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軌間可変電車の実現可能性 [鉄道]

 軌間すなわちレールの幅は、新幹線で採用されている1435mmとJR在来線の1067mmがあり、この2者間では互いの車両は直通できない。そのため車両側で車輪の幅を変えて直通できるようにする軌間可変電車(フリーゲージトレイン)の開発が進められている。技術的な詳細は下記URLを参照。

↓軌間可変電車ってなに?
http://www1.tcat.ne.jp/train/kaisetu/gct/gct.htm

 しかし発表から20年ほど経過しようとしているのに、一向に実現の兆しが見えない。開発の困難な理由としては、以下の理由が挙げられる。
 まず、軌間可変機構を持つために、それぞれの専用車に比べて重量が重くなる点である。これは高速化を阻むだけでなく、騒音、軌道破壊による保守コストの増大を意味する。直線の多い新幹線の高速性と、曲線の多い在来線の両立は難しい。鉄道の車輪は曲線走行時の内外輪差を吸収するために、傾斜がつけられているが、在来線に合わせて傾斜をきつくすると、新幹線の高速走行時に蛇行動を生じてしまい、走行性が不安定になる。そのため車輪の傾斜をつけずに左右独立のモーターで駆動させたり、自動車のように差動装置を取り付けたりする必要がある。
 もうひとつは軌間を変換するのに時間がかかるという点だ。現状は10両編成で10分かかるようだが、こんな遅い変換だと、かつて九州新幹線の新八代駅でやっていたように新幹線と在来線を同一ホームで乗り換えしたのと所要時間が変わらなくなるだろう。
 スペインには1668mmの広軌と1435mmの標準軌を短時間で変換するレンフェ120系Alviaという高速電車が実用化されているが、あちらは線路幅が広く機器類の設置余裕がある上に、可変幅が小さいため条件は有利だ。また古くからフランスからスペインに直通している有名なタルゴ寝台車は無動力の客車で、独立車輪で対応している。また山形と秋田に向かうミニ新幹線は高速性を保ちながら在来線の走破性も確保しているが、あちらは在来線の幅を広げる時に軌道を強化して対応している。
 現状の軌間可変電車は重くなるため、ロングレール化など在来線の軌道を強化しなければならず、新幹線も軌道破壊が大きくなるため入線に難色を示している。
 長崎新幹線は佐賀県が新線建設に反対しているため一部在来線を利用することから、この軌間可変電車を導入する方向で検討されているが、軌道破壊を恐れて、JR西日本は山陽新幹線区間の乗り入れを拒んでいる。したがって新大阪-長崎間の運転はできず利便性は大きく損なわれる。
 北陸新幹線は敦賀まで延長した段階で、軌間可変電車を導入して、大阪-富山間などの直通運転する動きがある。しかしただでさえ重い電車にさらに耐寒耐雪設備を設けて高速化が実現できるのか不透明だ。
 管理人としては、このような欠点を抱える軌間可変電車の開発は止めるべきだと思う。
 長崎新幹線に関しては、全区間フル規格で建設する方が経済効果が大きい。軌間可変電車を導入しても博多止まりではあまり意味がないし、変換時間のロスが大きすぎて短縮効果も小さい。おまけに在来線の改良も必要なのでは、コストが合わないからだ。もしフル規格がだめなら、博多-長崎間を全区間在来線のスーパー特急を走らせる方がマシだ。
 北陸新幹線に関しては、リニア新幹線が大阪東京間に開通すれば、敦賀から米原乗り入れを考えるだろうが、当面は敦賀止まりだろう。ここは敦賀-金沢間を三線軌条若しくは四線軌条にして、フル規格新幹線を敦賀-東京間で運転し、スーパー特急を大阪-金沢間で運転すればいいだろう。三線軌条だと車両の中心線がずれるため、軌道の片減り、複雑な分岐機構、新幹線の交流25000Vに対応できる超高速車両の開発、それに北陸では雪害対策など難しい点があるが、軌間可変電車が抱えている問題に比べれば解決は容易だ。

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