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北方領土問題こう考える [政治・経済]

 日本とロシアに大きく横たわる北方領土問題。日露両国が関係を深めるにはどうしても解決しなければならないこの問題について、筆者の個人的な見解と史実から今後の展開について考えてみる。

 日本の外務省の見解については下記URLを参照。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/hoppo/hoppo_keii.html

【経 緯】
 以下は個人的な見解を含む。
1.日露通好条約(1855年)
 19世紀、「凍らない港」を求めて東進南下してきたロシアは日本との通商を求めてきた。当時日本は鎖国し、原則として他国との通商は行われていなかったので丁重に断った。その後アメリカのペリー来航を契機に日本は部分的に開国を決意せざるをえなくなった。
 当時の北方領土周辺は日露両国にとって辺境であった。日本は松前藩を通じて交易はあるものの、幕府の監督外にあったアイヌ人が住むだけで、極少数の幕府の役人が探険目的で足を踏み入れたに過ぎない。ロシア側も似たような状況だった。しかし通商を開始するにあたり、日露間の国境を定める必要が生じ、1855年日露通好条約(日露和親条約)によって、千島列島における択捉島とウルップ島の間を国境とし、樺太についてはとりあえず国境を設けず両国民が一緒に住むところとされた。

2.樺太千島交換条約(1875年)
 東進南下を続けるロシア帝国に対して、産声を上げたばかりの明治政府には阻止する実力はなく、また北海道を防衛を優先するため、樺太千島交換条約により、カムチャッカ半島直近の島からウルップ島までの18島(これが日本の主張する千島列島)をロシアから譲り受けるかわりに、ロシアに対して樺太全島を放棄した。

3.ポーツマス条約(1905年)
 朝鮮と満州の権益をめぐり、日本とロシアが衝突し日露戦争が勃発。日本はロシア軍を北方に撃退し、その講和条約であるポーツマス条約において、日本はロシアから樺太(サハリン)の北緯50度以南を獲得した。

(3)サンフランシスコ平和条約(1951年9月)
 日本は経済権益拡大のため満州から中国大陸に進出。その過程でアメリカと利害が対立するようになり両国は戦闘状態となり太平洋戦争に突入した。日本は後顧の憂いを断つため日ソ中立条約を結んでいたが、ソ連は1945年2月のヤルタ会談において、アメリカ、イギリスに対日参戦を要請されており、日本が敗色濃厚な1945年8月8日深夜、ソ連軍が南樺太・千島列島及び満州国・朝鮮半島北部等へ侵攻した。同年8月14日、日本はポツダム宣言を受け入れ降伏した。8月28日から9月5日にかけてソ連軍は択捉島、国後島、色丹島、歯舞諸島に上陸し無血占領した。日本の主張するこれら北方領土は現在に至るまでソ連およびそれを継承したロシアが実効支配を継続している。
 1951年9月、日本は太平洋戦争の講和条約であるサンフランシスコ平和条約により、ポーツマス条約で獲得した樺太の一部と千島列島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄した。しかしソ連はサンフランシスコ平和条約には出席したものの調印しなかった。

(4)日ソ共同宣言(1956年10月)
 政治イデオロギーの違いから長らく国交のなかった日ソ両国は、日ソ共同宣言において、国交が回復し、日本は国際連合への加盟への障害がなくなった。この宣言では「日ソ両国は引き続き平和条約締結交渉を行い、条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡す。」とされた。

【現 状】
 前述したように、択捉島、国後島、色丹島、歯舞諸島(以下北方領土)は現在ロシアが実効支配を継続している。
 ロシアはヤルタ会談の秘密協定において対日参戦の代償として千島列島及び南樺太を獲得したのであって、日本のいう北方領土は千島列島に含まれると主張する。
 日本は日ソ中立条約を一方的に破って火事場泥棒的に北方領土に侵攻した。ヤルタ会談の秘密協定は法的拘束力がない。サンフランシスコ平和条約では千島列島を放棄することを宣言したが、北方領土は日魯通好条約に認められた日本固有の領土であり、千島列島に含まれない。しかもソ連は同条約に署名しておらず、北方領土の領有は認められない、と主張している。

【筆者の見解】
 北方領土問題の重要なポイントは千島列島の解釈であろう。ロシアは択捉島、国後島は千島列島に含まれ、日本はそうではないという主張だ。しかし国別に色分けしていない千島列島の航空写真を第三者が見ればどういった感想を抱くだろうか。ロシアの主張が尤もだと思う可能性が高いのではないか。日本はソ連侵攻前は日本人が住んでいたと主張するが、既にロシアが実効支配して半世紀以上経過し、請求権も消失しているといわれても仕方がないところだろう。
 そもそも敗戦直後から日ソ共同宣言の時点では、日本政府も択捉島、国後島は諦め、北海道の近海の島であって千島列島とはみなされないと解釈できる歯舞諸島と色丹島の2島の返還のみで妥協しようと思っていたのではないだろうか。この頃発行された地図には国後島と北海道の間に国境線が引かれたのもあったという。
 筆者の想像だが、ここでアメリカの介入があったのではないかと思う。つまり日本に飽くまで4島返還を主張させることにより、日ソ関係を敵対化させ、日米同盟を緊密にしてソ連と対抗しようとしたのではないか。ソ連にしても領土が曖昧な島に本格的な軍事基地を設けるわけにいかないから抑止力になると判断したのだろう。これ以降アメリカは北方領土は日本のものだと主張している。中国もロシアと日本が結べば立派な対抗勢力となることから、積極的ではないものの、日本の領有を認めている。アメリカの場合はソ連に対日参戦を要請したばかりに、同盟国の日本に大きな代償を背負わされた負い目は少しはあるのだろうが、アメリカも中国も基本的には日本とロシアがあまりに友好的になりすぎるのを阻止したいのだろう。そもそもアメリカが日本を同盟国にしたのは、共産主義を掲げていた中国とソ連をその地理的優位差で牽制するためだったであろう。
 このアメリカによる介入と情報操作は、後の世に、ロシアは日本の領土を不法占拠していると多くの日本人は考えるようになり、特に右翼団体は「樺太全島と全千島列島が日本領土」と主張している。北方領土問題に関して、日本の政治家、官僚は4島返還を強行に主張し、2島返還が本音の評論家達も、結論を曖昧に書くのは、右翼のいやがらせなどの攻撃を恐れてのことと思われる。

【筆者の解決策】
・南樺太のロシア領有を認める
・千島列島のウルップ島以北のロシア領有を認める
・ロシアは択捉島をその施政下に置く
・日本は歯舞諸島及び色丹島をその施政下に置く
・国後島は北緯44度の線をもって、南は日本、北はロシアがその施政下に置く
・分断される国後島にはそれぞれの施政地域に高等弁務官を交換する


 つまり2.5島返還である。

 ロシアが辺境の北方領土を領有する理由は、安全保障と漁業権と存在するかもしれない地下資源の確保である。漁業権と地下資源については領土が増えれば、排他的経済水域も増えるからその権益が拡大するのは理解できよう。
 安全保障については国後島と択捉島を領有することにより、アメリカなど外国の潜水艦がオホーツク海への侵入するのを阻止できるからである。宗谷海峡と北海道と国後島を隔てる野付水道のみ対岸が日本領となっているが、そこは監視のみにして、ロシア艦船が太平洋に出るには択捉海峡など別の海峡を通過すればいいのである。また冬は凍結するオホーツク海では太平洋に面して凍らない択捉島は是非とも確保したいところだ。
 それからすると南半分とはいえ国後島を日本領とすることは難しそうに思える。しかし国後島全てがロシア領となると、今まで領土問題で大規模な軍事施設を作るのをためらっていたロシアが、何らかの理由で日露関係がこじれた時に、それを建設する可能性がある。そうすると日本側は態度を硬化し、日露間は緊張状態になるかもしれない。そこでお互いに非武装地域とすることに国後島を分割するわけである。高等弁務官はいわば非武装を明確にするための人質のようなものである。
 ロシアにここまで譲歩させるには並大抵ではなく、巧みな外交交渉が必要である。もうひとつの問題は日ソ共同宣言では「日ソ両国は引き続き平和条約締結交渉を行い、条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡す。」とあるが、その平和条約締結交渉の前提として、日本に外国軍の駐留部隊がいないこととなっているらしいことだ。日本は現在日米安全保障条約の下でアメリカ軍の駐留を認めている。特に青森の三沢基地は対ロシアの最前線として「北の槍」といわれ、ロシアにとっては目障りな存在だ。日米安保条約なしに日本の防衛は考えられない。まして三沢基地からの駐留軍撤退などはありえないだろう。
 筆者は日米安保を維持するならば、歯舞・色丹の2島返還で妥協せざるをえないだろうし、2.5島返還がロシアにとって最大限の譲歩だと考えているが、世間一般はそうは思わず、屈辱的と考えるだろう。交渉した全権大使や総理大臣、外務大臣とその家族は右翼によって処断されることを覚悟しなければならない。そうならないとためにはこの領土交渉は高い内閣支持率が不可欠である。思えば小泉内閣は一時80%を超えていてロシアも今ほど経済力を持っていなかったのでチャンスであった。しかし小泉氏の支持者には右翼がいるのか、日露交渉は従来の平凡なものに終わり、代わりに北朝鮮問題に取り組んだのではないか。
 日本が国後島の南半分を獲得するには、シベリア抑留問題を持ち出して、ロシアへの負い目を認識させ、北海道の陸上自衛隊の地上部隊を削減するなど、ロシアへの侵攻意図のないことを示す必要がある。
 ロシア側としては日本と平和条約を結び、経済交流を活性化させることは確かに利点はある。何しろロシア極東部はロシアにとっては辺境で、日本からの投資、及び観光客の流入は大きな経済効果もたらす。シベリア、サハリンには有望な石油資源があり、その購入先としては日本は有望である。需要は中国も劣らず大きいが、国境線を接して、大人口を有する中国は将来的にはロシア領への侵攻の可能性があるので、慎重に付き合う必要がある。その点日本はより安全である。だからロシア側からの歩み寄りの可能性は皆無ではない。時間を掛ければ掛けるほど、新興国のエネルギー需要が高まり、経済発展し、日本を抜きにして資源外交ができるようになる。そうなると北方領土は日本に返さず、新興国に投資を呼びかけ、歯舞・色丹すらロシア領にしてしまうことだろう。
 いずれにせよ、4島返還や3島返還は現状及び今後の政治情勢を考えてもあり得ないだろう。

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