度北陸新幹線が金沢まで開業する。東京ー金沢間は現状の越後湯沢で北越急行経由のはくたかに乗り換えるより、1時間短縮の2時間半で結ばれる。膨大な人口を要する首都圏と直結することによる経済効果に地元は期待している。
 しかし次のような弊害がある。
・新幹線に並行する在来線がJRから経営分離されること。
経営分離される在来線が地域利用のみとなるため経営が苦しくなること
・とりわけ北越急行の経営が一気に悪化すること
・今まで大阪からサンダーバードで乗り換えなしで行けた富山が金沢乗り換えとなること

 新幹線と並行する長野から金沢のうち、長野-妙高高原間はしなの鉄道、妙高高原ー直江津間と直江津ー市振間を新潟県が主導する第3セクターの「越後ときめき鉄道」、市振ー倶利伽羅が富山県が主導する「あいの風とやま鉄道」、倶利伽羅ー金沢間は石川県が主導する「IRいしかわ鉄道」が運営することになっている。
 長野ー妙高高原のうち飯田線が分岐する豊野以北は閑散線区なので廃止も検討されたが、雪国特有の事情と地元の反対もあって存続と決まった。直江津ー妙高高原間は妙高山など観光資源もあり、上越市内を走り一定の需要があり、また新幹線駅が途中の脇野田駅に設置されるとあって存続の意志が表明されていた。新幹線駅に寄り添うように線路の付け換えも行われ、新潟方面への乗り換えを容易にする配慮がなされる。
 直江津-金沢間は日本海縦貫線の一部をなす貨物列車の重要路線であり、沿線人口も多いことから、これを廃止することはできない。しかし特急料金を稼げる都市間輸送は新幹線に移行し、地域輸送に徹するしかない。貨物列車の為に高規格な線路と電化設備を維持し、除雪費用も手を抜くわけにいかない。旅客輸送に関しては高価な交流電車をやめ、気動車で運転するようだ。県ごとに運営会社が分割されるので、それぞれの運賃の合算となり、通しで買った場合、新幹線と大して変わらないものになるだろうし、短距離で運営会社をまたいでしまう場合など、割高となってしまう。例えば飯田ー長野間はしなの鉄道を使うよりも新幹線の方が特急料金を支払っても少し高いだけとなり、長野新幹線の上田ー長野間と同じ現象が起きるであろう。
 線路使用料を支払って貨物列車を走らせるJR貨物にしても、それぞれの運営会社に運賃を支払うことから、何も利点がないにも関わらず、コスト高となってしまう。
 通しで運営した方が新幹線との競争力もある程度確保できて、地域輸送にも貢献できるのに、そうしなかったのは、第3セクターが上下分離形式運営され、インフラを県が買い取り、運営会社に貸与することで、固定資産税などを減免し、運行コストを抑えるためだ。しかし将来的には道州制が導入され、県の合併も視野に入ってくるだろう。ここは県同士、知恵を出し合って共同で運営会社を設立できなかったかと思ってしまう。確かに運営コストは下がるが攻めの経営ができないので、増収策が限られたものになる。最後は国に泣きつくつもりかもしれないが、結果的には国民負担を意味するので、まずは地元で何とかする意識を持ってほしいものだ。
 鉄道は雪に強いので、クルマよりも信頼を寄せる住民が多く、北陸地方では乗客が少ないとはいえ、自治体が補助金を出しても維持するのは合理的な理由がある。ただ地元客だけでは先細りは目に見えている。九州新幹線開通で経営分離された肥薩おれんじ鉄道は2013年より食堂車の運転が始まる。北陸本線もいい眺めなのだから、食堂車や展望車を連結するべきだ。今の技術なら電車や気動車でもそうした車両を牽引できるだろう。こうした方策は青い森鉄道や、IGT銀河鉄道でも当てはまる。
 北越急行は北陸新幹線が開通すると一気に経営が悪化する。2013年現在、東京から金沢に向かうには、上越新幹線の越後湯沢で北越急行を通過する特急はくたかを利用するのが最速だ。しかし北陸新幹線が開通すれば、東京から金沢まで乗り換えなしだ。どれだけ運賃を安くしても、乗り換えの手間と所要時間の壁を乗り越えられないだろう。北越急行の沿線人口は希薄で、地域輸送だけではとても黒字になる見込みがない。北越急行は特急はくたかで稼いだ現金100億円を運用し、50年は損失補填できるとうたっている。けれども長大トンネルが多いことや高速運転で線路水準が高い分、保守管理費が高くつき、おそらく40年持つのが関の山だろう。
 北越急行の場合、両端の直江津ー犀潟及び六日町ー越後湯沢間がJR東日本の路線であることも不利だ。直江津以西から越後湯沢方面の旅客流動を考えた場合、JR東日本としては自社だけで移動できる長岡経由を利用させたいからだ。直江津方面から新潟への連絡は、越後ときめき鉄道となる現在の脇野田駅から新潟行きの特急が設定されると予想される。特急のスピードにもよるが、北越急行経由の約15分程度の差でしかない。北越急行としてはこの時点で特急車両は売却して、一般車両による快速が運転されているだろう。快速の車内設備で、割高な運賃に両端のJR運賃が加算されるわけだから、競争上不利となる。
 ただし沿線で一番の人口を要する十日町市への連絡を考えた場合、JR東日本とすれば北陸新幹線の飯山から自社の飯山線で十日町まで乗ってもらったとしても所要時間で、北越急行と太刀打ちできないし、前述した北陸方面からの需要よりも、上越新幹線を利用する首都圏からの乗客の方が圧倒的に多いから、北越急行と連携を模索するだろう。
 将来、北越急行の内部留保が尽きて、経営が立ちゆかなくなれば、JR東日本は利用客の少ない飯山線の十日町ー越後川口間を廃止して、北越急行の経営に乗り出すかもしれない。難工事の末に開通させて高規格に作られた北越急行を、JR東日本が見捨てるとは思えない。
 北陸新幹線金沢開業でもっとも不利益を被るのは、大阪方面から富山まで直通する利用者だろう。開業前は大阪から富山までサンダーバードに乗れば、乗り換えなしで行けたのに、サンダーバードが金沢で運転打ち切りとなるために、そこでの乗り換えが強いられるからだ。しかも九州新幹線の新八代のように在来線と同一ホーム乗り換えできず、利用者は階段の上り下りをしなければならない。JR西日本としては自社が運営する北陸新幹線に乗ってもらいたいだろうし、富山までの利用者は金沢までの利用者の半分ぐらいと思われるし、いずれ金沢以西も第三セクター化されるのに、同一ホーム乗り換え構造にするための投資をするはずはない。
 わずか15分の短縮時間のために、乗り換えの手間がかかり、運賃料金も上がるとあっては富山の人々は釈然としないだろう。高岡に至っては、新幹線の駅が現高岡駅よりも南の城端線との交点に設置される。これまでより利便性は下がるのは間違いない。
 在来線を運営する第三セクターとしては、サンダーバードの富山までの延長運転や、自社車両による快速運転が対抗措置として考えられる。しかし倶利伽羅で運営会社が分断され、運賃が割高となる上に、スピードで対抗するのは不可能だ。金沢でサンダーバードの乗り換えを同一ホームすれば対抗も可能だが、運営会社が違うために改札を設ける必要があるだろうから、結局別のホームへの移動となろう。
 つまり関西-富山間は、おそらく同一ホーム乗り換えか軌間可変車両の導入となるであろう北陸新幹線の敦賀開業まで不便なままとなる。今後は乗り換えなしで行ける首都圏経済の割合がより高まることになるだろう。これは金沢も同様である。
 その昔、北陸から新潟方面は江戸時代の西回り航路の影響で関西経済圏だった。つい最近まで夜行急行きたぐにが毎日走っていたし、かつては寝台特急つるぎもあった。また昼間の特急雷鳥は6時間以上のロングランで大阪ー新潟間を運転していた。これは三国山脈と碓氷峠が関東と新潟・北陸方面の交流を阻んでいたからだ。それが昭和初期に上越線が開通してから、徐々に首都圏との交流が増え、上越新幹線開通で新潟は完全に関東圏に組み込まれた。北陸地方もおそらく同様の現象が起きるだろう。少子化で人口減が進む我が国はより人口の多い地域への依存度が高まり、首都圏以外の地域の衰退はより激しさを増すだろう。独自の文化を持つ関西圏もその例外ではないだろう。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:旅行

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。