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関西空港の活性化案 [政治・経済]

 1994年9月に開港した関西国際空港の利用が低迷している。
 もともと関西国際空港は騒音問題が深刻化していた伊丹空港の代替として計画された。当初は神戸沖に建設する計画で地元の了解を得ようとしたが、当時騒音問題に鋭敏になっていた自治体に反対され、空域条件の良い泉州沖に建設が決まった。建設が計画された頃の航空機の騒音はすさまじく、確実に騒音問題を回避できる4キロもの沖合の海上に建設された。建設予定地の大阪湾は水深が深く、埋め立てには大量の土砂が必要で、多大な建設コストが生じた。さらに実際に建設するころには航空機の騒音が相当程度軽減し、4キロもの沖合に建設する必要がなくなったのに、株式会社とはいえ国営であることによるコスト意識の甘さと、族議員をバックにした土建屋のいいなりになって、建設費を軽減する努力を怠り、また予定外の漁業補償まで発生して、建設費が膨れあがった。
 それでも何とか関西空港の開港に目処がつきはじめた頃、関西空港が完成次第に廃港予定だった伊丹空港の周辺自治体が、空港存続に向けて運動を始めた。前述したように航空機に騒音が軽減され、国から支払われる騒音補償金がなくなることによる住民の反対、空港がなくなることによる経済的損失、また利用者もアクセスが便利な伊丹空港の存続を望んだ。当時の運輸省も関西空港だけでは関西圏の航空需要をまかないきれないと判断し、「伊丹空港は国内線用として存続」と決定を下した。
 さて開港当初の関西空港は開港景気で路線開設が相次いだが、高額な着陸料と、利用客の低迷で、次第に航空会社から撤退が相次いだ。代わって新幹線との競争にさらされている大阪-東京間や大阪ー福岡間などは、関西空港からでは時間的に勝負にならず、伊丹発着を増やして対応した。新潟、松山といった短距離区間もアクセスに時間が掛かることが利用者に嫌われて、関空から伊丹に戻ってしまった。
 1995年1月17日、神戸市を中心に阪神大震災が発生した。大きな被害をもたらした大災害だが、これが関西の空港問題にさらに拍車を掛ける事態に発展する。震災を教訓に地域に防災拠点にするという理由で、神戸空港の建設が決まったのである。すでに供給過剰な関西の航空事情であるのは明白であるから、最も利益を享受するはずの神戸市に住民からすら反対意見が多かった。しかし土建屋を支持基盤とする市議会・国会議員を崩すに至らず、建設は強行された。
 その後、関西空港は完全に24時間運用するためには滑走路を2本にする必要があるとして、現空港のさらに沖合に4000mの滑走路を建設した。低迷する需要からさすがに滑走路以外の設備は建設されなかった。しかし借金はさら膨らみ、金利の返済すら覚束ないという事態になっている。
 以上が関西3空港の簡単な経緯である。ここで関西3空港の特長について列記してみよう。
問題 伊丹 関空 神戸 コメント
騒音 × 海上空港である関空、神戸は問題なし。伊丹は存続すれば今後とも騒音対策費が必要
交通アクセス × 人口の多い京阪神の中心に位置する伊丹が断然。神戸は神戸市より東側が不便。関空が便利なのは和歌山や泉州地区程度。
運用時間 × 住宅密集地にある伊丹は21時までの制限付き。神戸も24時間運用が可能だが、滑走路が2500mと短いので貨物機に難点があり。
空港の処理能力 同時発着可能な4000m級滑走路2本を有する関空が断然。伊丹は並行滑走路だが同時発着ができず。神戸は空域の関係で西向きにしか飛べない。
利用者の人気 × アクセスと大いに関係があるが、大阪からだと神戸は意外と遠く、関空といい勝負である。
航空会社の人気 × 空港から近い伊丹でないと勝負にならない路線もある。国際線では関空しか選択の余地はないが、高額な着陸料が敬遠されて撤退が相次ぐ
空港自体の集客力 旅客以外の利用は交通の便利な伊丹に軍配。関空は旅客優先に設計されているので、ターミナルビルからは飛行機が見えず損している。神戸はそれを反面教師に旅客外利用を増やそうとしているが設備が貧弱。


 関西空港の弱点は交通アクセスと高額な利用料であるといえるだろう。それさえ解決されれば、関空の再生は可能といえる。大阪府の橋下知事が提案しているように、まず関西空港と伊丹空港を一体経営して、路線の配分の最適化を行って、経営を安定化させ、その後に伊丹空港を廃止して、その売却益でリニアモーターカーなどのアクセスを整備するという案は理に適っているといえる。しかしリニアモーターカーはいかがなものだろうか。知事は東京から伸びる中央リニア新幹線を新大阪から延長することを考えているようだが、新大阪からの直行客はそれほどいないだろうし、大阪中心部にも駅を設ける必要がある。結果として建設費は膨大となり、それは全て運賃に跳ね返ってくる。それにその延長区間の中央リニアを経営するのはJR東海かJR西日本である。新幹線に乗るべき客をむざむざ航空会社に渡すことはしないだろう。成田エクスプレスが成功しているのは成田空港がほぼ国際線に特化しているからであろう。もし成田空港から東北方面に頻繁に国内線が就航しているならば、JR東日本としても看過できないだろう。
 そこで関西空港へのアクセス改善は次の2点セットで行うべきだろう。
1.梅田貨物線の地下化の推進
2.阪和線の複々線化

 目的は関西空港への鉄道所要時間を短縮することである。目標は大阪中心部から30分以内でアクセスできるようにすることだ。現在、梅田貨物線は梅田に駅がないために、新大阪、京都方面から特急に乗ることができない。しかも単線で運用上の隘路であり、梅田付近の地上を走行しているため周辺の道路は踏切で渋滞している。そこで地下化と複線化を同時に行い現在の大阪駅の北側にホームを設ける。梅田貨物線と大阪環状線の合流地点である西九条駅の配線を立体交差に改良して、高速化に対応する。西九条での合流が難しければ、次の弁天町でもいいだろう。ただ西九条はユニバーサルスタジオジャパンへアクセスするゆめ咲線と阪神なんば線が交差する。ここを停車することにより、神戸方面からのアクセスが良くなる。ただ神戸空港は存続するので、その方面からのアクセスはそれほど重視する必要がなく、阪神なんば線で難波まで行ってもらい、そこから南海ラピートを利用してもらう方がいいかもしれない。いずれにせよ利用者からは選択肢は多いほどよい。
 環状線の高速化は難しいが、大正、芦原橋、今宮のいずれかに待避設備を設けることである程度達成可能だろう。
 阪和線に関しては天王寺-杉本町間の高架工事が完成している。実はその高架に並行して空き地がある。その空き地は阪神高速泉北線の予定地であった。阪神大震災で耐震性に疑問が生じたのと予測需要が少ないため用地買収が終わったものの建設中止になったのである。天王寺-杉本町はこれを利用して複々線化を行う。杉本町から先は用地買収すら行われていない。しかし幸いなことに高架工事が未着手で、いずれは立体化が必要な区間である。そこで鳳までは立体化と同時に複々線も建設すればいい。もちろん現行法では立体化は道路予算で行うので、現状以上の設備、つまり複線を複々線にするには鉄道会社の持ち出しとなる。伊丹空港の売却益をその建設費に充てるよう法整備を行う。鳳から先、日根野まで複々線にすれば理想的だが、そこまでの需要はないだろう。今、阪和線は和泉府中、東岸和田付近の高架化が始まったばかりだか、その際に特急快速通過駅を同線の上野芝のように高速に追い抜きできる設備を設ければいいだろう。日根野駅は阪和線和歌山方面と関西空港方面の分岐駅であると同時に、近くにある車庫への出庫もあって線路が交錯し、高速化の妨げとなっている。優先順位は低いものの、この構内も改良を行い、今では限定的にしか行われていない和歌山方面からのホーム上乗り換えも簡単にできるようにすべきだ。
 以上の改良を施せば、梅田からJRの特急で30分以内で関西空港に到達することは可能であろう。しかし運営がJR西日本なのは問題である。東京方面に関しては、東海道新幹線がJR東海が運営しているとあって、収入減になることはないが、九州方面は、この高速化で山陽新幹線の乗客が減ることなれば、自分で自分の首を絞めることになる。また山陽新幹線は九州新幹線の鹿児島まで直通運転が決まっており、鹿児島まで新幹線の守備範囲が広がることになる。航空会社からすると、便利な伊丹が廃止されて、高速化で便利になるとはいえ、JRの特急料金を払ってまで飛行機に乗ってくれるかという不安がある。そこで活用したいのがリムジンバス。幸い関西空港方面の阪神湾岸線は空いていて、渋滞がほとんどない。リムジンバス会社と提携して、マイレージを加算するなどの優遇措置を講じればよい。バスは定時性と高速性に劣るが、ともかく座っていれば目的地に到着する。大阪の場合、阪神高速環状線の渋滞さえ回避できれば、伊丹廃止で大量にバスが余剰となるので、活用方法も考える必要がある。数多くの路線を開設して、利便性から総合的にバスでも勝負できるのではないだろうか。ドイツではルフトハンザ航空が特急を運行するなどしているが、競合関係のあるJRはいい顔をしないだろう。
関空再生の全体的な流れとしては
1.梅田貨物線の地下複線化
2.阪和線の複線化
3.伊丹空港の廃止
となる。伊丹空港の跡地としては首都機能の移転が考えられているようだ。もちろんその方向でいいと思うけど、せっかくの広大な敷地だから緑豊かな住宅地も設けてほしい。イメージ的には東京の立川基地跡地にある昭和記念公園のように、防災用の敷地を設けた上で、計画的に配置された住宅地と商業施設と公園。首都機能移転の目玉として、憲法改正が必要だけれども、憲法裁判所をこの地に設けてはどうだろうか。

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